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コレステロールの話その①

2008-12-06 | 医療
私は、元来循環器の専門医でしたので、かっては、患者さんには
コレステロールについては、うるさく言っていました。
薬もしっかり勧めていました。
でも今は、逆にコレステロールの大切さを強調しています。

しかし、まだ多くのお医者さんが、かっての私と同じようにコレステロール
を下げる薬を、必要以上に出している現実があります。
『コレステロールが悪者』というイメージが、医者のみならず多くの
日本人には、浸透しています。
それに基づいて、コレステロールを下げる薬はバンバン使われています。
中でもスタチンというコレステロールを下げる薬は、世界一売れています。

スタチンは、体内のコレステロール合成に重要な役割を持つ酵素を
特異的に阻害してコレステロール合成を邪魔する薬です。
2005年の全スタチン製剤市場は日本円にして約2兆8千億円で
他の系列の薬を大きく引き離しています。
日本の脂質異常症(むかしは高脂血症と言われていた)の患者さんの
うち約600万人が治療を受けており、そのうち8割の方が(=480万人)
がスタチンを使用しているということです。

コレステロールが悪者にされたのは、米国のデータが元になっています。
総コレステロールの値が220mg/dlを超えると心筋梗塞の発生率が高まるという
データです。これから、日本も220mg/dlを超えさせないようなコレステロールの
指導が始まりました。
一億こぞって、コレステロールを下げることにやっきになる時代でした。
少しでも、220を超えるとスタチンが投入されたのです。
そして日本は世界一のスタチンの消費国となりました。
そうゆう時代が随分続いたのですが、結果が気になりますよね。
はたして、日本の心筋梗塞の発生率が低下したでしょうか?
残念ながら、そんな嬉しいデータはまだ聞かれません。

コレステロールは、細胞膜の材料です。
細胞膜は、細胞の門番として、よい物を入れて、悪いものを出す
働きをしています。したがって、コレステロールが不足すると
細胞膜がもろくなり、ひいては細胞が弱くなっていまします。
その他、コレステロールは、神経線維の鞘の材料であり、神経伝達に
影響していますし、男性ホルモンや女性ホルモンといった性ホルモン
の材料で生殖や性周期に影響しています。
また、副腎皮質ホルモンの材料としてストレス処理にも関わっています。
その他、ビタミンDや胆汁の材料でもあります。
悪者どころか、コレステロールがないと我々は生きてはいけないのです。

確かに循環器疾患は高コレステロールで脂肪率は上がりますが、
低コレステロールでは、ガンなどの死亡率が高まります。
いまだに卵はコレステロールが多いから食べないという方もいらっしゃる
ぐらい、誤った常識がまだまだ生き残っています。
皆さん、コレステロールはないと困るものなんですよ!
検診や人間ドックでのデータで、中には160mg/dlを切る人がいます。
実はこれは問題なのですよ。

その理由は次回に続きましょう。

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