![]() | 完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫) |
柳澤 健 | |
文藝春秋 |
2012/8/29
おそらく、現状で最も客観的な昭和プロレス史の教科書。
アントニオ猪木が1976年に行った4試合。
柔道金メダリストのウィリアム・ルスカ、ボクシング世界チャンピオンのモハメド・アリ、韓国の大巨人パク・ソンナン、パキスタンのレスラー、アクラム・ペールワン。
この「異常な4試合」の背後を追うことで、当時のプロレスの概観をつかむことができる。
そして、やっぱりどこまでがリアルなのかという部分が面白い。筆者は、膨大な資料を基にその虚実の濃淡ぶりを的確に描写しており、淡々とした筆致の中にも迫力がある。
モハメド・アリは来日前に、かなり本格的なプロレスの練習をしていた。このことが何を意味しているのか。
読めば読むほど、どうしても猪木の狂気ぶりにひきつけられてしまう。
言うまでもなく、猪木自伝とあわせて読むと、面白さが倍増する。