2016/12/11
・二次大戦後、心に深い傷を負ってしまった美津枝が、執拗に恋の応援をしてくる父親の竹造と対立する話。
・井上ひさしの代表作のひとつ。
・「対立→和解」という二人芝居の形式の中で、伏線を回収しつつ、観る側の予想を交わしつつ、解決に至る。
・戯曲から入り、映画は観たけど、演劇は初めて。
・東京と札幌の役者さんが、それぞれのチームで交互に上演する趣向。
・自分が観たのは楽日。札幌の松橋勝巳さんと東京の松村沙瑛子さんのシャッフル回。
・個人的に好きな話だということもあり、直近に似た題材を扱った傑作『この世界の片隅に』を観たこともあり、松橋さんで間違いは無いだろうと思いつつも、期待と不安半々で見る。
・しかし、当たり前のよう杞憂で終わった。
・大きな演出効果はなく、親子の会話と語りだけで約90分、充実した上演時間だった。
・渋く、時にコミカルな松橋さんと、凛として、時にやっぱりコミカルな松村沙瑛子さんとのかけあい。
・二人芝居で役者の力量に差があると萎えるが、きちんと拮抗していた。
・責任感と優しさがあるからこそ、自分の未来に蓋をしてしまう美津枝を、竹造はどこまでも救おうとする。
・広島弁のやり取りがリズムよく、かわいらしいので、観れば観るほど親子のことが好きになっていく。
・一寸法師のくだり、おじぞうさんのくだり、徐々に美津枝の傷が具体的になっていくにつれ、幸せになっちゃいけない決まりはないのに、それでも彼女の抱える苦しみに共感してしまう。
・何とかしてあげたいけど観客としてはどうにもならないので、自然、美津枝を応援する竹造を応援する気持ちになる。
・「竹造、なんとかしろよ。こんな優しい子をこのままにしちゃだけだろ、竹造!っていうか、松橋さん! なんとかしてよ!」と思いながら。
・「福村さん」の顛末をきちんと伝えているのも大事なところで、やっぱり『この世界の~』の悲劇を暗示的に示すやり方では足りないんじゃないかと思ってしまった。