アジア人財事典

アジア人財カンパニー株式会社 井上一幸 がお届けする粋な話題の数々

外国人採用に関する誤解と無理解 ③

2007-10-05 | マイビジネス
“外国人”に対する我々の誤解と無理解”についての最終回ですが、あと2つの点を述べたいと思います。

④ 夜は繁華街で別の仕事してるんじゃないの?
答え:「断言はできませんが、していないでしょう。」

これも②に類似した疑問です。学生時代にいわゆるホステスなどのアルバイトの経験があったとしても、就業したら辞めているでしょう。そういう時給の高いアルバイトは、まさにお金のため(学費のため)にやっているのであって、就職後もさらにお金を蓄えるためアルバイトを続けるとは考えられません。

多くの企業は、契約や規則で兼業を禁止していることでしょう。ましてや外国人の場合は、ビザ取得の際に認められた仕事以外就いてはいけないことになっています。外国人は入管の規則に敏感です。兼業などをして運悪く見つかってしまったら本も子もないですから、そうする方はまずいないでしょう。

ちなみに「夜は銀座で仕事があるから、昼間はハケンで5時あがり」という日本人がいることを我々は知っています。出身国は関係なく、そういう方々と職場を共にすることが望ましくない場合は採用の際に気をつけるべきだと思います。

⑤ ビザはおりるのか?手続きは大変なんじゃないのか?
答え:就労ビザ申請者のうち約90%がビザを取得しています。手続きは難しくありません。

入国管理局のホームページによれば、最も新しいデータのある平成17年で、留学生の就労ビザ申請数は6,788、許可数が5,878、許可率86.6%です。私の実感では今年(平成19年)は許可率はもっと高くなるだろうと思います。

一方、不許可になった理由はなかなかわかりませんが、事務的な表現で言うと「大学での専門性を発揮できる職場でない」からと言えます。たとえば医学部の卒業生を製造装置メーカーが営業職で採用、といってもビザは出ないでしょう。

手続きですが、登記簿、決算書類、雇用契約書を用意する必要があります。これはどの企業でもある書類ですから特別なことではないと思います。さらに「雇用理由書」なる申請書を添えてあげると丁寧です。そういった書類を持参し申請するのは留学生本人です。会社ではありません。

私が今考えている事

2007-08-22 | マイビジネス
先日、ライターの中島恵さんに私の仕事についてインタビューを受けて、あらためて自分がどうしてここにいるのか、これからどうしたいのかを深く感じ取りました。人から聞かれて言葉にすると自分の頭の中がはっきりする、ということってありますよね。
そこで、そのはっきりした内容を書きとめておくことにしました。

この仕事を始めたきっかけ:

* アメリカで留学したり、働いたり、香港政府で香港人(中国人)と接していると、日本への誤解に満ちていること気がつく。<アメリカの大学の異文化理解という授業で、日本では妻は夫から3歩下がって歩く、とか、日本は物価が高いので、実質的な生活水準はきわめて低い、などと “教わりました。”香港人からは、日本の男性は仕事の効率が悪いから残業ばかりしているくせにさらに飲みに行くので、家庭をまったく顧みない、んだよね?と聞かれました。>
* とある本で、日本の良さは長く住まないと理解できない、最低5年は必要、と書いてあって同感した。(奥ゆかしさ、謙遜、思いやり、気づかい、などの価値観のこと)
* ならば、外国人が日本で仕事を持ち、日本に住みつけば、日本のよさを理解してもらえる機会が増えるだろう、と考えた。
* たまたま仲良くしていた香港企業の社長に申し出て、東京のグッドジョブクリエーションズを自分でやる事にした。

実際にこの仕事をしてみると:

* 日本の良い面を素直に感じ取っている中国人が結構いる事に気がついた。新鮮な驚きだった。<当ブログ『好感度No1の国、日本』参照。>
* そういう人にこそ、日本での活躍の場を与えたい、と思った。


この仕事でやりたいこと:

* 日本の社会や企業風土は独特です。日本人は、主張し過ぎずむしろ謙遜の気持ちで、相手を傷つけないやり方でコミュニケーションをとりますよね。それを感じ取る感性があるかどうかをポイントにして、まずは求職者の人物を見極めたい。
* そういった日本のやり方が良いと感じることの出来る人、それに馴染める人、それが好きになれる人、そういう感性のある人を企業に紹介したい。
* 企業への人材紹介である以上、スキルや給料がマッチするかどうかは当然大事。でも外国人を見る場合は、日本社会という土俵に上がれるかどうか、感性のポイントから人物を選ぶことが先決だと感じている。
* つまり合うか合わないか、相性の問題。<日本人でも、海外に憧れて出て行ったもののドライな人間関係に失望した人はいるでしょう。逆にそれが良くて住み着いている人もいるでしょう。>
* よく外国人の紹介というと、敬語講座とかマナー講座とかを “売り” にすることがあるが、それは本質的なものではないと思う。教えても出来ない人は出来ません。逆に、上記のような人なら当然のようにして身につけています。

将来は:

* 「井上さんの紹介する人なら間違いない。」「グッドジョブクリエーションズの人材なら安心だ。」と言われたい。

以上です。

この気持ちが将来も変わらないことを祈りつつ。

外国人採用に関する誤解と無理解 ②

2007-08-20 | マイビジネス
さて、前回に続いていわゆる“外国人”に対する我々の誤解と無理解について私の思うことを続けます。

①では、「留学生は卒業したら国に帰るんだろう」という誤解でした。
引き続き--

② 不法滞在も結構いるんじゃないの?
答え:いないとは言いません。でも彼らは表の世界にはあまり出てきません。

この疑問を受けることは①にくらべるとだいぶ少ないですが、疑っている人には何を言っても無駄、という類の疑問です。「御社で紹介する外国人のパスポートが本物かどうか証明できますか?」なんて言われても困ります!不法滞在の外国人が私たちのところへ職業紹介に訪れるとは思いませんし、ましては企業の面接に出向くなんて考えられません。意図的かそうでないかは別にして、不法滞在者になってしまったらひっそりと生きていくしかないと思います。

なお、「不法滞在」という単語から多くの方が抱くイメージは… 密入国、でしょうか?貨物船に紛れ込んで夜陰に乗じて上陸…なんて報道もありますから。
でもこれには注意が必要です。「不法残留」と「密入国」は大違いです。入国管理局のホームページでは「不法残留」という言葉が使われています。不法残留とはビザの期限が切れているのに出国の記録がない人です。彼らはパスポートは持ってますし外国人登録証もあります。ただ“期限切れ”なんです。(彼らを弁護する意図は毛頭ありませんが。)普通は「不法滞在」というと「不法残留」を指すことが多いと思います。ちなみに海外で「不法残留」となっている日本人も多数います。

ところが密入国となると悪どさが別格です。彼らは日本入国当初から確信犯です。パスポートは無いかニセモノ。行き先は確実に夜の世界。犯罪の舞台に顔を出している可能性も高いかもしれません。

どうでしょうか。少なからぬ人々が不法残留と密入国とを混同しているのではないでしょうか。少なくとも、コンビニのレジやレストランで見かける外国人留学生は、密入国ではありませんのでご安心を!


③ 日本語ができなければ商売にならないだろう。
答え:最初は誰でも苦労します。

私の見る限り、四年制大学を卒業する留学生の多く(だいたい8割くらい)は社内コミュニケーションには困らないだけの日本語力を持っています。理系で技術職に就くのであればそれで問題ないでしょう。ただ文系の卒業生ですぐに営業ができるか、となるとちょっと別。もちろん日本人の新卒と同じく最初は研修を受けさせてあげたいですが、それでもお客様の前で話ができるだけの日本語力を持っている学生は4割くらい、といった見当でしょうか。

ちなみに、本当に日本語がうまくて、電話だったら外国人だとわからない~、というレベルの学生もいます。これには本当に驚かされます。

なお、たいていの留学生は日本語能力試験の1級に合格しています。近年では1級でなければ大学に入学できなくなっているようです。ただ、この試験で測る日本語能力と仕事で使う日本語とはやや違うようです。私たちのTOEFL や TOEIC と同じで、いくら点数がよくても使い物にならない、という現象ですね。
一方、JETROが実施しているBJTビジネス日本語能力テストは、「しごとのにほんご」とのサブタイトル通り仕事現場を意識したテストになっていてお薦めです。このテストでJ1以上であれば(最上級はJ1+ )、営業に使える日本語をマスターしている、と考えていいでしょう。

外国人採用に関する誤解と無理解 ①

2007-07-17 | マイビジネス
誰もが実感していることと思いますが、ここ数年、街を歩いていると外国語をよく耳にしますし、店舗などで外国人の店員をよく見かけますよね。

実際、コンビニ、居酒屋、ファミリーレストランなどで外国人スタッフと会わない日はないでしょう。そのような場面で私たちが目にする外国人の大半は日本の大学で勉強する留学生です。日々これだけ頻繁に彼らと接しているため、レジでお勘定してもらう際、多少日本語のアクセントがおかしくても気にならない方も多いのではないでしょうか。

このように私たちは普段の“生活現場”で留学生と緊密に接しているのですが、大学卒業後の彼らを「正社員」として雇用するとなると話は別。まだまだ多くの壁が立ちふさがっているようです。
多くの企業が「えっ、外国人?大丈夫なの??」と二の足を踏んでいらっしゃるように思います。それに対する私の答えは、「えぇ、外国人!大丈夫!!」です。

ここでは、外国人採用に関する我々の「誤解」と「無理解」について3回に分けてお話したいと思います。

① 留学生は卒業したら帰国するのだろう!
答え:留学生は、「日本に残りたい!」と強く願っている。

留学生の採用に少しでも関心を持っていらっしゃる企業の方から、最も多い疑問はこれです。私が接する留学生のうち「卒業したら国に帰る」と言い切る学生は皆無です。全員日本での就職を希望しています。ただ希望してはいても、雇用先が見つからなければ就労ビザを取得できませんから、帰国を余儀なくされる学生も大勢います。

実感としては、就職先が見つからないために帰国する人:半分、大学院への進学:四分の一、そしてみごと就職が残りの四分の一、といったところでしょうか。

日本に残りたい理由は様々ですが、「とりあえず~」という気持ちの定まらない学生から、「日本で経験を積んで母国で活躍する」という者、さらには「ずーっと日本にいたい」という人までいます。私の感覚だと、3:5:2くらいの比率でしょうか。

では次回は、②不法滞在も結構いるんじゃないの? ③日本語できるの? についてお話します。