皆さん、おはようございます。㈱グッドジョブクリエーションズの井上です。本日はメールニュース第13号をお届けにあがりました。
今日で一年の半分が終わりですね。節目にふさわしい文章を、と思っていたのですがなかなか筆が進まず、書いては消し書いては消し・・・結局次のようなちょっと難しい話になりました。
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暗黙知 vs グローバル経営
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6月の日経夕刊の十字路から2つのコラム、「野村証券の暗黙知」(6月11日)と「グローバル経営能力の課題」(6月25日)は、執筆者は違うと思うが全く同じことを主張しているようでたいへん興味深い。そして私もこの両者の主張に大賛成である。すなわち、日本企業はもっと発信せよ、ということだ。
① まずは「野村証券の暗黙知」から要約かつ引用します。
元社員がインサイダー取引で逮捕された野村証券は、コンプライアンスや株式売買の内規は他社に比べて従前から厳しかったそうだ。野村の有力OBは、インサイダー取引がいかに割に合わないか直感的にわかるはずなのに・・・と嘆く。インサイダー取引は見つかる可能性が極めて高く、発覚すれば社会的な地位を失う。一千万円程度の小遣い稼ぎのために将来を棒に振る行為がどうしても信じられない、と言う。
『それは、新卒で野村に入り勤め上げようと考える日本人の社員なら、ほとんどすべてが共有できる価値観、すなわち暗黙知だ。元社員は経歴からいって暗黙知を理解しなかったのかもしれない。』
一方で、経営哲学にダイバーシティを掲げるある米系証券は、意図的に国籍を多岐にわたらせている。『最初から共有している暗黙知などないから、トップが自ら世界を飛び回り、研修の講師として声をからす。メッセージは「正しく利益を上げよう」。』
② そして「グローバル経営能力の課題」からも引用します。
『グローバル経営という観点から日本企業に最も欠如しているのは経営コミュニケーション能力だろう。単に英語力の問題ではない。ビジョンや世界戦略などを世界中の顧客や従業員に向かってきちんと発信し、論理的に説得する力を指す。・・・企業文化に違いがあるように、グローバルな経営スタイルも企業間で異なるのは当然だ。日本企業は自らのスタイルを普遍化し、世界に浸透させる努力をもっとすべきだ。』
どちらも言っていることは「日本人同士で通用する暗黙知に頼っていては、世界には理解されない。情報を、戦略を、価値観を積極的に発信せよ。」ということである。
③ ところで、外国人を含む人材紹介の仕事をしていると、こんなリクエストを出してくる求人企業がある。それもかなりの頻度で。
(本当は日本人を採用したい、でも適切な人材がいなければ外国人でもいい、という文脈で、)「外国人だったら、日本人の心がわかる人ね、日本的経営のわかってくれる人。いちいち言わなくてもいい人。そういう人だったら採用しますよ。」
そんな人いません! 社長、これってまさに「暗黙知」頼みの経営ですよ!
そうじゃなくて、いちいち「言って」ください!日本人の心?日本的経営?ストレートに発信してください。
黙って残業しろ!
毎朝掃除しろ!
とにかくハイと言え!
いいじゃないですか、それで。それが本当に大事なら。
いや、正確に言うとほんの少数ですがいます、日本人以上に日本的に振舞える能力を備えた人が。それぞまさに国際人財。私だってそういう人材を紹介したいし、そういう人材を育てることを一生の仕事にしたい、とさえ思っている。
ただ、ごくごく少数のそういう人たちが来るのを待っていても始まらない。「言わなくってもわかる」人をひたすら待つよりも、「言ってわからせる」ほうが経営効率は高いですよ。「言ってわからせ」れば、いずれ「言わなくてもわかる」人になります。
話は大きくそれるようだが、内村鑑三が『代表的日本人』を書いたのは明治27年。近年大ブームになった『武士道』を新渡戸稲造が仕上げたのは明治33年。ともに原著は英語である。欧米からなにかとバカにされていた明治の日本人が、日本は何たるかを理解してもらおうと世界に向けて必死に「発信」したのだ。
英語を使え!と言いたいのではない。先人に学びたい、と思うのである。
今日で一年の半分が終わりですね。節目にふさわしい文章を、と思っていたのですがなかなか筆が進まず、書いては消し書いては消し・・・結局次のようなちょっと難しい話になりました。
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暗黙知 vs グローバル経営
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6月の日経夕刊の十字路から2つのコラム、「野村証券の暗黙知」(6月11日)と「グローバル経営能力の課題」(6月25日)は、執筆者は違うと思うが全く同じことを主張しているようでたいへん興味深い。そして私もこの両者の主張に大賛成である。すなわち、日本企業はもっと発信せよ、ということだ。
① まずは「野村証券の暗黙知」から要約かつ引用します。
元社員がインサイダー取引で逮捕された野村証券は、コンプライアンスや株式売買の内規は他社に比べて従前から厳しかったそうだ。野村の有力OBは、インサイダー取引がいかに割に合わないか直感的にわかるはずなのに・・・と嘆く。インサイダー取引は見つかる可能性が極めて高く、発覚すれば社会的な地位を失う。一千万円程度の小遣い稼ぎのために将来を棒に振る行為がどうしても信じられない、と言う。
『それは、新卒で野村に入り勤め上げようと考える日本人の社員なら、ほとんどすべてが共有できる価値観、すなわち暗黙知だ。元社員は経歴からいって暗黙知を理解しなかったのかもしれない。』
一方で、経営哲学にダイバーシティを掲げるある米系証券は、意図的に国籍を多岐にわたらせている。『最初から共有している暗黙知などないから、トップが自ら世界を飛び回り、研修の講師として声をからす。メッセージは「正しく利益を上げよう」。』
② そして「グローバル経営能力の課題」からも引用します。
『グローバル経営という観点から日本企業に最も欠如しているのは経営コミュニケーション能力だろう。単に英語力の問題ではない。ビジョンや世界戦略などを世界中の顧客や従業員に向かってきちんと発信し、論理的に説得する力を指す。・・・企業文化に違いがあるように、グローバルな経営スタイルも企業間で異なるのは当然だ。日本企業は自らのスタイルを普遍化し、世界に浸透させる努力をもっとすべきだ。』
どちらも言っていることは「日本人同士で通用する暗黙知に頼っていては、世界には理解されない。情報を、戦略を、価値観を積極的に発信せよ。」ということである。
③ ところで、外国人を含む人材紹介の仕事をしていると、こんなリクエストを出してくる求人企業がある。それもかなりの頻度で。
(本当は日本人を採用したい、でも適切な人材がいなければ外国人でもいい、という文脈で、)「外国人だったら、日本人の心がわかる人ね、日本的経営のわかってくれる人。いちいち言わなくてもいい人。そういう人だったら採用しますよ。」
そんな人いません! 社長、これってまさに「暗黙知」頼みの経営ですよ!
そうじゃなくて、いちいち「言って」ください!日本人の心?日本的経営?ストレートに発信してください。
黙って残業しろ!
毎朝掃除しろ!
とにかくハイと言え!
いいじゃないですか、それで。それが本当に大事なら。
いや、正確に言うとほんの少数ですがいます、日本人以上に日本的に振舞える能力を備えた人が。それぞまさに国際人財。私だってそういう人材を紹介したいし、そういう人材を育てることを一生の仕事にしたい、とさえ思っている。
ただ、ごくごく少数のそういう人たちが来るのを待っていても始まらない。「言わなくってもわかる」人をひたすら待つよりも、「言ってわからせる」ほうが経営効率は高いですよ。「言ってわからせ」れば、いずれ「言わなくてもわかる」人になります。
話は大きくそれるようだが、内村鑑三が『代表的日本人』を書いたのは明治27年。近年大ブームになった『武士道』を新渡戸稲造が仕上げたのは明治33年。ともに原著は英語である。欧米からなにかとバカにされていた明治の日本人が、日本は何たるかを理解してもらおうと世界に向けて必死に「発信」したのだ。
英語を使え!と言いたいのではない。先人に学びたい、と思うのである。