アジア人財事典

アジア人財カンパニー株式会社 井上一幸 がお届けする粋な話題の数々

好感度No1の国、「日本」

2007-05-15 | コラム
3月11日の大手経済紙の紙面で「日本、好感度1位」という小さな記事を見つけた。英国放送協会がまとめた国際世論調査の結果らしい。主要12カ国とEU など計27カ国の2万8千人を対象にしたアンケートで世界に好影響や悪影響を与えている国について聞いたところ「好影響を与えている」との回答が、日本がカナダと並んでトップだったということだ。

私はこれから書く自分自身の経験と照らし合わせて「なるほどなぁ」と感じたが、世間一般ではそうは見ないだろうとも思っていたら、案の定一週間後の同じ経済紙に「英国放送協会(BBC)が最近まとめた国際世論調査の結果に、多くの日本人は意外感を抱いたのではないだろうか。」との社説が載った。“日本は海外から嫌われている。”なんとなくそう思っている日本人はけっこういるのである。でも事実はそうではない。

私は「中国ビジネス専門人財」の紹介業を営んでいる。いまや中国なしでは日本経済を語れない時代。日本人であれば中国経験の豊富な方を、中国人であれば日本社会に馴染んでいる優秀な方の紹介を通じて、顧客の事業に貢献できればと考えているが、そういう仕事なので中国で事業展開する日本企業の採用担当者、中国駐在を終えて帰国している日本人、そして日本に住む中国人には毎日のように会っている。ここで驚くのは、日本人が思う「中国人の日本観」と中国人が実際に思う「日本」のギャップの大きさだ。

我々は普通、中国人は日本人が嫌い、と思っている。数年前の一連の反日暴動や示威行動、各種アンケート調査などで明らかなように、顕在的にであれ潜在的にであれ日本を嫌っている人々は本当に多い。現に前出のBBCの27カ国の調査では中国と韓国だけで日本が「悪影響を与えている」との答えが多数だったそうだ。中国駐在で“日本人であるが故に”嫌な思いをした方はたくさんいる。
そういった事はきわめて残念なのだが、それは本国に住んでいるがゆえに情報の偏りから逃れられない人々なのであって、日本に住み、日本を自分の眼で見て、本物の日本人と触れあっている外国人の日本観は決して悪くない。「日本が好きだ!」という人も結構いるのである。

以下は、彼らが「日本が好きだ!」という理由とそれに対する私の内心のつぶやき。
「時間を守る」「街がきれい。」(うん、それはそうだろう!)「どこで誰から物を買っても値段が同じ」「交通機関が時間に正確。」(へぇ~、そういうこともあるのかぁ・・・)「挨拶する。」「失くした財布が出てきた。」(えっ、そうだったっけ?)さらには「日本人は嘘をつかない」とか「日本人はやさしい」というストレートな理由もよく出てくる。

もちろん日本人である私に対して教科書的なお世辞を言っている人もいることは百も承知だが、お世辞か本音かは彼らの眼を見て話していれば大体区別がつく。こういった彼らの話を聞いていると結局それは道徳とか規律といった概念に行き着くような気がして、(そうだよなぁ、そうでなくっちゃなぁ・・・)などとこの日本社会を形づくる規範に考えが及ぶのである。
彼らからそういうことを聞かされることによって、我々日本人自身があらためてその大切さに気づく。さながら日本の良さを“逆輸入”しているようなものだ。BBCの調査結果も私の仕事もそういうことなんだと思う。

日本で暮らす多くの中国人や韓国人が「えっ、日本人って優しいじゃん!」「聞いてた話と違うなぁ!?」と感じた経験があるという。それも1度や2度でなく。そういう発見を繰り返すうちに「日本が好き!」に変わっていくのだ。そういう人がもっともっと増えることを願っている。
同時に、「好感度No1の国、日本。」と言われて、それに磨きをかけようと気を引き締める、そんな風でありたい。