アジア人財事典

アジア人財カンパニー株式会社 井上一幸 がお届けする粋な話題の数々

世界で最もおいしいご飯

2011-03-29 | メールニュース
皆さん、おはようございます。本日はメールニュース46号をお届けに上がりました。
さて、いかがお過ごしでしょうか。震災以来、仕事も生活も様変わりの方もいらっしゃるかと思います。しかし、海外の多くの友人から言葉をかけてもらい、日本の仲間とは助け合い、私たちにはこんな力があったのかと実感するのもまた事実ですね。

さて、いまや時代はSNS。震災に関連した話題を皆さまあちこちで語っているようですが、ここでは少し違う話を。

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世界で最もおいしいご飯
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あれは確か、3月13日のニュース映像だったと思う。
避難所になっている体育館で、一人の女性が涙を流しながら、震える手でご飯を口に運ぶシーンが流れた。
彼女は言う。

「ごはん、おいしい」

津波にのみ込まれて流されたにもかかわらず、無事に救出された若い女性。全身を毛布でくるみ、体育館の壁を背にして座っている。短い髪は濡れて乱れ、顔には疲労の色が明らかだ。それでもかすかな微笑みがこぼれている。彼女は助かった。家族も無事だ。

誰かが彼女に差し出したのだろう。手にした茶碗に、半分ほどの白いご飯が盛られている。冷え切ってはいないようだが、温かそうにも見えない。彼女はそのご飯を静かに口に運ぶ。
涙目で、震える声で、それでもはっきりと・・・ 「ごはん、おいしい。」

満面に笑みがあふれている。見ているこっちは涙があふれ出る・・・。

あのご飯はきっと、世界で最もおいしいご飯だ。
そして、あの「ごはん、おいしい」は、近代日本語史上最も美しく響く「ごはん、おいしい」である。

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お知らせ
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ではまた来月。

冷静に、冷静に、と言う冷静ではない人々

2011-03-25 | コラム
連日、地震関連と福島の原発のニュースで持ちきりだ。どこの国で起ころうと同じだが、海外ではコトが一層大げさに感じられてしまって、必要以上に人を遠ざける。今は残念ながら日本がその渦中にある。

こんなときは、メディアの役割なんていう大げさなことを考えさせられてしまうものだ。
正しく、かつわかりやすく伝えるのは難しい。テレビ局がそのために奮闘しているのはよくわかる。でも、なにげないワンシーンに、「えっ!???」と驚きを禁じ得ないこともある。

特に、私が「ちょっとそれ、おかしいでしょ!」と思わず叫びたくなったのは次の2つ。

一つ目。
私がそれを見たのは3月21日。あるSNSで、福島県在住で待避を余儀なくされている女性の、怒りのメッセージが“拡散”されていた。

「なぜ福島に住む私たちが、こんな目に遭わなくてはならないのか。あの原発で作られた電気はみな東京へ送られる。私たちはあの電気を一切使っていない。私たちは東京電力に場所を提供しているだけだ。東京の人はそれをわかってないんですか!なんだ、あのインタビューは!」

その方は、ニュース番組で流れた都内の街頭インタビューを見て怒りに火がついたのだそうだ。

そのインタビューを私も記憶している。関東の計画停電や交通網の混乱についてどう思うか、とマイクを向けられた人がこう言っているのだ。「被災地で電力が不足しているから、そっちに送らなきゃいけない。私たちだって少しくらい我慢しないと。」

我慢しようという気持ちは素晴らしい。しかしこれでは無知丸出しである。
被災地に電力を送るから東京で電力が不足するのではない。電力不足の原因は、「東京」電力の福島原子力発電所を始めとする発電施設が稼動を止めたことだ。そもそも、東北の被災地は「東北」電力にカバーされている。東京電力ではない。東京電力で電気が余ろうが足りなかろうが、東北の被災地とは無縁だ。

こんなインタビュー、ボツにすればいいのに、堂々と放映してしまうこの番組のディレクターは理解がなさ過ぎる。

一般の市民がその辺りを知らなかったり、誤解するのはしょうがないと思う。私だって無知と誤解の塊のはずだ。しかし、大切な情報を扱う番組がそんなエセ情報を流すなんて、誤解に輪をかけるばかりで百害あって一利なしだ。


二つ目。
これは3月23日か24日だった。東京の水道水に乳児の摂取制限を超える放射性物質が含まれていたというニュース。政府や都の水道局は「乳児」、しかも「1歳未満の乳児」と何度も言っている中、あるテレビ番組が保育園を取材して給食の担当であろう職員にインタビューしている。

その職員が「どんな料理するにしたって水道水使うんだから、これじゃ子供たちに何にも食べさせられない」と言って困っている。それ自体が誤解のはず(大量に飲み続けたら影響があるかもしれないが、料理に使う程度なら問題ない)だが、映像がその上を行っている。彼女の後ろでは、何も知らない園児がボール遊びで走り回っているのだ。そう、走り回っている!つまり1歳未満の乳児じゃない子供たちが映し出されている。あそこに映っているのはどう見ても2歳か3歳くらいの子供たちであって、乳児は一人もいない。
「こういうのは誤解ですよ、皆さん、正しい判断をお願いします」という文脈で使われるのならわかるが、もちろんそうではなかった。

乳児、乳児、1歳未満と何度叫んだところで、映像の力を以てすれば正しい情報など吹っ飛んでしまう。そういう映像を流す番組は、気づかいが足りなすぎる。

ただでさえ情報は混乱している。こんな未曾有の事態に全く混乱を来さないわけがない。でも、情報媒体が初歩のところで混乱しては一般庶民は救われない。

で、そういった番組の最後は、例の決まり文句で締められる。「皆さん、ぜひ冷静な対応を・・・」
何を言ってるんだか、全く。冷静じゃないのはあなたでしょう!

東京に住む自分たちにできること(東北関東大震災)

2011-03-17 | コラム
地震に続いてスーパーからモノがなくなり、そして計画停電。
会社の業務はままならず、電車はスムーズには動かない。首都圏の生活は一気に不便になった。
でもここは我慢するしかない。

我々東京にいる人間は直接の被災者ではない。むしろ被災者を応援しなくてはいけない立場だ。

そんな我々にできること。
募金は一つのいい方法だ。実際、世界中の人々が募金活動を通じて日本を支援してくれている。
しかし日本にいる我々には、もっと簡単で今すぐできることがある。
それは我慢することだ。

食事が少なくても我慢しよう。
寒くても耐えよう。
会社に行ったり家に帰るのに時間がかかっても、こらえよう。

電気のない人は何万人もいる。
食事が充分にとれない人は何十万人もいる。
通う会社も帰る家も無くなった人は、もっと多い。
そして今でも、瓦礫の下や、もしかしたら遠い海の上で、助けを待っている人がいるはずだ。

それに比べたら、電車が止まったりスーパーから食べ物が消えるくらい、どうってことはない。
苦しみを分かち合うとはそういうことだ。

我々にできることは、それくらいしかない。でもそれをしっかりやりたい。