エミリの一筆啓上

#日記ブログ#猫ブログ
日々の思いを綴ります。

桜花

2013-03-26 06:49:36 | 日々のできごと
雨露を帯びた桜花はしっとりと美しい。アスファルトは息を吹き返したように瑞々しい。

春雨じゃ、濡れて参ろう、諸説あるが温かな春の雨ならそれも悪くない、風流である。

いたずらな春風が撒き散らした埃っぽさを洗い落としてくれる気持ちの良さ、春の雨は有難い。

長女の大学の卒業式が25日に行われ無事に学位記(芸術)を授かった。

二十歳の桜柄の振袖に合わせた紫の絞りの袴姿は楚々として春色の景色のようであった。

若い人が持つさわやかな美しさは見ていて心地いい。

入学時は工事中だった校舎は4年の内に完成し新しい校舎での各々の旅立ちの日であった。

私立大学の芸術分野の学費は一様に高額である。ササッと出してあげられるお宅もあるだろうが

我が家はそうでは無い。自分でもそのあたりは自覚しており、アルバイトと声楽のレッスンに

明け暮れた4年間、家には寝に帰ってくる、そんな日々を送った。スランプもあったようで

一度だけ転科したいと言い一度だけ退学したいと言ったことがあった。不安があったのだと思う。

それは私にも共感できる不安であった。4大を卒業しても見合う就職先が無い時代である。

芸術分野は特に難しい。しかしである。好きなことがあるという事はとても素敵な事、その人を

生涯励まし支え続けてくれる存在にきっとなる。自分が本当にやりたいことから今は少し離れて

いたとしてもいつかきっと叶えられる。それにはあきらめない事。思い通りに生きてみて。

4年間、本当に頑張ったね。卒業おめでとう!!














































歌劇「清教徒」より“あなたの優しい声が”

2013-03-23 19:47:10 | 日々のできごと
長女が札幌から帰省している。

大学の卒業演奏会と卒業式に参加する為の束の間の帰省である。

卒業演奏会への出演は本人がびっくりのエントリーであった。

声楽の実技の卒業試験の結果が思いの外良かったのだと云う。

詳しい事は存じないがこの試験の結果で卒演の出場者が決定する。

せっかくいただいた好機、ついでの卒業式も節目だから出た方が良いと職場の上司の方の

計らいでこの度の帰省が実現した。札幌ではヤマハの貸しスタジオで数回練習しただけの

殆どぶっつけ本番の発表であったが、久しぶりに浸った音楽の楽しさと嬉しさが伝わった。

今、歌える精一杯の本人納得の演奏ならばそれで良い。ブラボーである


















雨音はショパンの調べ

2013-03-18 20:57:18 | 日々のできごと
卒業式の翌日、高校の制服の採寸、注文のため二駅下った隣の街に次女と出掛けた。

この辺りでは馴染みの地元の百貨店で中学の制服も此処で誂えた。

採寸会場にはお友達も来ていた。ずらりと並んだマネキンさんは近辺の高校の制服を纏っている。

聞いた事のある学校名だが制服までは知らなかった。興味津々、次女と見入ってしまった。

小柄な次女は初めてのブレザータイプの制服、今時珍しいフレアスカート。

合わせてみるとクラシカルな乙女っぽさが漂う。次女の雰囲気に遠くない。

思ったより時間が掛かったがその日はもう一か所訪ねたいところがあった。

暖かな日和、ゆっくりと駅まで歩いた。駅の側の花屋さんで花を買い求め、

幼い頃より親しんだピアノの先生のお墓を訪ねた。生前、先生は我が家から徒歩20分程の

一軒家にお住まいでいらっしゃったが、今は娘さんのご自宅の近くに眠っていらっしゃる。

次女は受験前に行きたいと云っていたが叶わず今回の訪問となった。私も身辺の事を

先生に報告しておきたかった。次女はお手紙を用意していた。

先生のお墓の前に座ると私達は無言になる。言葉を発すれば涙が止まらなくなる。

次女は年長さんから中学一年生までを先生にお付き合いして頂いた。小学生の頃は

先生という人を深く考える思慮は無かった。中学生になった或る日、先生がいらっしゃらない

寂しさと不思議さをしみじみと感じた日があった。その存在の大きさに取り乱しそうになったと云う。

先生のほんの一部を知っているに過ぎないのに、先生が残して下さったことはいっぱいあって

娘や私の中で生きている。稀有な人との出会いを何と表現したら良いだろう。

信じられないくらいにお優しくて面白くて、マスクを外したらすごい美人で、原稿用紙があちらこちらに

あって作家さんみたいだった。賑やかな柄物のドレスっぽい服を着ていつも「いらっしゃぁい」

って紐付きの玄関を開けて下さった。お風邪を引きそうになるといつものあのお薬を服んでさっさと

おやすみになった。2・3日後には決まってお元気になられレッスン再開のお電話を下さった。

物書きの夜なべをなさった早朝のお電話にあたふたすることもあったが我が家では日常であった。

オトナの話も先生とは楽しく出来た。

とても長い時間、手を合わせていたが、娘は先生と何をお話したのだろう。

大きくなった子供達は在りし先生と過ごしたあの日、あの時が、かけがえのないものであった事と

自分の中に流れている先生の名残りを感じる時があるだろう。

どうかその温もりを生涯忘れないでいてほしい。

先生会いたさが通じたかのように、久しく降らなかった春雨が降り出した。




































答辞

2013-03-15 22:40:48 | 日々のできごと
桜の蕾が膨らみ、木蓮の花咲く季節。

次女が中学を卒業した。吊るしたセーラー服が少し寂しいか、所在なく揺れている。

今日は次女の通う中学の卒業式であった。暖かな陽光射し込む体育館。

次女の心を込めた答辞はとても素敵だった。

「道」「旅立ちの日に」「絆」の歌声も清らかに響き渡った。

高校の合格発表があった週にようやく取り掛かった答辞、日が無かったので5年前に

兄が読んだものを参考に書き進めていた。入れたい言葉や思いは決めていたようでそれ程

悩むことなく土日を使って書き上げた。大変だったのは専用の用紙に筆で書き写す作業。

右手の中指はペンだこで赤く腫れていた。「聞かせて」と誘ったが母の前では一度も披露しては

くれなかった。そう云えば長女も、長男もそうだったような気がする。

今にして思えば聞かなくて良かったのだと思う。何故ならば式当日に聞くのが普通なのだから。

長女が云う。「エミリさんは幸せ者なんだよ。」

子供達にはハラハラもさせられたがわくわくもさせられた。

そのわくわくとした思いは時々の子の成長を知る手応えとなった。

中学までは色んな野暮用を背負ってきた子供達、お陰で母も色んな経験をさせてもらった。

長女が云う幸せ者の意味が少し分かるような気がしている。




































素敵さ

2013-03-13 14:38:39 | 日々のできごと
優しさは強さの裏返しだとその方を見てその通りだと思う。

数か月前から職場を利用してくだっさっている80代のご婦人である。

その柔和なお顔立ちからは想像出来ないご苦労もなさっているのだと

教えて頂いたのは最近のこと、ごく自然にお話になった。

ある日のこと、お食事の汁椀がお袖にひっかかりトレー上にこぼれてしまった。

ササッとテイッシュで拭いた。後日、「あの頃は来て間もなくで緊張していました。

貴女がそっと拭いて下さったのがとても嬉しかったんです。」と仰った。

ある日、刺繍をやってみませんか?とお誘いしてみた。

刺し子に近いもので布に職員が図案を書き刺繍糸で刺していく。

眼や肩の負担にならないようにゆっくりをと心掛けている。

少しづつ少しづつ上達する喜びをお互いに分かち合う。

出来た作品を部屋に飾ってますとお話しになるときの眼差しは温かく美しい。素敵さとは暮らしぶりともいえる。