エミリの一筆啓上

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日々の思いを綴ります。

雨音はショパンの調べ

2013-03-18 20:57:18 | 日々のできごと
卒業式の翌日、高校の制服の採寸、注文のため二駅下った隣の街に次女と出掛けた。

この辺りでは馴染みの地元の百貨店で中学の制服も此処で誂えた。

採寸会場にはお友達も来ていた。ずらりと並んだマネキンさんは近辺の高校の制服を纏っている。

聞いた事のある学校名だが制服までは知らなかった。興味津々、次女と見入ってしまった。

小柄な次女は初めてのブレザータイプの制服、今時珍しいフレアスカート。

合わせてみるとクラシカルな乙女っぽさが漂う。次女の雰囲気に遠くない。

思ったより時間が掛かったがその日はもう一か所訪ねたいところがあった。

暖かな日和、ゆっくりと駅まで歩いた。駅の側の花屋さんで花を買い求め、

幼い頃より親しんだピアノの先生のお墓を訪ねた。生前、先生は我が家から徒歩20分程の

一軒家にお住まいでいらっしゃったが、今は娘さんのご自宅の近くに眠っていらっしゃる。

次女は受験前に行きたいと云っていたが叶わず今回の訪問となった。私も身辺の事を

先生に報告しておきたかった。次女はお手紙を用意していた。

先生のお墓の前に座ると私達は無言になる。言葉を発すれば涙が止まらなくなる。

次女は年長さんから中学一年生までを先生にお付き合いして頂いた。小学生の頃は

先生という人を深く考える思慮は無かった。中学生になった或る日、先生がいらっしゃらない

寂しさと不思議さをしみじみと感じた日があった。その存在の大きさに取り乱しそうになったと云う。

先生のほんの一部を知っているに過ぎないのに、先生が残して下さったことはいっぱいあって

娘や私の中で生きている。稀有な人との出会いを何と表現したら良いだろう。

信じられないくらいにお優しくて面白くて、マスクを外したらすごい美人で、原稿用紙があちらこちらに

あって作家さんみたいだった。賑やかな柄物のドレスっぽい服を着ていつも「いらっしゃぁい」

って紐付きの玄関を開けて下さった。お風邪を引きそうになるといつものあのお薬を服んでさっさと

おやすみになった。2・3日後には決まってお元気になられレッスン再開のお電話を下さった。

物書きの夜なべをなさった早朝のお電話にあたふたすることもあったが我が家では日常であった。

オトナの話も先生とは楽しく出来た。

とても長い時間、手を合わせていたが、娘は先生と何をお話したのだろう。

大きくなった子供達は在りし先生と過ごしたあの日、あの時が、かけがえのないものであった事と

自分の中に流れている先生の名残りを感じる時があるだろう。

どうかその温もりを生涯忘れないでいてほしい。

先生会いたさが通じたかのように、久しく降らなかった春雨が降り出した。