エミリの一筆啓上

#日記ブログ#猫ブログ
日々の思いを綴ります。

攪拌

2013-11-25 20:43:50 | 日々のできごと
『攪拌』という文字を『かくはん』と教えてくれたのは父であった。その時のことを覚えている。

実家にはあんこの粉が入った市販品が日常に買い置きしてあり、母は度々にお饅頭や牡丹餅を作った。

あんこの袋の裏にはあんこの作り方が載せてあったのだが『攪拌する』という字が私には読めなかった。

父に読み方を訊ねると「かくはんする、よくかき混ぜること」だと教えてくれた。

使ったことも聞いたことも無く難しい言葉だと思った。

二日前のことである。次女が私に「これ何て読むの?」と持って来たプリントに書かれた文字は『攪拌』であった。

「かくはんだよ。よくかき混ぜること。ママもね、この字を父に、つまりおじいちゃんに訊ねた事があるの。」

「ええ!まじで?」と云う次女はほんの少し驚いた。30分もすれば忘れてしまいそうなささやかなサプライズ。

父に教えて貰った言葉には『脚絆』きゃはんとか『素っ頓狂』すっとんきょうなど、他にもある。

几帳面な父はなぐり書きするような人ではなかった。日記帳や便箋に残された文章は漢字をきちんと使い

少し癖のある字で端正に書かれている。

母娘の距離に比べたら父娘の距離の方が遠いだろうか。父はどんなことを考えながら生きたのだろう?

攪拌と云うキーワードで覚醒した父の在りし日。髭剃りの固形石鹸の香り漂う若かりし父に会いたし。






逆らわない生き方

2013-11-21 01:16:27 | 日々のできごと
母に電話をしたら風邪を引いていた。
話を聞けば、無理をしたと云うどんな無理をしたかと聞けば、生姜の佃煮作りが思いの外身体に応えたと云う。子に送ろうと頑張り過ぎちゃったの。ゴホンゴホンと元気がイマイチのようであった。母から届く段ボールは実家の漬物蔵の匂いがする。麹菌だとかそうしたモノが住みつき活きている。母の日常、暮らしそのものである。

母親と云う存在の有難さ、大きさをこの年になり噛み締めている。
若い頃は30歳程の年の差がとてつも無く大きいものに思えた。私は結婚し母となり子育てし気がついたら子は大人になっており私は半世紀を生きてしまった。私がハタチの頃、母は今の私の年齢だったのだ。無我夢中の30年を何と表せば良いのだろう。

一度きりの人生のこれからを思うとき、私の中に自然に終わりの意識が芽生えた。私にとっては大きな変化、年を重ねることに抗わず静かに向き合うのだ。

母の逆らわない生き方が好きである。避けては通れない坂道ならば一歩一歩進めば良い。迷ったら己を信じよ。誰と比べる訳でもなく我が道を歩き続ける母の背中は曲がっても凛として温かい。
























emiri( ̄(工) ̄)



半年後のリリとラック

2013-11-17 13:49:24 | 日々のできごと
子猫のリリとラックを我が家に迎えて半年になる。リリは女の子、ラックは男の子だ。

二匹一緒にいることが多いが、お気に入りの場所で別々に過ごすこともある。

女の子のリリは、二階の出窓の定位置から外を眺めるのが好きだ。

お向かいの赤いハナミズキや月桂樹の枝葉が風に揺れ落ちる様を飽きることなく見つめる。

まるで夢見る乙女の如き佇まいである。私がオス猫なら間違いなく君に恋しちゃうよ♡

「リリちゃんはロマンチストだね」と言いながら、顔を覗き込めば、「邪魔しないでよん」って感じで

あっちに向きを変え、少しだけ後ずさりする。この気まぐれ加減が素敵に色っぽい。

男の子のラックはなーんにも考えてなくてその時の自分の気持ちだけで生きている。

私や娘やパパの都合なんかはどうでも良くて自分が一番なんだもんってところが大好きだ。

気になったら何度でも何度でもやってくるタフさ。それ何?それ何?それ何?それ何?

まるで指差しを始めた赤ちゃんみたいだ。

家族が出払い一人で過ごす休日は、年明けに受ける資格試験の学習に費やすことが多くなった。

机に向かいテキストを開けば、さっとやって来てテキストの上に座る。あれあれと床に下ろせばまたまた

やってくる。ほとほと困った日には娘の部屋に連れていく。暫くして娘が二匹を抱えてやってくる。

はいはいと受け取りベッドに転がしてやるのだ。二匹はかくれんぼを始め、棚という棚を駆け抜け

そこいらのものを落としまくる。ラックは隙あれば脱走の名人?名猫だ。

我が子の面倒や手間が掛からなくなった今、私はこんな風に子猫にかまけてみる。

凛としたリリは長女、やんちゃなラックは長男の幼き姿に重なりますます可愛い。

一過性の熱病みたいなものであろうか。愛おしさはエネルギーとなる。



















三日月と一番星

2013-11-09 12:19:38 | 日々のできごと
今週の火曜日は旧暦の十月三日であった。

終礼前に戸締りチェックをしていると窓の向こうにひらひらとした三日月を見つけた。

息子が二歳の時、保母の先生は連絡帳に『コンタクトレンズのような三日月でしたね。』

と書いて下さった。透けるように薄い三日月はロマンチックである。

その日、コンタクトレンズ状の三日月の左側には、宵の明星・金星が輝いていた。

同僚とうっとり暫し眺めた。

四階にある職場のバルコニーから見える景色は刻一刻と変化する。

台風時の雲は制御不能な恐ろしさ、地球誕生ってこんな感じだったのかしら?

今の頃は、午後五時には陽が沈む。今まさに陽が沈むという瞬間の輝きは荘厳さが漂う。

あっという間に辺りは暗くなり、一番星が現れる。

マンション暮らしならばこういう光景は日常だろうか。一軒家が立て込んだ住宅地にある

我が家からは残念ながら臨めない。子供達がまだまだ小さい頃、日常に太陽の出入りや夜空の星を

見られる環境を望んだ事がある。叶うことなく子供達はあっという間に大人になった。

夜空にきれいな満月や三日月などを見つけた日には、北に住む娘や南に住む息子、

実家の母や下校中の次女等に“月キレイね”メールを送らずにはいられない。

帰宅したばかりの次女に「見た?」と訊き「うんうん」と答えれば何と可愛い娘かと思うのに、

知らん!とそれきりの時もある。まぁまぁそんなもんだろうし、それで良い。

それぞれの場所で同じ月を眺めていると想像するだけで、私は温かな気持ちになる。












母からのメール

2013-11-03 15:49:36 | 日々のできごと
実家の母からのメールには本文がない。メッセージの全ては件名欄に閉じ込めてある。

母のメールは短い。気性や気分がストーレートに伝わる活きの良さが持ち味だ。

    6月08日  あめですいかよろこんでいますおやすみなさい
            (雨でスイカが喜んでいます。おやすみなさい。)

    6月08日  あつくとまりません ちいさいすいかなています たのし
            (暑くてたまりませんね。小さなスイカが成っています。楽しいです。)

    6月10日  きれいね くさひき おやすみ さちえ
            (お花きれいね。草を抜きました。おやすみ、さちえ)

    6月20日  いまは あめがすこし ふてます かわみてます あんしてね
            (今、雨が少し降っています。川は大丈夫、安心してね。)

    6月23日  びわみた すいかなたよ たべにこない
            (ビワみたいなスイカが成っているよ。食べにおいでよ。)

    6月28日  ななちやん たんじょ おめでとう しやしんみたよ
            (奈々ちゃん お誕生日おめでとう。お写真見ましたよ。)

    7月05日  いがいたいのはなおたの だいじにせんといかんよ
            (胃が痛いのは治りましたか?大事にしないとね。)

    7月08日  あつくてしよもう したげとぼるしあいをばるぞ
            (暑くて仕方ありません。だけど明日のゲートボールの試合がんばるぞ!)

    9月14日  あついですね きのはけんじがきてひまらやすぎのしょどぐしてくれました 
            (暑いですね。昨日は研二君がヒマラヤ杉の消毒をしてくれました。)

   10月08日  たいふ どうですか いまからたいそうにいきます またね
            (台風はどうですか?今から体操に行ってきます。またね!)

   10月18日  さむくなてね みそのこうじおつくております たにしみにしてね さいなら
            (寒くなったね。お味噌の麹を作っております。お楽しみにね。さようなら)

   11月2日   にぎやかでした さんいのほうびとしょじょともらてきました げんきですか またね
            (賑やかでした。三位の褒美と賞状を頂きました。お元気ですか?またね。)