イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

GENE[ゲーン] 愛の行方、運命の分かれ道

2007年08月18日 09時25分13秒 | 小説

 『機動新世紀ガンダムX』第1話「月は出ているか?」に始まり、第39話(最終回)「月はいつもそこにある」で完結した物語でした。サブタイトル《GENE[ゲーン]》シリーズとの共通点があります 『ガンダムX』で始まりで終わり、《GENE[ゲーン]》『天使は裂かれる』に始まり、『天使はうまれる』とあるように、天使で始まり天使で完結したのです。ただ、それだけなのですが何となく嬉しい  と思いました、自分でも何故なのかは分かりませんが。

 《GENE[ゲーン]》で、誰よりも許されない罪を犯したのは、チーイン王朝 並びに〈旧・三国同盟〉を結び侵略の共犯となった国々…ラカの手先となって人体実験のモルモットを彼に献上していたフィアルドと何も知らなかったとはいえフィアルドの共犯である手下どもがおおぜいで他にも色々と悪事を働いている人身売買組織〈自由同盟〉とに踏み躙られ滅ぼされたラーチョオ王朝の唯一の生き残りとなった二形(両性具有)の主人公イリ・イン・チャンシャン(旧姓★ラーチョオ)が自分を捨てた男なのに“友”の座に据えて甘やかしたバルトです。五百香ノエルは、完結巻(第9巻)『天使はうまれる』でも“傲慢さも、幼稚さも、ヤンアーチェ・チャンシャンに限っては魅力となった。勝手な振る舞いも、尊大な物言いも、すべては彼が生まれながらの王ゆえだ。しかし――。「しかし王であれば、今回は……」「言うな、バルト」手にした酒のボトルを摑んだホークァンは、栓を抜いてそのまま勢いよく飲みはじめる。「……引き止めればとどまるものが真の王かもしれん、いや、それこそ俺の求めていた王の中の王だ。だが、解き放たれた運命をみずからの手で探り、絶対の勝利を摑むのが我が君だ。俺のヤンアーチェ陛下だ。止めることはできない」「…………」複雑な表情になったバルトは、納得するしかないという態度で押し黙る。世界の命運は、いまや望まぬうちに彼の手にかかっていた。解き放たれた運命というものがあるとしたら、自分もまた単身で帝国に向かっていたかもしれない。心細げな目をした一人の奴隷を、今度こそみずからの手で救うために、嵐の只中、荒波に飛び込んでいたかもしれなかった。しかしバルトは使命を忘れられない。世界の命運をかけた生涯の使命を捨てられなかった。それこそまさに、“イリ”という、この世にただ一人しかいない存在の、愛の行方をかけた、運命の分かれ道だったのかもしれない。”(P.41~42)と書いていますが、ヤンアーチェ王としての責務を捨て、愛妃イリ  救出すべく真・天空帝国の地下迷宮に潜入したのは、イリ切り捨て犠牲にして玉座とチャンシャンの安泰を選べば、王である前に1人の人間として…イリを愛する1人の男としての己自身死ぬ事を知っていた  のです。そして、それは王としての死をも意味していたからです。このように、愛と使命は異なる のです。イリこそ我が全て…チャンシャンこそ我が世界、イリチャンシャンを守るためにのみ我はあり ”自負するヤンンアーチェイリの運命の人であり、バルトがそうではないから、という事とかは関係なく、愛や友情を平然と犠牲にし…1人の人間を救えなくて世界を、全ての人々を救う事など不可能です。それ以前に、その資格のないクズ  でしかないのです。

 そして、イリの幸福が己の幸福と思い定め、生涯、無償の愛を捧げ見守り続ける、イリの真の守護騎士である黄金の騎士ミハイル・リンゲルバウアー爪の垢を煎じてバルトのド阿呆に飲ませてやりたいから思いました。第8巻『心の扉』“生涯イリの人生を見守り、その後見をつづけるつもりでいた。いまとなってはありえない。滅びを秘めた世界を見つめてしまったとき、たった一人の人間の人生を負うことはできなかった。”(P.77)言い訳をしたけれど、元々 イリのことを愛していなくて肌を重ねたのも“情欲処理の人形”としか思っていなかったからであり、バカ兄貴たちと同様のロクデナシの己自身を自覚して、さっさとイリを捨てたクズなだけです。力となるバックも持たないイリでは役に立たないから、それがバルトの本音です。そうやってイリを捨てた罪から目を背け、世界の命運は我が手にかかっているとふんぞり返るバルトには呆れるばかりです。

 サーシャよ、あんたを見ていると、私は情けなくなるわ  黄金の騎士ミハイルと並び立つイリの守護騎士たる白銀の騎士サーシャ・ホーフハイネンともあろう者が…と!情けないぞ、と大声で詰りたくなる。『心の扉』チャンシャンでの栄達の道をみずから放棄し、イリの従者として立ち返ってからの彼は、良くも悪くも世界から断絶された閉塞感を味わっていた。ミハイルにこの苛立ちを伝えても、無駄なことは知っている。昔から同じ一つの問題を考えていても、出す答えが一緒だったことはない。前を行くイリの獣馬の尾にも似たブルーブラックの束ね髪を見つめ、このまま一生、自分のものにはならない彼に仕えていくのかと思うと、孤独感にさいなまれる。こんな夜には自分は駄目な男だとばかり思い込んでしまう。どこかに別の生き方がある気がして、自分にとって正しい世界が待っている気がして、なにもかも捨てて逃げたくなる。できないとわかっているからなのかもしれない。なにもかも捨てる、特にイリを捨てる度胸が自分にないと知っているのも、サーシャが自己嫌悪に陥る理由だった。”(P.78~79)と、またしてもサーシャ悪い病を発症させている!第2巻『望郷天使』腐るばかりの彼の姿に心を痛めたイリユンヤミン乞い願ったおかげで栄達の道を目指す事が叶い、嬉しさのあまりスキップしかねなかったサーシャの浮かれぶりミハイルがは心の中で激しく嘆き怒りリンゴ呆れたのは言うまでもない  更に、ピーマン頭の女パイリンを見せびらかせたり、と何処までもバカを披露し、危うくタオホン地獄への道連れにされかけたイリの許に戻ってきた筈なのに、学習能力のない…まるで成長しない、お馬鹿のままです。ずっと、心の扉を閉ざし押し殺してきたヤンアーチェへの愛を彼に告げ、相愛の恋人となった至福に浸るイリを、小突こうとした愚挙顔に全開で表れた為ミハイルリンゴ阻止されましたが。

 ラカ・チーイン・チーインは、どんな理不尽をしても構わない隷属国に自ら成り果てたのだから、文句などある筈もないだろう、と“永遠”を手に入れる為の材料となると思っているイリのいるチャンシャン王国を訪れて拉致する為の手駒としてチーイン王朝の血を引く“影”ワラウル・ドーテ・チーイン正妃候補という名目の置き土産にし、ラカの命により他の国々を侵略の共犯にする手伝いをしたフィアルド見せしめに殺す舞台として、チャンシャンを選びました。で、その通りに、属国ゆえにラカ真犯人と知りながら、チャンシャンが責任を取らされた。情けないですね

 ホークァン(後に復職してガッカリ クビになって万々歳  ですからコイツはどうでも良いのです ホークァン宰相ラジャ自業自得の死を遂げたフィアルドが持ちかけた旧・三国同盟を、嘗て、先の国王ユンヤミンを脅して調印させ、同盟を結んでチャンシャンを守ったつもりだけれど、人体実験のモルモットにされるのを先送りにしただけだったと崖っぷちの闘いに直面して、ようやく悟った。因みに、『心の扉』ラクチエ妾太后が、イリ亡命してから何年経つのか、と聞かれた時に、“12年です”と答えていましたが、これは五百香ノエルのミス誤植です。ロッサ帝国に唆されたセルゲ公王家に攻め滅ぼされるまで、イリレイダー公の許で3年を過ごしたのですからチャンシャンに亡命してから10年なのです。

 画像は、完結巻『天使はうまれる』の表紙イラストの一部です。アップ2人は別方向を向いていて、角張った顔をしたイリ二形だから男でも女でもある“男”の部分を表現しているのだとしても嫌です。逆に、見つめ合い“恋する乙女”そのものであるイリ“頼もしい夫王”の顔をしたヤンアーチェとの、ラブラブのツーショット  が好きなので、こちらにしました。



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