イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

何故、筱は死ななければならないのか?

2008年11月06日 21時31分53秒 | 小説

 人間離れしたと思わざるをえない生まれてすぐに死んだ赤子の時の記憶を持つ雷信こと小野篁の双児の兄・筱。彼はその時の両親の死にゆく自分に対する嘆き哀しむ姿に心を痛め、その記憶に縛られて自分は篁にその存在を知られないように、自分の後を追うように絶命した母をも失った父が自分のことを忘れるようにと願い、弟を守るために凄まじい見鬼の才を持つ篁の眼を掻い潜り彼の傍らに寄り添っていました。

その存在を知っていたのは篁の母親代わりの女房・珠貴、篁に魔弓(或いは神弓)「破軍」を与えて力の制御を教えた修験者・太慎、今上であり術者・神野の顔を持つ帝、筱を「禁鬼・雷信」とした閻羅王太子・燎琉と父王(つまり閻羅王)と燎琉の弟王子・陸幹のみ。詳しい事情を知らないという点を除けば、筱と同じ禁鬼の同朋たち。何しろ、冥界では仮面をつけてはいなかったので、篁と同じ素顔と筱が禁鬼になった時期が篁が冥官に任ぜられたのと重なることを考えれば、察しがつきますから。

 それにしても、朱焔を倒して魂を完全なるものにした篁と共におぞましい亡者の蠢く谷に足を踏み入れ、楓の魂と人界の平穏のために谷に残ろうとした篁を融に託し一度開けたら内側からしか閉じられない扉を残って閉めた筱は亡者たちに殺されてしまいます。全ては篁を生かすためにと作者はあとがきに書いていますが、それと筱のことを篁に隠蔽することに…筱を殺すことに何の意味があるのでしょうか?誰よりも幸せになるべき筱を殺さないで欲しかったと思うのは私だけ?

 亡者の谷に楓が誰にも気づかれずに入り込んだことも不自然ですが、彼女は希望を残すために谷に篁を誘ったというのは変です。生者が足を踏み入れたら嬲り殺しにされて生きては出られない谷に誘うことの何処が“希望を残す”ためなのでしょうか?明らかに筱を何が何でも殺すための策略でしかありません。結城光流のバカタレが



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