イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

クリセニアン(7) 心に壁を作りフェランを排除したジーク

2007年10月05日 12時09分07秒 | 小説
 クリセニアン《夢語り》編の第1巻『エル・デオの眠れる王に』&第2巻『眠れる神々の道へ』の“眠れるシリーズ”を読み返してみると、ジークは心に壁を作りフェランから遠く離れていて、2人の心と心は通わなくなってしまったのです。兄弟愛に満ちた麗しい兄弟に見えますが、フェランが一方的に愛情を注いでいるだけで、弟からの愛を注がれるジークは上辺だけの慈愛を装い、フェランを拒絶しています。

 ゼルミナ女王と結託してエルミネール王国の先の国王の側妃ミルデラーテの想い出を独占しフェランを蚊帳の外に蔑ろにしていた頃からジークの願いを叶えるために闘っていたフェランとは既に心がすれ違っていたけれど祖国を復興させて共に宮殿に暮すようになってから更に心が離れていってしまったジークは救いようのないロクデナシです。

 蛇族であることは確かだけれどフェランの側近ゼラードの親族らしいという類友のデュカールだけがジークの欺瞞を見破り彼の心に寄り添っているのです。

クリセニアン(6) たとえ“我が君”と呼ばなくてもバレバレだ

2007年10月05日 07時06分12秒 | 小説

 たとえ、名を変え姿を13歳の子供(現時点でフェザンと同年齢の外見)に変えたってアンジュが第1部《年代記》編の最後の最後で《魔法神殿》が求める保険を応じてフェランを裏切ったアルジェリックであることは明白です。それにしても、ジークとデュカールは引き合うモノがあって心の近い存在となっていますが、デュカールよりもフェランジークと心を共に在るべきなのに、ジークが壁を作り遠ざかってしまったのです。とことん腐った奴ね、この馬鹿兄は。

 アンジュ凍りついた大地に宿る己の罪ビクビクしながら、呪歌に意識を封印され深い眠りに倒れたフェランのためだけにズンズンと進んでいきます。オマケのフェザンラジャールの石頭どもに軟禁されているバハウの皇子の1人のシェラダン皇子よりも、エルミネール王国からの依頼でフェザンを追い、あと一歩のところで取り逃がし“何で止めてくれなかったんだ”を連発したイマーザが気の毒です。

 ところで、ヒッキー(引きこもり)&サボりんぼのジークは相変わらずの体たらくですね。絶世の美貌で心も美しく強くて誇り高いとデュカールを除くみんな(哀しいことにフェランを含む)が褒め称えますが、本当にジークの心が強ければ、腐れ女のラリッサの戯言(シェスラの種のラニール皇太子をジークの種だと思い込んだ妄想)を鵜呑にする醜態は晒さないでしょう。その結果、デュカール“自分の妄想を他人に押し付けるな!あの馬鹿女め”と怨念をラリッサに投げつけることになるのです。

 だからこそ、どんなに心の強い人間でも、いつも強いばかりではなくて心弱くなるのが人間ですが、ジークグラグラしすぎて頼りにならないどころか逆にフェランの足を引っ張りますし、せめて持って欲しいとフェランの必死の懇願により王の称号を持ち、第1位王位継承権を有していても王位に就かなくて良かったです。

 唯一無二にして絶対の祖国エルミネール王国&実質的な国王であるフェランの利益を考えるべきなのに、ゼルミナ女王個人の恩義とリンバーグの国益を混同し、フェランは幸いにもリュキア相思相愛になって幸福な結婚ができて良かったけれど、弟に政略結婚を強要しておきながら自分は独身生活&怠惰の隠遁を満喫し、国益のために強力な後ろ盾&有力貴族を肉親に持つ女性を妃に迎えるべき責務を負う王家に生を受けた者にあるまじき身勝手な真似をしていますから。

 ミルデラーテがどんなに弱い女でも夫王が死んだからには自分が夫(側妃でも妻は妻)の分も子供たちを守ってみせると決意し文字通り体を張ってケダモノどもの毒牙をその身に受けてでもフェランたちを守るのが母親なのに、現実逃避に“私、死にます”と自刃した顔だけの女ミルデラーテに容貌ばかりか心の腐ったところまでジークはソックリです。

 孫のミルデラータちゃん。隔世遺伝(先祖返りと呼ばれる現象)でお祖母ちゃんにソックリだけれど、弱く醜い腐り果てた心まで似ないでね。お願いだから。ところで、あのふんぞり返ったヴァーレンはどうしたのかしら?ゼラードの母レイラリプティ、そのリプティの側近ガイもいないのは、第3巻以降を待て!という事かな。