intoxicated life

『戦うやだもん』がお送りする、画日記とエッセイの広場。最近はライブレビュー中心です。

臨界点から限界点:ZAZENBOYSⅢ

2006-01-17 | music
出ました。タミフルを投与し自宅療養中のためヒマを持て余しているので、簡単に曲の感想などを挟みつつ「やっぱりイナザワがいないのはキツイ」ことを主に述べていこう。


1.SUGAR MAN

リフは以前、松下敦(Dr)氏加入が発表になったときに配信されていた20秒あまりのデモ音源がベースになっているようだ。このリフ以外はリズムが完全に崩壊。歌詞に登場するジョン・コルトーレンは『バラッド』などを出したジャズミュージシャンのようだ。


2.Take Off

向井秀徳(Vo,G,Syn)が『夜の夜中2.5時』というフレーズはいつくらいから言い出したのかは忘れたが、いいフレーズだ。巷では「よりギター、ベースの自由度が高まった」とか書いてあったが、なんてことはない。相対的にドラムの自由度が減っただけのことだ。松下氏はとっても重くてがっつりしたドラミングが魅力であるから、今回のような「聴かせる」曲の多いアルバムにはもってこいかもしれない。この曲もシンプルで平らなリズムにシンセが怪しく鳴り、時に壊れる、という構図があるためこのドラミングでも問題ないようだが、やはり物足りない。しかし、2:43~あたりのフィルで「タカタカ」と単純に4つ連打する、こういうのはとてもよい。ヘンタイ拍子などをさんざんやったあげく、ああいうことをやるのはとても効果があるからだ。歌詞では他に『湯が沸くサウンド めん』というのが支離滅裂でわけがわからない。


3.Friday Night

シングル扱いの一曲。去年の段階でプロモは流出していたが、これを見た時点で「ああ、やっぱりイナザワはすごいんだ」と思った次第であります。これまたシンプルなリズムで聴かす、という構図であり、物足りない。流行の言葉を使えば、ドラムのフレーズがすべて想定の範囲内なのですよ。うー。話を変えまして、アルバム全体を通して日向(B)さんのすごさがしみじみと感じられるのですが、この曲のサビでもそれは顕著であります。2:52~からのサビのフレーズですが、僕がよく頭の中で作りたいな、ひけたらカッコイイだろうな、といったフレーズを実際に弾いてくれるのがこの人です。自由だとかフリーキーという言葉では語りつくせませんが、若さの出る方向が常人とは違って素晴らしいと思います。

4.Tombo Game

タイトルから推測するにNUMBER GIRL時代の『Tombo~』の続編のような曲だったら、なんて淡い幻想もありましたが、むしろ『delayed brain』以降の指弾きギターリフとファルセットの踏襲が見られます。『開戦前夜』の一部分みたいなかんじでしょうか。ドラムは松下氏加入後の『開戦~』や『Kimochi』に近いです。カチカチスカスカ、というフレーズですが、氏らしい解釈でプレイされた『Kimochi』のメロはかっこよかったので、この曲のドラミングもびっくりするほどではないがなかなか好みではあります。ハットオープンとバスを喰わせるタイミングは僕も盗んで使ってます。


5.Pink Heart

この曲とM10Lemon Heartについては、キャプテン・ビーフハートというアーティストにそのルーツがあることは間違いありません。そちらを聴いてみて下さい。

6.RIFF MAN

発売前の段階で聴くことの出来た中ではこの曲が最も期待できた曲であり、フェイバレットチューンとなりました。メロの7/8のリズム感は言うまでもなく、サビでは往年の「喰った(=半拍つんのめる)」リフが展開。2番以降は変拍子とユニゾンの応酬。向井氏もおそらく吉兼(G)さんと出会ったからこそこういった方向に進むことが出来たのだと思います。
といっておきながら、やっぱりドラムで気になってしまう。サビで喰うリズムの瞬間、ギターもベースもそこに合わせてコードチェンジを行うわけですが、ドラムはハイハットオープン+バスドラで対応しております。しかし、シンバルに関しては松下氏は(記憶が正しければ)パイステ・2002シリーズあたりを中心にチョイスを行っており、ハットも例外でないとすれば(でもハットはジルジャンだった気がする)、これは上記のようなフレーズにはマッチしないのです。
マニアックに比較して言えば、イナザワ氏愛用のボスフォラス・トラディショナルシリーズがいわゆる「含み感」ゼロに限りなく近いシンバルなのに対し、パイステ2002(及びジルジャンであればAシリーズなど)はこれに当てはまりません。含み感について補足すれば、これがなければないほどキレが増し、ザクザクとして乾いた音が得られるものだと思ってください。ちなみに含み感の多いシンバルと僕が認識しているのは、セイビアンの全般(特にHH)、パイステ2002など。セイビアンのAA(X)やPRO、ジルジャンのAカスタムなどはまた違うタイプのシンバルですが、僕の好みでもあります。
まあ結果として、もっとキレのあるハイハットサウンドがないと、せっかくの喰ったフレーズに「しまり」がでないので気になってしまう、ということなのです。最後に話を曲に戻しておきましょう。全体的にちょっと曲が長い(後半がダルい)のが気になるところだが、これから何度も聴くこと間違いなしでしょう。


7.This is NORANEKO

ネコ好きの方にはぜひオススメしたい。とってもPOPな曲ではなかろうか。サビでなんやら唸り(コーラス)なのかギターなのか得体の知れないNORANEKOの叫び声が聴こえます。カシオマン氏のギターフレーズがうまくまとまっていてとても聴きやすい。松下氏のドラムもいい感じだ。やはりあまりベタベタした8ビートより、シェイクの入ったリズムの方がどう考えても得意なのではないだろうか。ズボンズの頃のリズム感がなつかしい。


8.METAL FICTION

『女(にょ)がはらんで くりかえし』。これくらいの変拍子には驚かなくなってきた(実際1stプレイでリズムがとれていた)。


9.Don’t Beat

リフがゲーム音楽に近い。いや、むしろ、僕の永遠のヒーローである「ロックマン」のそれではないか!ロックマン3のワイリー面第2ステージあたりで十分使えそうである。リフのタメが効いていてたまらなくよい。ただ再三繰り返すようだが、リフがここまで生きてくるのはドラムがシンプルにまとまっているからであることを忘れてはいけない。イナザワ放出という犠牲の下になりたっておるのです。ただイナザワ氏であれば、リフはおとなしくともBメロやらどこかしらで僕をニヤけさせてくれるはずだろう、とどうしても想像してしまうのです。


10.Lemon Heart

M5を参照。とはいえ、よりリズム感が生きた曲にはなっていますが。


11.Water Front

M3とこの曲とでセットのようです。松下氏の加入後『自問自答』がその素晴らしさをかなり失ってしまったこともあり、これからはこの曲がその役割を担っていくような予感もします(いや、そうでもないか)。念仏とファルセットが交互に現れ、シンセが全篇に渡ってフワフワします。『何かに取り憑かれたように笑い続ける子供達の闘い』。


12.Good Taste

『ブッカツ帰りのハイスクールボーイ』『買い食い』。学園モノなんだろうか。『警視庁と桜田門のハザマあたりで白と赤に変わる』あら、今度は刑事モノ?とまあ最後までホロホロである。
とはいえ、なんといっても3:13~が驚きなのだ。なんと松下氏、イナザワ王道のフレーズ(『The days of NEKOMACHI』など、NUM時代から多用)を使っておるではないか!別にパクったとかそんなことはどうでもよいが、前任者に対する尊敬の念であろう、と勝手に解釈し、一人で感動している。ちなみに私事になるが、僕の参加しているジオラマシーンというバンドに『夏』という曲でこのフレーズを叩いております。




さて、まあ第一印象のみで語っていったためのちのち心変わりしていくこともあるだろう。しかし、ドラムサウンド・ドラムフレーズ至上主義であらゆる音楽にとりかかってしまう僕にとっては(あ、サウンドに関していえばまーったくモンクのいいようはございません。ドカドカ、バカスカ、万々歳。)やや満足のいかない第3作目になってしまったと言わざるをえない。なんていいながら、これから1ヶ月くらいかけて聴きあさり、完コピしてしまうのだろうが。