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システム社会の戒厳的位相

2005-11-15 21:26:10 | 政策
 みなさん、フランスの暴動について、気になる報道がありました。
 シラク大統領は、メディアでの演説で、暴動にくわわった若者の親の責任を問う意向を、明らかにしています。
 なお、政府が若い世代に対して職業訓練を行う計画も発表しています。

↓yahooトピックス 産経新聞による報道

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051115-00000025-san-int

 さすがは戒厳令をはじめとする有事法制の発祥の地だけあって、なんとも革命的な政策と言えるでしょう。

 しかし、十代なかば以上の大きな子ども/若い大人たちの行動に、どうやったら親が責任をとれるのでしょう。端的に言って、そんなことは不可能ではないでしょうか。また、政府の責任というのは、どうなるのでしょうか。

 なお、職業訓練をしても、職場がないのでは、むなしいだけです。職業訓練所は、監視と矯正の息苦しい場所になるでしょう。かつて歴史家アリエスや文明批評家イリイチは、学校への子どもの長期間の閉じ込めと従属的な苦行を強いることを、特殊近代的として批判しました。それが、学校に行っていない若い世代にも拡大されようとしているのです。子ども・若者の自由にとって、これは脅威であり、近代の巨大な官僚的システムの支配する社会の隘路を示しています。

 職業訓練の正当性/正統性についても疑念が出されているのをご存知ですか?

「アイバー・バーグの優れた著書『訓練という大泥棒(原文:ルビ;グレート・トレーニング・ロバリー)』以降、それに類似した多くの研究がなされてきました。バーグが明らかにしているのは、人々が学校で学んだ教科と、あらかじめ特定の教科を学んでおくことを欲求する職業において彼らがどの程度の有能さを発揮するかということは、何ら相関関係をもたないということです。ある人間の学校教育どれだけのお金が費やされたかということと、かれがその一生のうちに受け取る賃金ととの間には非常に密接な相関関係がある一方、ある人間が学校で身に着けたと想定される能力と、かれの職業上の有能さには立証可能な関係が存在しないのです。(中略)それは資本投資であるばかりでなく、社会統制であり、等級づけであり、(中略)〔上の階梯へ進むにつれ〕脱落者がますます少なくなってゆく階級社会の創造でもあるのです。」(イリイチ著 ケイリー編 「生きる意味」藤原書店 2005:102-103)

 職業訓練にこめられた表の意義は職業能力の開発です。ところが、裏の意義もあります。人をおとなしく従順にさせることです。かつて、レイタント・カリキュラム/ヒドゥン・カリキュラムなどと呼ばれたカリキュラム(学習過程)のことです。
 たとえば、A/トフラーは、「第三の波」にて、産業革命期のイギリスの義務教育についてこう言っています。読み書き・そろばん・簡単な地理や歴史。それらを学校は子どもたちに教えた。しかし実際に求められ、また身についたのは、①時間厳守 ②ガマンづよさ ③上の命令に絶対服従すること だった、と。

 官僚的な統制、すべては教育・訓練が解決してくれるというドラッグ中毒ならぬ教育中毒の状態にわたしたちの社会はあります。(同上書:106)そこからどうすれば抜け出せるのでしょうか。
 近年見られる少年犯罪がおおげさに報じられるたびに出てくる「親」責任論、若年失業者への教育・訓練への強迫観念にも似た政策を見てください。半ば内戦状態にある国・地域と、遠くないところにわたしたち日本社会もあるのです。
 学校だけではなく、教育を、訓練を縮小しなければならない。核ミサイルやCO2を削減するように、学校や教育を削減する国際会議や条約が、日々の実践が求められているのです。

TB用URL→http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/

 

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3 コメント

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温度差 (りゅーい)
2005-11-17 04:33:48
今回の報道は日本とフランスの温度差を感じます。実際フランスに行ったら、暴動を起こしたりしているのは、本当にチャライ若者がメインという印象でした。実際フランスでのインタビューを見る限り、彼らの半数は「なんかむしゃくしゃするから暴れられればいいや」という若者が大半にみえます。日本でも昔学校の窓ガラスを割ったりといった、いわゆる不良と呼ばれていた人がいましたけど、印象としてはあれに近いと思います。



なので、フランスでは大方の意見は今回の事件は「就職以前のティーンエイジャーの問題」として扱われています。だからシラク大統領も「子供の頃からちゃんと躾しろ」というのでしょう。「できるだけ他人に迷惑をかけない」という最低限の躾ができていれば「ムシャクシャしたから適当な車に火炎瓶なげこんだ。すっきりした」なんて事はあんまりないんじゃないでしょうか。もちろん親がどうやっても暴徒化する子は暴徒化するんでしょうが、キチンと対話できるくらいの信頼関係を子供のころから作っとけということなのでしょう。まあ、本当に親にペナルティが課せられる法律ができたとしたら、それはちょっと暴論というか、行きすぎだとは思いますけど。



実際フランスでは移民系ってアジア系と違ってかなり優遇されてる印象です。大臣格の要職にもイスラム系移民が在職してますし。職業的にもイスラム系移民を優遇するシステムが結構あって、仕事にあぶれることが多いアジア系としては、正直うらやましいという気持ち。日本では大臣どころか、移民が公務員になるのも大変なことを考えると、かなりの優遇ではないでしょうか。



現地にいけば、すぐわかることだと思うのですが、日本の報道ではこういった背景をわざと隠しているようにしか思えません。
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複数の角度 (ワタリ)
2005-11-17 22:22:19
りゅーいさん、はじめまして。いらっしゃいませ。



日本にすんでいるとなかなか分からないフランスの報道について報告いただき、ありがとうございます。

m(_ _)m



なるほど、若者といっても、今回の暴動の主役は10代の人たちだとフランスでは報道されているのですね。日本のニートの問題のように、むしろ20代とか30代の人たちの問題ではないかとつい錯覚してしまいまいした。おかげさまで錯覚が解けました。



>最低限の躾ができていれば「ムシャクシャしたから適>当な車に火炎瓶なげこんだ。すっきりした」なんて事>はあんまりないんじゃないでしょうか。もちろん親が>どうやっても暴徒化する子は暴徒化するんでしょう

>が、キチンと対話できるくらいの信頼関係を子供のこ>ろから作っとけということなのでしょう。



幼少時からの教育や親子関係だけで暴動が起こるでしょうか? そこはフランスの報道も偏りがあるのではないでしょうか? 報道されていないことや、過度に強調されている点がないのでしょうか?



>移民系ってアジア系と違ってかなり優遇されてる印象>です。大臣格の要職にもイスラム系移民が在職してま>すし



各グループから一定の上流上層への出世があればいいのでしょうか? 別の一定の層は下層以外の仕事や立場がない。そして、もし格差が拡大する一方なのだとしたら。出自を問わず、格差を縮める政策が求められているのではないでしょうか?



>日本の報道ではこういった背景をわざと隠しているようにしか思えません。



そうですか。わたしの目からすれば、視聴率をとるために、派手に車が燃えているシーンばかり集中的に放映したり、暴動の犠牲者、それに派手な主張のサルコジ内相のキツイ言葉などが編集されているのではないでしょうか。つまり、事実とその背景を説明・伝達することを日本のメディアは放棄しているのではないかとの疑いを持っています。この事件にかぎらず、掘り下げた報道が乏しいのです。

















 













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Unknown (負け組)
2005-11-19 11:56:52
この事件のBBC等での報道を見る限り、やはり日本のメディア同様に移民問題、失業・差別問題として歴史的文脈で捉えて報じているように思いましたが。



フランスの現地の空気というものも、報道による世論誘導の影響(内務省管制ですからねぇ)や現地社会特有の偏見で、必ずしも事態を的確に把握しているとはいえない場合が考えられます。



結局、単なるガス抜きで収束させるつもりなのでしょうか。

明日からはまた昨日と変わらぬ失業と低賃金の往復の日常が戻り、「若気の至り」で逮捕された人たちは更に底辺で言葉を失っていく、と。



フランス人も一揆をされる側に回った経験は少なくとも国内では歴史上初めてで、相当動揺しているのではないでしょうか。

アジア系移民の話ですが、移民グループ間でも階層化によって相互不信を培養する移民社会の陰湿さが強く印象に残りました。
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