・この本の著者は、世界で初めてまとまった自己的著作をまとめた自閉症者であり、また、北米で活躍する動物行動学の専門家である。
・私(中央大学現代社会学部 辻井正次)がいくつか印象に残った記述をあげると、「親がしてしまういちばんいけないことは、何もしないことです」というのがある。
・私は1950年代の初めい育ったのですが、運よく、当時としては最先端の早期療育を受けました。
・研究や実際のデータでも、週に20時間以上おとなと一対一で集中的に触れ合うと、対話力や行動が改善することがあきらかになっています。
・子どもの得意なものを伸ばすように働きかけ、基本的な思考パターンに合わせた方法で教えれば、大きな進歩が見られます。
・私の人生を振り返ってみると、母には、したくないことをたくさんやらされましたが、そのような活動はほんとうにためになりました。社交のスキルをみがいたり、それほど親しくない人とおしゃべりしたり、自尊心を高めたり、予期しない変化を上手く切り抜けたりするいい機会になったのです。
・母は私に家でごろごろさせませんでした。私がなにかをできなくても、自閉症のせいだとは、けっして考えませんでした。
・自閉症の子どものゴールは、どこもかしこもふつうの子とまったく同じ(つまり『正常』)になることではないのです。
・すぐれた教師は、生徒の学習スタイルに合わせた指導をしなければならないことを心得てます。
・高校の先生は、私が締めつけ機に向けていた関心を、科学などの勉強をするきっかけにしました。「知覚の分野をもっと勉強すれば、なぜ締めつけ機で圧力をかけると気分がらくになるのか、わかるんじゃないかな」と教えてくれたのです。
・科学の先生に、「エイムズの歪んだ部屋」と「エイムズの台形の窓」という錯視の有名な装置をつくってみないかと勧められ、六か月かけてダンボールと紅や板で装置をこしらえてついにその仕掛けがわかりました。これが大学で実験心理学を研究するきっかけになったのです。
・母親がハリー・ポッターの本で教えると、たちまち本が読めるようになったのです。
・ふつうの人にはほとんど、あるいはまったく気にならない感覚刺激が、自閉症スペクトラムの人には日常生活を送る上で深刻なストレスになりかねません。
・自閉症スペクトラムの人は、標準的な聞き取りテストには簡単に合格しても、音を細かく聞き分けるのに苦労することがよくあります。
・感覚統合療法を取り入れた先駆者のひとり、ローナ・キングは、自分で自分を傷つける子どもが、しばしば痛みをまったく感じていあにことを発見しました。血がにじむほど皮膚をほじるのは、感覚受容器官に障害があるせいで、ふつうの人が感じるような触覚がないからかもれません。そこでキングは、子どもに強い圧力をかけたり、ゆっくり揺らしたりして、心を落ち着かせる感覚刺激を与えたところ、痛みの感覚がよみがえったのです。自分で頭を壁に打ちつけていた子が、そうすると痛いということがわかってからは、そんなことをしなくなりました。
・じゅうぶんな効果を上げるには、感覚統合療法を毎日行わなければなりません。
・よくある3つの質問(本には回答あり)
①9歳の息子は私(母親)といっしょにいるときはお行儀よくしているのですが、学校では悲鳴をあげたり、けったり、本を破ったりします。原因は何でしょう・
②儀式的行為や常同行動は、強迫神経症の行為とちがうのでしょうか。
③教師は子どもの力を伸ばすために、どのくらい「押し」たらいいのでしょう。
・文字をおぼえる前の人生は、「空っぽ」だった――。
・問題行動に対処するときには、「感覚に障害があるせいなのか、それともただのいけない行動なのか」考えなくてはなりません。
・親や教師は、自閉症の人にいだく期待が低いのではないでしょうか。
・いけない行動
しかられるべきで、自閉症・アスペルガー症候群は言い訳になりません。
①だらしない食事マナー。
②身なりがだらしなく、かみがぼさぼさ。
③先生や親、おとな、仲間に対して不作法な態度をとる。
④乱暴な口をきく。
⑤不適切にに人を笑う(例/肥満の女性や車椅子に乗っている人などを笑う)。
・自閉症・アスペルガー症候群が原因の問題行動
妥協が必要な場合もあります。
①火災報知器が鳴ったとき耳が痛くて悲鳴をあげる。
②混雑した大型スーパーマーケットや商店街、娯楽施設で、感覚に負担がかかりすぎたせいでパニックを起こす。子どもが疲れているときによく見られる。
③服を脱ぐ、過度に引っかく、かゆがる。ある種の素材や縫い目、繊維が肌に触れる感触が我慢できない。
④蛍光灯の下でやたらと動きまわり、動揺する。蛍光灯のちらつきが気になるため。
⑤字をだらしなく書く。細かい動作のスキル不足がしばしば原因。
(書く代わりに、タイプライターやこんぴゅウーターを使わせるとよいでしょう)
・何かの活動に参加しないかぎり、いじめは続くでしょう。自閉症・アスペルガー症候群の学生には、コンピュータや美術、数学、空手など、生まれつき秀でている分野のクラブ活動に参加することを大いにお勧めします。このようなクラブは、いじめから逃れる避難場所になり、自尊心を高めてくれます。いっしょにいる人が同じことに関心をもっているため、付き合いが気楽です。
・私にとって、いい仕事をすることは大きな意味があります。なぜなら、私は、「感じる人」ではなく、「行う人」だからです。最大の喜びは、何かをすることから生まれます。
・自閉症の世界では、抗うつ薬で救われた人が少なくありません。私もそのひとりです。私は二十代のころ、絶え間ない不安とパニック発作で症状がどんどん悪化していました。・・・
私は薬について主治医に相談したうえで、1980年に<トフラニール>(塩酸イミブラミン)を飲みはじめました。すると、一週間で不安とパニックが90%ほどなくなったのです。
・自閉症スペクトラムのたいていの人の場合、抗うつ薬と抗精神病薬のもっとも効果的な服用量は、ラベルに書かれている推奨量よりはるかに少ないのです。
・自閉症の脳には、情報と感情を接続する「ケーブル」が存在しないか、じゅうぶんに発達していないのではないかとミンシュ―博士は考えています。
・コーシェン博士によると、自閉症の赤ん坊は、生後12か月を迎える前に脳が急激に成長し、頭囲が異常に大きくなりますが、その後、成長がが異常に遅くなるということです。2歳と3歳の自閉症の子どもでは、やはり頭囲が通常より20%も大きかったのです。
・アスペルガー症候群の子どもに実用的なスキルを学ばせるという選択は、親ならだれでも最優先するべきです。
・自閉症スペクトラムの人の中で、いい仕事を見つけてつづけているひとは、就職の際、「裏口」から入った場合がよくあります。
私自身も、自分で設計した家畜取り扱い装置の図や設計図を見せて、「裏口」から入りました。能力を評価してくれる人のところに、直接出向いたのです。普通の就職活動をして、最初に人事部の扉をたたいていたら、雇ってもらうことなどけっしてなかったでしょう。
・高校時代の私には、カーロック先生というすばらしい科学の先生がいました。私はいじめに耐えられなくなると、先生の研究室で科学研究をしました。先生は、私が大学生になっても身近な存在で、よく手助けしてくれたものです。高校時代と大学時代に同じメンターだったことは、大きな救いでした。
感想;
ウイキペディアより;
テンプル・グランディンさん(Temple Grandin, 1947年8月29日 - )は、アメリカ合衆国の動物学者、非虐待的な家畜施設の設計者。女性。ボストン生まれ。コロラド州立大学(英語版)教授。自閉症を抱えながら社会的な成功を収めた人物として知られている。 自閉症の中でも学力の高い高機能自閉症である。
親がいろいろなことをやらせてくれたことが大きかったと述懐されています。
そして、親も含めた周りが期待しなくなることが、子どもの可能性を閉じてしまうと言われています。
可能性を閉じてしまうことはつい「自分は無理だ」と諦めてしまうことは誰にでもあるかと思います。可能性にチャレンジするかどうかが大きいのでしょう。
著者もいろいろ学ぶ機会あったから、学力の高い高機能自閉症となったのでしょう。学ぶ機会がなかったら学力は身に付きません。
自閉症者はGifted(ギフテッド)との考えもあります。
その人特有の優れた才能があるのです。
それが開花すると大きな華を咲かします。
まさに著者はそのお一人だったようです。
諸葛孔明の言葉に、
「才能は努力することにより開花する」
があります。
最初から才能があったりするのではないようです。
誰に出会うか。大きいですね。分かってくれる人がいるかどうか。居場所があるかどうか。これは誰にでも言えることかもしれませんね。
自閉症者はどう見えているのかを知るにはとても多くの示唆を与えてくれているように思いました。
薬の助けが自閉症者にとって助けになる場合が多いとのこと、これも初めて知りました。
この本も自閉症者の心がわかりました。
外へ発信できなかった著者が発信できるようになり、ものすごい深い世界に住んでいることがわかりました。
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