新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

ビビアナ・ソフロニツキー(2010年12月26日 於 すみだトリフォニーホール)

2011-02-07 05:59:28 | ききもの
先日聴きに行ったピアノコンサートで渡されたチラシで知った「ロシア・ピアニズムシリーズ」の第1回公演でした。ロシアピアニズムといえばわたくしの大好物です。しかもかの名ピアニストソフロニツキーの愛娘。~ビビアナさんは目元がお父さまとそっくりね,と田舎の親戚並みの感想を持ちました。
開演は15時でしたが13時から復刻版フォルテピアノのレクチャーが行われました。ジョン・レノン似のポール・マクナニー氏(製作者)による解説とビビアナによる試弾。コンサートは2時間後なのにホールのステージで3台のフォルテピアノの音色の違いについて語り・弾きまくるビビアナ。結局,コンサートの1時間前までレクチャーは続きました。
15時開演,2台のフォルテピアノによるオールショパンプログラムを当時の音色で。という演奏会の中で分かったのは,近代ピアノとフォルテピアノは全く別の楽器だということ。鋼鉄のフレームから奏でる音色で聴く人の五感をすべてもぎ取っていくのがピアノだとすれば,薄い共鳴板で空気の揺れをそっと運んできて隣に腰を掛けているようなフォルテピアノ。タッチの繊細さがダイレクトに反映される,グラスハモニカに似た幽かな音色。つまりは曲の解釈云々というよりむしろ聞き手の感情で変化する楽器のように感じられました。マズルカの変拍子が楽譜のためか奏者独自のものなのか,ふわりと軽いのになぜか耳に残りました。
惜しむらくは大ホールとこの楽器の相性があまり良くなかったことでしょうか。中程度のホールのサロンコンサート形式で聴くことができればどんなに幸せだったでしょう。
予定の曲目が終了した後,おもむろに男性3人に担がれた3台目のフォルテピアノが舞台に登場。ここからビビアナの暴れん坊ぶりが発揮されます。3台のフォルテピアノの音色の違いを聴かせてあげるワ,とレクチャーそのままにフォルテピアノを弾きまくるビビアナ。プロの演奏家というものは舞台上で完成型を披露するモノだと思っていたので,目から鱗の体験でした。ここはアンコール曲を弾くタイミングでは?と観客は動揺。そこでやっとアンコール曲のモーツアルトの幻想曲。ビビアナ,オールショパンプログラムだったんじゃ・・・?。最後の最後にはポール・マクナニー氏を呼び出して舞台上で共に挨拶。ポール:「フォルテピアノ,弾いてみたい人~?!舞台に上がって僕のフォルテピアノを近くで見てね~!」(意訳)焦るホールの係員,行儀良く並んではいるものの舞台上にあふれていく観客。舞台に残ってフレンドリートークを楽しむビビアナ。
コンサートというよりもビビアナとフォルテピアノを囲む会;といった催しでした。

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