旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

バイクと排気量

2017年05月02日 | 海外ツーリング
 "250ccと砂漠のラリー"で触れたように1998年には250ccのバイクで走ったラリーを前年1997年には650ccのバイクで走りました。

 250ccの車両はスタートで観客に大爆笑されるような存在だったわけですが、それに乗った私にとって、650ccと250ccのどちらが楽しめたかと言ったら断然250ccだったと断言できます。

 私には650ccは砂漠で乗りこなせなかったけれど250ccは乗りこなせたという事なのでしょう。自分の身の丈に合ったバイクに乗ることの楽しさを再認識した体験だったともいえます。

 そういえば私にとってはじめての海外ツーリングでも日本から送った250ccのオフロードバイクに乗りました。多分、大抵の人よりも”ロングツーリング”。パキスタンからイギリスまでの半年間、約15,000kmのツーリングで250ccに不足を感じなかったわけですから、レンタルバイクを手配する際に”海外では600ccクラス以上が楽だと思いますよ”という私のアドバイスはかなり胡散臭い、無責任な話だといえます。

 "排気量が大きい方がツーリングに向いている”など、よくバイクの用途と排気量は関連付けて語られますが、実際にはそれほど深い関係はないと思います。

 日本の道路交通法上では125cc以下は高速道路に乗れない点で少し不利になりますがそれでも高速道路さえ使わなければツーリングはできますし、大抵の場合、バイクに乗って”美味しい”道路は高速道路ではありません。

 スーパーカブで旅するタイ北部では基本的に100ccのスーパーカブを使いますが、排気量やパワーの不足よりも高速で走らせた際にサスペンションの性能が充分とは言えない事の方に不安を感じます。いつもスタート前に皆さんには説明しているのですが、たとえ舗装路でも高速のままギャップに入るとバイクがどこへ飛ばされるか判らない感じです。

 それでも旅の足としては充分機能しますし、地元に”ステルス”な感じや”超低速”で雑踏の中をかき分けながら走れる強みなど、カブの優位点も多いのです。それより何より、誰にとっても運転することが大きなストレスにならないリラックスした感じがこの企画にぴったりなのです。

 バイクの排気量やパワーは乗り手の技術や精神とのバランスがとても重要だと思います。

 4輪車なら大きな排気量やパワーがある車でも特別なスポーツカーでない限りアクセルを”踏まなければ”普通に走ってくれますが、バイクの場合は大きな車両になるほどアクセルを不用意に開けない自制心が求められますし、体重移動だけでなくてアクセルワークで姿勢をコントロールするような技術も求められます。
 
 一般的に言われているほど、”大排気量”が長距離ツーリング向けという図式が当てはまらないのはこの事によります。大きなバイクでツーリングに出たは良いけれど、操縦することに疲れてしまって、いつまでたっても休憩地点(パーキングエリアや道の駅)から再出発できずにいるライダーを見かける事もあります。

 大型バイクは常に高い集中力を要求してきます。それだけの集中力を持たずに乗っても楽しむことはできません。”バイク自慢”を楽しむことはできますし、それもバイクの楽しみのうちだとは思いますが....。

 最近、自分のバイク初心者時代を思い返すにあたって中古の80ccから少しずつステップアップしていく事を薦めてくれたバイクショップの存在は、自分にとってその後のバイクライフに大きな影響、もちろん良い影響をもたらしてくれたのだなと思います。そんな良い時代にバイクに乗り始めた事に幸運を感じる次第。

 バイクの話とは少し外れるのですが、開高健さんのフィッシュ・オン (新潮文庫)”というエッセイ集の中にこんな一説があります。
 
 開高さんはタイの南の島で島の持ち主に進められるまま色々な銃の試射をするのですがその感想として以下のように書いておられます。

 "どういうものか拳銃は小さいくせに、ひどく重厚な圧力を持っている。.....この贅肉のない鋼鉄の生き物は小さいけれど満々たる精力をひめている”

 この話は拳銃の話ですが、拳銃に対する感想はバイクの存在に通じるものがあると思います。
 
 バイクもやはり”満々がる精力をひめている”乗り物である点が車とは違う点。だから、それに負けないだけの体力とか精神力が無いと疲れてしまいます。身の丈に合ったバイクを知ることは多分、バイクライフを豊かなものにしてくれるはずです。

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 日時 6月16日(金)午後19時~21時30分
 場所 東京 四谷 サロンガイヤール
 会費 3,500円
 詳しくは下記ページから。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html


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