チャレンジ、ドキドキ、ワクワク

　旅行に求めるものは人により千差万別です。歴史や文化に触れるために旅をする人や、乗り物に興味がある人、美術館や博物館を訪れる人、料理を楽しむために訪れる人など、それぞれに現場へ足を運ぶ動機があるわけです。中には訪問した国の数を増やす事に情熱を燃やす人や、巡った世界遺産の数を増やす事に情熱を燃やす人もいます。もちろん、ちょっとした贅沢を味わうとというのも旅行の楽しみの一つかもしれません。

　私自身が今回触れたい話というのは、私個人が旅に求める事について。これは上に上げたことよりも少し抽象的な話になります。
　
　私は、旅の魅力を一言で言い表すと”ドキドキ、ワクワク”という事だと考えています。旅先での”未知との遭遇”への不安にドキドキし、人や風景や珍しい出来事との出会いへの期待にワクワクする、そんな気持ちになれることが旅の魅力なのではないでしょうか。

　ドキドキ、ワクワクするためには繰り返しの日常から、一時離れてちょっとしたチャレンジをしてみる事。このちょっとしたチャレンジという行為こそが旅なのではないかと思うわけです。大規模なチャレンジの場合、それは冒険と呼ばれることになりますね。

　この、ちょっとしたチャレンジとして、新しく踏み出した一歩は確実に自分を一歩前へ進めてくれます。だから、何も旅した国の数や訪れた遺跡の数のような具体的な数値でを競う必要はないでしょう。

　チャレンジして、クリアした後には必ず、物事の見え方が少し変った自分がそこにいるはずです。

　何度もここで触れている話にまた舞い戻ってしまいますが、親切な添乗員や親切なガイドというのは、このチャレンジするという行為を阻害してしまう可能性を常に抱えてしまいます。何でもやってくれる添乗員は、何のチャレンジもさせてくれない添乗員という事になりますからね。

　ここ数年で私が新しく立てた企画、例えばスーパーカブで旅するタイ北部などは、このあたりの原点に回帰する方法を模索すして考えたもの。近年、旅の本当の楽しみが伝わりにくくなって、ただ単に人より”安く”旅行をしている”お買い物上手”な人たちが”旅上手”として紹介されたりといった混乱が見られるので、そのあたりに対する私の提案でもあるわけです。

　たった１週間であっても、チャレンジして、クリアした後には必ず、物事の見え方が少し変った自分がそこにいるはずです。

　そして、たった１日にドキドキ、ワクワクとチャレンジをできるだけ組み込んでみると何ができるのかを考えたのが東京トレッキングというわけです。ルートブックに書かれた暗号を、コンパスを使って解読してルートを辿ると、身近にあるのに普段の生活では気がつかなかった風景と出会ったり、普段の生活では絶対出会う事がなかった、他の参加者と力をあわせてルートを探ったりするのは”ちょっとしたチャレンジ”でしょうし、普段なら歩かない区間を歩く事もまた”ちょっとしたチャレンジ”。

　たった１日であっても、チャレンジして、クリアした後には必ず、物事の見え方が少し変った自分がそこにいるはずです。