旅のウンチク

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昔話:海外ツーリングの思い出

2003年08月15日 | 海外ツーリング
 前にも同じ趣旨の事を書いたかもしれませんが、私は自分が企画しているオフロードのグループツアーをツーリングとして扱われる事にかなり抵抗があります。何度言ってもバイク関連のメディアではツーリングの括りで取り上げられてしまうのですが、これは日本に同様の”遊び方”が存在しない証拠かもしれませんね。少なくとも雑誌編集者の頭の中には存在しないのでしょう。
 かく言う私自身はまったくのツーリングライダーで学生時代にはビバーク装備満載のバイクで日本国内をツーリングもしたし、調子に乗って南アジアへバイクを送ってヨーロッパまでツーリングしたりもしました。本格的に登山をやっていたり、ロッククライミングにはまっていたり、俗に言う”貧乏旅行”をしてみたり、自転車で日本国内を回ってみたりしていた私はどちらかというとそういう事にストイックなものを求めていた部分があって、正直その国の文化とか風景とか、そんな事はどうでも良くて、ただただ真新しい事や、言った事の無いところに挑戦する気持ちばかりが大きくて、そういう意味では初めてバイクを海外に送るために1年間いろいろなアルバイトをしながら資金を作ったり、素人ながら一次輸出入の手続きを行うための事務手続きに挑戦したり、バイク屋さんで修理の実技を1年にわたって勉強させていただいたりといった事は良い経験になりました。
 ただ、残念ながら私にとって初めての海外ツーリングは”拍子抜け”というのが正直な感想です。その頃までに長距離バスや鉄道を使いながらの海外旅行を経験していた私にとっては自分の交通機関を有している旅行というのは”簡単”で”楽チン”な旅行であり、ストイックな体験を求めていたあの頃の自分にはあっていませんでした。
 強いて言うなら、250㏄などというバイクがそんなに多く走っていないエリアを旅するときに地元の人たちから受ける羨望のの眼差しや、物珍しさから来る歓迎などをまるで自分自身が偉くなったかのような錯覚がやたらに心地よかった事くらいがバイクで旅した心地よさだったかと思います。
 実際にはスペアパーツも限られた中、それほど大冒険なルート選択をする事はできず、荷物を満載したバイクではバイク特有の機動力のある走りを堪能する事もできず、ただただ交通機関としてバイクを利用しているというのが海外ツーリングライダーの実態であって、実際に私が海外で出会った日本人ツーリングライダーは全員そういった旅にイスタンブールあたりに到着した頃には飽きがきて、それぞれにそこから先のもっとストイックな旅の形を模索したりもしていました。
 メディアというのは怖いもので、バイク雑誌なんかには”海外ソロツーリング最高”的な記事が載っていますが、この退屈なツーリングを”すばらしい”と感じた少数派の変わった人たちの意見。”つまらない”と感じた人間は雑誌に記事を書いたりしませんからね。記事の端々に”自分はスゴイダロ”的な表現が見え隠れする記事も多く、先ほど挙げた”まるで自分が偉くなったかのような錯覚”を錯覚したまま帰ってきた残念な人なんだなぁと感じさせられたりもします。
 言葉が通じない国で自分の目的地を目指して鉄道やバスを確保したり、そのスケジュールに合わせて動いたり・・・しかもだいたいスケジュールどおりにはいかない。の方がよっぽど大変なのです。目的地に着いたら着いたで荷物をもって宿泊先を探したり、交通機関のスケジュールに左右されるため必ずしも明るいうちに着くことが出来るとも限らず・・・バイクじゃないたびは結構大変。人力で運べる荷物の量に収めるため、あまり多くの荷物を持つ事もできません。
 それに比べればバイクの旅は簡単。ビバーク用の装備も積み込めるし、明るいうちに目的地に着くためには自分がスケジュールを調整すればよいわけです。
 セルフツーリングは旅の要素を残すために最低限の手配となっているわけですが、それでもある意味初心者でも安心な旅かもしれませんね。

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