ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

ボロをまとった暮らしから一世代で裕福に

2008年07月26日 23時56分50秒 | 読む
この本は、「FROM RAGS TO RICHES A STORY OF ABU DHABI」の邦訳版。まだドバイに赴任する前に出張で来ていた時に、カルフールの本売り場かどこかで見つけ、日本語の本は珍しいと思い買った記憶がある。

1995年に英語で出版された後、現在はアラビア語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、日本語、ウルドゥ語に翻訳されているロングセラーだ。

著者ムハンマド・アル・ファヒーム氏はアブダビ首長国の一部アル・アインに1948年に生まれた。前UAE大統領で今日のUAEの繁栄の基礎を作ったとされる故ザイード首長と父親が親しかったことから、英国留学など当時にしては比較的恵まれた教育を受け、最終的にアブダビ商工会議所の主席副会頭まで勤めた人だ。

この本には、まだ石油が発見される以前の貧しかった時代から1960年の相当量の石油の発見を経て、ザイード大統領のリーダーシップの下で序々にではあるが成長を遂げるアブダビが生々しく描かれている。また、英国に統治されていた時代、英国が病院や学校などに対する投資を怠っていた様子は辛らつに批判されている。(実際、著者の妹は適切な治療を受けていれば助かっていたであろう火傷がもとで亡くなっている)。

英国からUAEが独立したのは、他の国のようにUAE国民が勝ち取ったものではなく、英国がもはやこの地域を統治する能力を失って、自ら統治権を放棄したものであること。また、UAEの建国にあたっては、故ザイード首長が、バーレーンやカタールも含めて統合を図ろうと奔走したものの、両国が別の国を作ることを選択し、最終的に現在の首長国連邦の形になったこと。独立後も、英国人の教えを乞いながら、苦労してそれまでばらばらだった各首長国をまとめあげ、サウジアラビアとの領土問題などの難問を解決して、今日の連邦制度を整備していった様子がわかる。

アブダビ人の視点から描かれており、ドバイ人の視点から見たらまた違う見方があるのかもしれない。だが、UAEの歴史を学ぶ上で、非常に重要な参考文献であることは間違いない。

なお、日本語版の訳者はアブダビ石油の所長職にあった方のようだ。プロの翻訳家でもないのに翻訳を試みた労を多としたいが、失礼ながらいささか日本語としては読みづらい。先に進むのに何度も読み返す必要があった。英語版を買ってきて読んでみたが、平易な英語で書かれており、こちらの方が頭に入り易いと感じる。英語が達者な人は、原語(英語)で読むことを勧める。(ただし、1995年の皇太子ご夫妻UAE公式訪問の時の写真は日本語版にのみある。)

英語版とアラビア語版が60ディルハム、それ以外の言語版は75ディルハムで売られている。最近は日本語版をみかけなくなったが、ドバイにおける日本人人口の急増により品切れになっているかもしれない。

新しくドバイに駐在員として赴任する人達に必読書として勧める一冊。

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