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『プルターク英雄伝』鶴見祐輔著(潮出版社)を読んで

2012-10-03 08:20:48 | 書評


『プルターク英雄伝』鶴見祐輔著(潮出版社)を読んで


この書は、帝政ローマ時代のギリシャ人プルタークが書いた著述だ。エマーソンをして、「全世界の図書館が、焼失しつつありと聞かば、プルターク英雄伝を救い出すべし。」といわせた書である。古典は、読んでいて、歴史の重みを感じる。また、時間の感覚がなくなる。まるで、現代のことのように、2000年以上も前のことが、まるで目の前に手にとるようだ。なお、紀元1世紀に書かれたこの書がラテン語になったのが1470年で、フランス語になったのが16世紀というから、世に広まるまで1000年以上のときを経過しているのは、興味深い。

さらに、特別に思うことは、アレキサンダーの時代(紀元前356年~323年)、シーザーの時代(紀元前100年ごろ~紀元前44年)の時代を、プルタークが生きた紀元46年~127年の時代に書いていることによる、内容の生き生き感だ。登場人物と著者とのこの程度の開きだと、語り継がれてきたことや著作物などが残っていて、相当細部まで記述できるのだろう。それを、われわれが読めるのだから、ありがたい。2000年以上の時を、100年~400年程度に縮めてくれるのだ。

アレキサンダー編、シーザー編を読むと、中味がまさに圧巻だ。英語で言うと、スペクタキュラーというのがぴったりである。われわれが、まさにシーザーのそばにいるという臨場感を覚える。まさにこれが、プルタークの叙述力なのだろう。そして、アレキサンダー、シーザーの中から、勇気、決断力、知恵、人間の深さなど多くのものを学べるのである。ナポレオンは、シーザー、アレキサンダーの通りに生きたといわれている。


『プルターク英雄伝』鶴見祐輔著(潮出版社)