京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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教科書によく出るシリーズ 源氏物語 車争ひ その1

2020-11-20 08:08:10 | 俳句
教科書でよく出るシリーズ  『源氏物語』 葵 車争ひ
 登場人物
○光源氏=大将殿 近衛府(帝直属軍)の大将・・将来を約束された名誉ある地位
○葵の上(あおいのうえ)・・光源氏の正妻。父は左大臣、母は大宮。
  プライド高い。光源氏とはあまり打ち解けていない。ただし、妊娠中。
○六条御息所(読み ろくじょうみやすどころ )・・前の皇太子の妃。前の皇太子とは死別。娘がいる。娘は伊勢神宮の斎宮(さいぐう 神に奉仕する女性)に選ばれる。光源氏と恋愛関係になっているが、正妻でないので、不安がある。
【本文】その1
 大殿には、かやうの御歩きもをさをさし給はぬに、御心地さへなやましければ思しかけざりけるを、若き人々、「いでや、おのがどちひき忍びて見侍らむこそ、映えなかるべけれ。おほよそ人だに、今日の物見には、大将殿をこそは、あやしき山賤さへ見奉らむとすなれ。遠き国々より、妻子を引き具しつつもまうで来なるを、御覧ぜぬは、いとあまりも侍るかな。」と言ふを、大宮聞こし召して、「御心地もよろしき隙なり。候ふ人々もさうざうしげなめり。」とて、にはかにめぐらし仰せ給ひて見給ふ。
【口語訳】
 大殿(葵の上)は、このようなお出かけをめったになさらない上に、(妊娠して)ご気分までも悪いのでご考慮に入れなかったのを、若い女房達が、「いやいや、私たち仲間でこっそりと見ますようなことは、引き立つ華やぎがないでしょう。一般人でさえ、今日の葵祭見物には、大将殿(光源氏様)を、いやしい田舎者までもが見申し上げようとすると聞いています。遠い地方から、妻子を引き連れて参上するらしいのを、あなた様がごらんにならないのは、とてもあまりといえばあまりですよ。」と言うのを、大宮(葵の上の母)がお聞きになって、「(あなた=葵の上の)ご気分もまあまあの時である。あなたにお仕えする女房達もつまらなそうだ。」といって、急に大宮が(外出の)お触れをおっしゃって、葵の上が(葵祭を)見ていらっしゃる(ことになった)。
【語句解説】
大殿・・葵の上をさす。
かやうの御歩き・・意味は「このようなお出かけ」。「歩き」は「ありき」と読む。葵祭の御禊の行列を見物するというようなこと。
をさをさ~打ち消し語  意味は「めったに~ない」
給は・・四段活用補助動詞「給ふ」は尊敬語
「ぬ」は四段活用未然形に接続→打消助動詞「ず」の連体形
御心地・・葵の上のご気分
さへ・・までも
なやましけれ シク活用形容詞「なやまし」已然形 意味は「気分が悪い」
関連で 「なやむ」は「病気になる」 「なやみ」は「病気」の意味になることがある。
思しかけ 下二段動詞「思しかく」未然形 意味は「ご考慮に入れる」尊敬語
ざり・・打消助動詞「ず」連用形 ける・・過去助動詞「けり」連体形
人々・・「女房達」 女房とは、高貴な方に使える女性たち。今ならキャリアウーマン。女房自身、中流貴族の娘である。そうじゃないと、ハイソな世界のことを知らないし、つとまらない。
いでや・・「いやいや」 おのがどち・・「私たち仲間」
ひき忍び・・「こっそりと」 侍ら・・丁寧語 現代語訳すると「です」「ます」「ございます」の意味になる。
映え・・「見栄え 引きたつこと」  おほよそ人・・「一般人」
だに・・「でさえ」最低のものを例に挙げるときに使う。「ダニは最低」と覚えましょう。
物見=見物   
大将殿・・「光源氏」この時22歳。近衛大将だった。 葵の上の夫の晴れ舞台でもあるので、女房達はしきりに誘う。まあ本音のところ、祭り見物に自分たちが行きたくてうずうずしているということでしょうが。
あやしき・・「いやしい」 古文の「あやし」は「いやしい」か「不思議だ」「変だ」の意味と押さえましょう。
山賤・・「田舎者」よみ方は「やまがつ」。平安時代の都人は、都中心で世界を考えている。地方の人を低く見ていた。上から目線なんです!
国=地方。都の対義語。  さへ・・「までも」
奉ら・・「申し上げる」謙譲語  む・・意志助動詞
すなれ・・「す」サ変動詞「す」終止形 「なれ」は終止形に接続しているので、「伝聞・推定」助動詞
※助動詞「なり」について
 連体形・名詞―なり・・・断定助動詞
 終止形―なり・・・伝聞・推定助動詞・・ただしラ変型タイプの時は連体形接続
具し・・「連れ」
まうで来・・「参上する」謙譲語  「まうで来」はカ変動詞終止形 そのあとの「なる」も終止形接続なので、「伝聞・推定」
御覧ぜ・・サ変「御覧ず」未然形。「ごらんになる」の意味 尊敬語 そのあとの「ぬ」は未然形に接続→打消助動詞「ず」連体形
あまり・・「あまりといえばあまり」「ひどい」 女房達、大騒ぎ。
かな・・詠嘆 「だなあ」
大宮・・葵の上のお母さん。夫は左大臣。
聞こし召し・・「お聞きになり」尊敬語
よろしき・・シク活用形容詞「よろし」連体形 「よろし」は「まあまあ」ぐらいのいみ。
隙・・よみかたは「ひま」。いみは「時」ぐらいの意味。
候ふ・・「お仕えする」謙譲語 
さうざうしげな・・下に「ん」の省略。「さうざうしげなん」が元の形。「さうざうしげなん」は「さうざうしげなる」の撥音便で発音が「ん」に変化。「さうざうしげなる」は形容動詞「さうざうしげなり」の連体形。意味は「つまらない さびしい」
関連で形容詞「さうざうし」も意味は同じ。
めり・・推定助動詞 「目」で見て推定する時に使う。
とて・・「と言って」
めぐらし・・「葵の上外出のお触れ」
仰せ給ひ・・「仰せ」は「おっしゃる」の意味。「仰せ」も「給ひ」も尊敬語。尊敬語を二つ重ねて、二重敬語にしている。二重敬語のこの部分の主語は「大宮」。
見給ふ。・・「仰せ給ひ」と同じ文中だが、ここは尊敬語一つだけ。二重敬語ではない。
ここの主語は「葵の上」 
文中の尊敬語の変化は、主語の変化を表していることがあるので、注意!


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