京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2024年4月 京都童心の会 通信句会結果 【選評】後半

2024-05-24 12:04:49 | 俳句
2024年4月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】後半
○野谷真治特選
66 雨上がり虹を仰いでペダル漕ぐ 佐久間照三
 漫画家永島慎二さんの作品に、自転車を漕いで、少年が空へ舞い上がるシーンがあった。そこには、虹はなかったが、この作者は、雨上がりの虹を見たのだろう。引き付けられた一句です。
〇蔭山辰子特選
55 春の海どこかに地震の巣がひそむ 金澤ひろあき
 日本列島の周囲にはいくつもの活断層が押し合っていると聞きます。どこで地震に見まわれても不思議でない。テレビやスマホに地震予報にハッといたします。海はおだやかでも、心配です。
39 リュックにはマフラー手袋でも今日は日傘がほしい 岡畠真理子
 冬から春、そして夏へ駆け足の日々。今年の夏も思いやられます。どうぞお元気で!
〇佐久間照三選
特選
55 春の海どこかに地震の巣がひそむ  金澤ひろあき
 日本に住んでいることを再認識させてくれる句です。この季節、暖かで穏やかな海に囲まれた日本は世界でも有数の地震大国なのです。誰も隠れることも逃げることも出来ません。受け入れ認めるしかない天然災害。
1 自転車倒す草の上寝転がる    野谷真治
ペダルを漕ぐのに疲れ、ふと見つけた草むら。良いベッドを見つけたと寝転がる。少年時代に戻った気分。気持ちの良い春の昼寝ですね。
11 中学卒業金ぱつ頭 今2児のお父さんで光ってる 遠藤修司
 学生時代ちょいワルだった少年が大人になると普通に真面目だった子供より世間のことが解っていて輝いて見えることがある。そしてより自分の子供のことが理解できて包容力のあるお父さんになる。中高の講師をしていた時にも見かけました。
14 道たづね上ガル下ガルに京余寒 松村芳子 
 地方からきた人には「(北へ)上がる(南に)下がる」が難しいと言われる。確かに京都にしかない言葉の寒さかもしれない。旅の楽しみの温度を下げるぐらいには。そして春だからと思っていたらなお残る寒さにやられたのかもしれない。
13 降る雪にゴルフボールの吸われ 松村芳子
一見すると風景描写のようにも読めるが、例えば、一時代を築いた人物も時代の流れにやがて埋もれていく。そんな比喩めいたものを感じる。
22 生きてれば八十才 若い人死なないで 蔭山辰子
 戦争がなく健康さえ許せば人は長生きできるのに、戦争は若い生命を次々と奪っていきます。日本のアニメ映画198X War(だったと思う)では、米ソの核戦争に疲弊した生き残った人類が人種国家を超えて戦争をやめろと行進するシーンがありますが、そんな状況にいつなるか判らない危うさがありますよね。
23 自然相手は仕方ないけど戦争はダメ 蔭山辰子
 本当ですね。自然とも共存共栄が一番ですが、人間には人間の都合があり、戦うことにもなりますが、人間同士が戦う訳ではありません。自滅の道なのに、どうして続くのでしょうか。と言いつつ、人間が戦うことを忘れたら種としての滅亡につながることも生物学的には事実ですが。
25 ロシアには閻魔大王いないのか   蔭山辰子
 本当にそう思いますね。プーチン大統領の横暴さは誰が正してくれるのでょうか。歴史がいつかというの話にならないことを願います。
39 リュックにはマフラー手袋でも今日は日傘がほしい 岡畠真理子
 桜の季節は寒い朝から始まって昼は時に夏日のように暖かい。そんな状況が目に浮かぶ。
42 そろそろお役御免か木守柿  金澤ひろあき
 来年も良く実りますようにと残す柿一つ二つ。まるで生徒を見守る先生のようです。教えて導き立派なに卒業させる。自分も引退の頃かと感傷的な句です。
47 雨の中の花がうつむく一周忌 金澤ひろあき
 一周忌の悲しみと雨の中の桜の花びらの様子がマッチしている。参列者も亡き人を思ってうつむいている様が伝わってくる。
56 鐘響きやまず花降りやまず  金澤ひろあき
 花吹雪が響く鐘の音によって大円団となっている。人生の最後はこうあって欲しいと思わせる。
70 青柳や聞き返せずに生返事  三村須美子
 言い得て妙。風の吹くままにあちらこちらへ揺れる柳の枝には人の話を効いて考える余裕はないだろう。
77 退院の歩き初めの花見かな  三村須美子
 退院して身も心も気分良し、おまけに帰り道には桜の花が咲いている。退院祝いをしてくれているかのようですね。
85 つばめ舞う空は自在の初舞台 松村芳子 
 成長した雛が我が物顔で初飛行をしているところだろう。「自在」という語句が生きている。自由闊達に飛び回る姿が目に浮かぶ。
86 髪染めし亡母に似て来し花鏡 松村芳子
 髪を染めると亡き母に似てきた自分の顔と鏡に映る幻の母の顔が笑いかけているようにも見える。自分の笑みだと気づいて嬉しいようなやるせないようなため息が聞こえる。
○松村芳子特選
73 御仏の笑みと憤怒や寺の花 三村須美子
 御仏は黙しておられますが、心の中につぶやきの御心もお持ちでしたか。
〇岡畠真理子特選
49 逢い別れ 雨の乗換駅ホーム  金澤ひろあき 
歌の一節や映画の一コマを連想したくなるような句です。
【お知らせ】
5月句会
日時 5月19日(日)午後2時
場所 阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
投句 毎月第2週まで 10句前後ですが、少なくても可です。
 84円切手3枚同封下さい。
選評  来月第1週までに頂けるとありがたいです。
京都童心の会  年会費 3000円
月句会参加の方は句会で頂いておりますので、不要です。
【訃報】
〇岡畠さな子様を悼む
長い間御世話になりました岡畠さな子様が亡くなられたとのお知らせを、ご親族の方より頂きました。ご生前には、坪谷様とともに、心をかけてくださり、とても良くして頂きました。
お元気な頃は毎月、西宮より京都までお越しくださり、楽しいことばかりで、私達の人生を豊かにして下さいました。
改めまして、ご生前の厚情に感謝申し上げますと共に、ご冥福をお祈り申し上げます。
  大切な方が亡くなり花が去る    金澤ひろあき
  青む視野 花終わる頃逝きし人
〇暉峻康瑞様を悼む
  こいのぼりよ吾ならば身を青柴へ  暉峻康瑞(遺句)
 ご子息の方より訃報を頂きました。鹿児島県志布志市の浄土真宗の僧侶で、口語俳句の先達です。同地の口語俳人・藤後左右を師と仰いでおられ、口語俳句を実践されました。
 私は口語俳句協会で知遇を得、長い間ご教示いただきました。時折、仏教のお話も聞かせていただき、考えさせられました。
 本当に長い間のご鞭撻、ありがとうございました。
  説かれるは浄土の教え口語にて   金澤ひろあき