一週間後、我々R社の面々は、再びK県Y市にあるB軍基地ゲート前に来ていた。
今日も朝から、広井の怒気を含んだ声が、ゲート前で響いている。
「下川ぁ!下川はどこよ!M社の下川ぁあああ!」
私はどこかで聞いた事のある名前だと思ったが、すぐには思い出せなかった。
「下川はどこ!」
「ああ?俺のことか?」
少し離れた場所からのっそりと、頭が部分的に薄くなり始めた中年オヤジが現れた。
「M社の下川ね!呼ばれたらすぐに来なさいよぉ!」
「き、聞こえなかったんだよ…」
オヤジは、ブツブツと言いながら、かなり不満そうだ。
「大体なんだあの女は!どうみても俺より年下じゃねぇか。それなのに俺を呼び捨てにしやがって…」
下川は、ブツブツと独り言を言っている。
「次!R社の木田、それから小磯、野村…ってまたあんた達なの?」
「おっはよーございます!ちゃんと五人全員揃ってますよぉ!」
私は笑顔で広井に挨拶をした。
「はい、ちゃんと身分証明書を用意してね!」
「はぁいっ!」
私の大袈裟な返事に、思わず広井も笑顔を見せる。
「がははは、木田君、あの広井さんが朝から笑顔を見せるなんて、中々大したもんだよ!」
小磯が私の肩をバシバシと叩きながら、驚いた顔を見せる。
「だから、最初に任せてくださいって言ったでしょ」
「これで広井さんのことは、木田さんに任せれば安心だね!」
ハルも笑いながら頷く。
仮パスを受け取って門の中へ入ると、駐車場に人の列が出来ていた。
「うぉわっ!これ、何人居るの?」
駐車場には、百数十人近い作業着を着た職人が、列を作ってS社の送迎を待っている。
「これは、あり得ないよね」
私は小磯とハルを見たが、二人は涼しい顔をしている。
「まあこんなもんでしょ」
「これより多い時もあるよね」
職人たちは、S社が用意するワゴンやライトバンに、次々と吸い込まれて行く。
「小磯さん、なんか無茶苦茶な乗車方法に見えるんですけど…」
助手席や後部座席だけでなく、ワゴン車の荷台にも人が乗り込んで行く。その人員運搬能力は驚異的だ。例えばライトバンの場合、助手席に一人、後部座席に三人、荷台に五人が乗り込む。
我々R社の五人も、ライトバンの荷台に乗り込んだ。
「こういうのを『目から鱗』って言うんですかね?」
ノリオがライトバンの荷台で、言い出す。
「いやぁ、微妙に違う気がするなぁ…」
私は苦笑いをしながら答える。
「うひょひょひょ、木田さん、さっきゲートで会ったオジサンが、フラフラと歩いている気がするんだけど…」
ハルが窓の外を見ながら、ニヤニヤして言った。
「え?ここって歩いて行ってもイイんだっけ?」
「絶対駄目!」
小磯が即答する。
「じゃあ、あのオジサンは?」
荷台の後部ガラスからは、道路をテクテクと歩いている中年オヤジが見える。
「あ、あれは広井さんの車かなぁ?」
ハルが呟くのと同時に、徒歩オヤジの前に、対向車線からUターンした広井さんの車が急停車した。
「あ、なんか怒鳴られてるよぉ!うひゃひゃひゃひゃ!」
「きゃはははは!広井さんにめちゃめちゃ怒られそうですね」
ハルとノリオが荷台で爆笑している。
「うはははは、あのオヤジ、いかにも言う事を聞かなさそうだったもんね」
私の言葉に、荒木もニヤニヤしながら頷いている。
事務所の前に着いてしばらくすると、オヤジが、広井の強制連行車輌から降りて来た。
「ったく、あんな列に並んでなんか居られないと思ったから、自分で歩いて来たのに…。あの女、うるさいったらありゃしない…」
マンガやアニメの世界では、メカニックマンのオヤジは、典型的な頑固オヤジの場合が多いが、この下川という人は、それを地で行くような偏屈オヤジだった。
今日も朝から、広井の怒気を含んだ声が、ゲート前で響いている。
「下川ぁ!下川はどこよ!M社の下川ぁあああ!」
私はどこかで聞いた事のある名前だと思ったが、すぐには思い出せなかった。
「下川はどこ!」
「ああ?俺のことか?」
少し離れた場所からのっそりと、頭が部分的に薄くなり始めた中年オヤジが現れた。
「M社の下川ね!呼ばれたらすぐに来なさいよぉ!」
「き、聞こえなかったんだよ…」
オヤジは、ブツブツと言いながら、かなり不満そうだ。
「大体なんだあの女は!どうみても俺より年下じゃねぇか。それなのに俺を呼び捨てにしやがって…」
下川は、ブツブツと独り言を言っている。
「次!R社の木田、それから小磯、野村…ってまたあんた達なの?」
「おっはよーございます!ちゃんと五人全員揃ってますよぉ!」
私は笑顔で広井に挨拶をした。
「はい、ちゃんと身分証明書を用意してね!」
「はぁいっ!」
私の大袈裟な返事に、思わず広井も笑顔を見せる。
「がははは、木田君、あの広井さんが朝から笑顔を見せるなんて、中々大したもんだよ!」
小磯が私の肩をバシバシと叩きながら、驚いた顔を見せる。
「だから、最初に任せてくださいって言ったでしょ」
「これで広井さんのことは、木田さんに任せれば安心だね!」
ハルも笑いながら頷く。
仮パスを受け取って門の中へ入ると、駐車場に人の列が出来ていた。
「うぉわっ!これ、何人居るの?」
駐車場には、百数十人近い作業着を着た職人が、列を作ってS社の送迎を待っている。
「これは、あり得ないよね」
私は小磯とハルを見たが、二人は涼しい顔をしている。
「まあこんなもんでしょ」
「これより多い時もあるよね」
職人たちは、S社が用意するワゴンやライトバンに、次々と吸い込まれて行く。
「小磯さん、なんか無茶苦茶な乗車方法に見えるんですけど…」
助手席や後部座席だけでなく、ワゴン車の荷台にも人が乗り込んで行く。その人員運搬能力は驚異的だ。例えばライトバンの場合、助手席に一人、後部座席に三人、荷台に五人が乗り込む。
我々R社の五人も、ライトバンの荷台に乗り込んだ。
「こういうのを『目から鱗』って言うんですかね?」
ノリオがライトバンの荷台で、言い出す。
「いやぁ、微妙に違う気がするなぁ…」
私は苦笑いをしながら答える。
「うひょひょひょ、木田さん、さっきゲートで会ったオジサンが、フラフラと歩いている気がするんだけど…」
ハルが窓の外を見ながら、ニヤニヤして言った。
「え?ここって歩いて行ってもイイんだっけ?」
「絶対駄目!」
小磯が即答する。
「じゃあ、あのオジサンは?」
荷台の後部ガラスからは、道路をテクテクと歩いている中年オヤジが見える。
「あ、あれは広井さんの車かなぁ?」
ハルが呟くのと同時に、徒歩オヤジの前に、対向車線からUターンした広井さんの車が急停車した。
「あ、なんか怒鳴られてるよぉ!うひゃひゃひゃひゃ!」
「きゃはははは!広井さんにめちゃめちゃ怒られそうですね」
ハルとノリオが荷台で爆笑している。
「うはははは、あのオヤジ、いかにも言う事を聞かなさそうだったもんね」
私の言葉に、荒木もニヤニヤしながら頷いている。
事務所の前に着いてしばらくすると、オヤジが、広井の強制連行車輌から降りて来た。
「ったく、あんな列に並んでなんか居られないと思ったから、自分で歩いて来たのに…。あの女、うるさいったらありゃしない…」
マンガやアニメの世界では、メカニックマンのオヤジは、典型的な頑固オヤジの場合が多いが、この下川という人は、それを地で行くような偏屈オヤジだった。