私の勝手な思い込みかもしれないが、日本全国、どこのフィリピンパブに行っても、必ず入店時に言われる言葉がある。
その言葉は、
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
だ。
断じて、
「いらっしゃいませ」
では無い。
どの地方にあるフィリピンパブに入っても、必ず彼女たちは、独特なイントネーションで叫ぶのだ。
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
と。
そして、我々六人がそのフィリピンパブに入店した時も、やはり全員がその言葉を大声で発した。
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
私は佐野に、小刻みに頷きながら言った。
「いやぁ、佐野さん、この独特の『イラッシャイむぁああせぇえええ!』を聞くと、俺は今、フィリピンパブに来ているんだなぁって実感しますね」
「そうだべ、やっぱりそうだべぇ」
佐野もウンウンと頷きながら、まるで常連のような足取りで、薄暗い店内のソファに腰を下ろした。
「田代と渋井君は、そっちのソファね」
「木田君、じゃあ俺とハルはこっちね」
そんなに大きな店では無いので、一度に全員は座れない。
「佐野さん、後藤さんは良かったんですか?」
後藤もフィリピンパブに誘ったのだが、宿の夕食時の晩酌で、すっかり良い気分になってしまったみたいで、六十代のやや老いた肉体は、気持ちよくベッドで就寝する事をチョイスしていた。
「一度は誘ったんだから大丈夫だよ。それにどうしても来たくなったら、宿までは徒歩一分なんだから、自分で来るさ」
「ま、それもそうですね」
私と佐野がソファに腰を下ろすと、すぐに茶髪ロングヘアーの派手な女の子が、佐野の隣に腰を下ろした。
「今夜モ来テクレタねぇ!」
「おお、今夜は大勢連れて来たんだから、しっかりサービスしろよぉ」
「イツモシテルでしょ!」
「ああ?全然物足らないよ」
「ソンナコト無いでショぉー!」
佐野はニヤニヤとしながら、リアンと名乗る女の子をからかった。
「イラッシャイむぁせー、トナリに座っテモいいデスカぁ?」
おしぼりと、氷が入ったアイスペールを持った女の子が一人、私の隣にやって来た。かなりムチムチとしていて、しかも巨乳だ。
「はいっ!座って座って!」
私はソファの隣を、右手でバンバンと叩いた。女の子はニコリとしながら、ドレスの腰からお尻のラインを強調しながら、腰を下ろす。
「どーだい、気に入った?」
佐野が得意げな顔をする。
「いいですねぇ、めっちゃ好みですよ」
「俺が昨日の夜から、リアンに必ずこの娘をキーちゃんに付ける様に言っておいたんだよ」
佐野は、現場でも呑屋でも、常に『段取り八分』の精神だ。
「私ノ名前ワ、サリーです」
ドレスの胸元から、豊満な谷間を覗かせ、女の子は自己紹介をした。
「ハイハイ、サリーちゃんね」
「アナタノ名前を、教えて下サーイ!」
サリーは、話しながらグラスの用意をする。
「えー、チョモランマです」
「チョ、チョモランマ?」
佐野がやり取りを聞いて爆笑している。
「ドコガ、名前ナノ?」
「チョモ・ランマだよ」
「名前、ランマ?」
「そう、ランマ」
いきなり佐野の隣に座っているリアンが、大声で叫んだ。
「ソレ、私知っテルよぉ!ソレ山ノ名前だよぉ!」
「くはははは!」
「なんだいキーちゃん、もうばれちゃってるじゃん」
リアンは、サリーにタガログ語(フィリピンの現実的な公用語)でその事を伝えている様だ。
パシッ!とサリーは私の肩をやさしく叩くと、顔を近づけて言った。
「本当ノ名前ワ?」
「木田です」
「キダサン?」
「呼びにくかったら、佐野さんと同じ『キーちゃん』でいいよ」
「ワカッタヨぉ、キーチャンね」
私はサリーの香水の匂いを嗅ぎながら、うんうんと頷いた。
「ドウスルノ、みんなセットにスルのぉ?」
リアンがハウスボトルを手に持って、佐野に訊いている。
「セットだよ、セット!」
私は財布を取り出すと、一万円札を二枚取り出した。
「はい、じゃあまずは、これで六人分ね」
リアンは席から立ち上がると、カウンター横に設置してある、店内に全然馴染まない、白色の機械の前に立った。
「おお!佐野さん、あれが食券販売機!?」
「見ててごらん、キーちゃん」
佐野はニシャニシャとしながら、ナイスボディのリアンの後姿を鑑賞していた。
その言葉は、
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
だ。
断じて、
「いらっしゃいませ」
では無い。
どの地方にあるフィリピンパブに入っても、必ず彼女たちは、独特なイントネーションで叫ぶのだ。
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
と。
そして、我々六人がそのフィリピンパブに入店した時も、やはり全員がその言葉を大声で発した。
「イラッシャイむぁああせぇえええ!」
私は佐野に、小刻みに頷きながら言った。
「いやぁ、佐野さん、この独特の『イラッシャイむぁああせぇえええ!』を聞くと、俺は今、フィリピンパブに来ているんだなぁって実感しますね」
「そうだべ、やっぱりそうだべぇ」
佐野もウンウンと頷きながら、まるで常連のような足取りで、薄暗い店内のソファに腰を下ろした。
「田代と渋井君は、そっちのソファね」
「木田君、じゃあ俺とハルはこっちね」
そんなに大きな店では無いので、一度に全員は座れない。
「佐野さん、後藤さんは良かったんですか?」
後藤もフィリピンパブに誘ったのだが、宿の夕食時の晩酌で、すっかり良い気分になってしまったみたいで、六十代のやや老いた肉体は、気持ちよくベッドで就寝する事をチョイスしていた。
「一度は誘ったんだから大丈夫だよ。それにどうしても来たくなったら、宿までは徒歩一分なんだから、自分で来るさ」
「ま、それもそうですね」
私と佐野がソファに腰を下ろすと、すぐに茶髪ロングヘアーの派手な女の子が、佐野の隣に腰を下ろした。
「今夜モ来テクレタねぇ!」
「おお、今夜は大勢連れて来たんだから、しっかりサービスしろよぉ」
「イツモシテルでしょ!」
「ああ?全然物足らないよ」
「ソンナコト無いでショぉー!」
佐野はニヤニヤとしながら、リアンと名乗る女の子をからかった。
「イラッシャイむぁせー、トナリに座っテモいいデスカぁ?」
おしぼりと、氷が入ったアイスペールを持った女の子が一人、私の隣にやって来た。かなりムチムチとしていて、しかも巨乳だ。
「はいっ!座って座って!」
私はソファの隣を、右手でバンバンと叩いた。女の子はニコリとしながら、ドレスの腰からお尻のラインを強調しながら、腰を下ろす。
「どーだい、気に入った?」
佐野が得意げな顔をする。
「いいですねぇ、めっちゃ好みですよ」
「俺が昨日の夜から、リアンに必ずこの娘をキーちゃんに付ける様に言っておいたんだよ」
佐野は、現場でも呑屋でも、常に『段取り八分』の精神だ。
「私ノ名前ワ、サリーです」
ドレスの胸元から、豊満な谷間を覗かせ、女の子は自己紹介をした。
「ハイハイ、サリーちゃんね」
「アナタノ名前を、教えて下サーイ!」
サリーは、話しながらグラスの用意をする。
「えー、チョモランマです」
「チョ、チョモランマ?」
佐野がやり取りを聞いて爆笑している。
「ドコガ、名前ナノ?」
「チョモ・ランマだよ」
「名前、ランマ?」
「そう、ランマ」
いきなり佐野の隣に座っているリアンが、大声で叫んだ。
「ソレ、私知っテルよぉ!ソレ山ノ名前だよぉ!」
「くはははは!」
「なんだいキーちゃん、もうばれちゃってるじゃん」
リアンは、サリーにタガログ語(フィリピンの現実的な公用語)でその事を伝えている様だ。
パシッ!とサリーは私の肩をやさしく叩くと、顔を近づけて言った。
「本当ノ名前ワ?」
「木田です」
「キダサン?」
「呼びにくかったら、佐野さんと同じ『キーちゃん』でいいよ」
「ワカッタヨぉ、キーチャンね」
私はサリーの香水の匂いを嗅ぎながら、うんうんと頷いた。
「ドウスルノ、みんなセットにスルのぉ?」
リアンがハウスボトルを手に持って、佐野に訊いている。
「セットだよ、セット!」
私は財布を取り出すと、一万円札を二枚取り出した。
「はい、じゃあまずは、これで六人分ね」
リアンは席から立ち上がると、カウンター横に設置してある、店内に全然馴染まない、白色の機械の前に立った。
「おお!佐野さん、あれが食券販売機!?」
「見ててごらん、キーちゃん」
佐野はニシャニシャとしながら、ナイスボディのリアンの後姿を鑑賞していた。