TG工業での軟質ゴムライニングの剥離作業を終えると、我々は徐々に疲れ始めていた。
数日から一週間程度の出張工事を、短期間に何度も続けると、人間は日常生活の些細な事にストレスを感じる様になる。
その日、三人でB軍基地に持ち込む機器のメンテナンスをしていた時だった。
「小磯さん、このカッターナイフの刃を『全出し』にして、工具の中に放り込むのは止めてよ、危ないじゃんね」
私は半分笑いながら、小磯に注意を促した。いつもなら笑い話で済まされる程度の事だった。だが、その日は違っていた。
「ああっ?いちいち細かい事をうるさいんだよ!」
いきなり小磯が私の一言で切れ始めた。
「細かい事って言うけど、こんな事で手でも切ったら、大変でしょう!まだ出張工事も残ってるのに」
「怪我なんかしてないじゃねぇか、どうしていつも細かい事をいちいち言うんだよ!」
小磯の意味不明な怒りは収まりそうに無い。
「・・・」
ハルは黙って、困惑した顔をしている。
「大体、この前だって、車のサイドブレーキの所の物入れに、刃を全出ししたカッターナイフを、しかも刃を上に向けて立ててあったじゃないですか!」
私もだんだん腹が立って来たので、小磯に言い返す。
「とにかくお前はうるさいんだよっ!」
小磯は完全に切れている。
「ちょっと、そこまで言うんなら、徹底的に話し合いますか」
「おう、望む所だよ!」
私と小磯は、黙って立ち尽くすハルを置いて、事務所の二階に早足で入ったのだった。
三十分後、私と小磯は笑いながら工場の中に戻った。
「ハル、なんて顔をしてるんだよ、な、木田君!」
「ええ、残りの仕事を片付けましょう!」
さっきまでは相当に険悪だった二人が、今は笑顔で会話をしているのが、ハルには不気味に映るのだろう。ハルはまたしても困惑した表情をしている。
確かに私は笑顔で小磯と話をしていたが、心のどこかに引っ掛かる物を感じていた。
「この先、どうなるかは分からないけど、いつか…」
私の心の中に、不安な気持ちがムクムクと湧き上がって行く。
「最近、木田君からの携帯の着信は、この曲なんだよ」
数日前、小磯が私に教えてくれた着信音は、スターウォーズの『ダースベーダー』のテーマソングだった。少なくとも、小磯が私に対してあまり良い感情を抱いていない事ははっきりとしている。
潜在的な時限爆弾を抱え始めたウォータージェットチームは、そのままの状態で、K県Y市にあるB軍基地に乗り込む事になるのだった。
数日から一週間程度の出張工事を、短期間に何度も続けると、人間は日常生活の些細な事にストレスを感じる様になる。
その日、三人でB軍基地に持ち込む機器のメンテナンスをしていた時だった。
「小磯さん、このカッターナイフの刃を『全出し』にして、工具の中に放り込むのは止めてよ、危ないじゃんね」
私は半分笑いながら、小磯に注意を促した。いつもなら笑い話で済まされる程度の事だった。だが、その日は違っていた。
「ああっ?いちいち細かい事をうるさいんだよ!」
いきなり小磯が私の一言で切れ始めた。
「細かい事って言うけど、こんな事で手でも切ったら、大変でしょう!まだ出張工事も残ってるのに」
「怪我なんかしてないじゃねぇか、どうしていつも細かい事をいちいち言うんだよ!」
小磯の意味不明な怒りは収まりそうに無い。
「・・・」
ハルは黙って、困惑した顔をしている。
「大体、この前だって、車のサイドブレーキの所の物入れに、刃を全出ししたカッターナイフを、しかも刃を上に向けて立ててあったじゃないですか!」
私もだんだん腹が立って来たので、小磯に言い返す。
「とにかくお前はうるさいんだよっ!」
小磯は完全に切れている。
「ちょっと、そこまで言うんなら、徹底的に話し合いますか」
「おう、望む所だよ!」
私と小磯は、黙って立ち尽くすハルを置いて、事務所の二階に早足で入ったのだった。
三十分後、私と小磯は笑いながら工場の中に戻った。
「ハル、なんて顔をしてるんだよ、な、木田君!」
「ええ、残りの仕事を片付けましょう!」
さっきまでは相当に険悪だった二人が、今は笑顔で会話をしているのが、ハルには不気味に映るのだろう。ハルはまたしても困惑した表情をしている。
確かに私は笑顔で小磯と話をしていたが、心のどこかに引っ掛かる物を感じていた。
「この先、どうなるかは分からないけど、いつか…」
私の心の中に、不安な気持ちがムクムクと湧き上がって行く。
「最近、木田君からの携帯の着信は、この曲なんだよ」
数日前、小磯が私に教えてくれた着信音は、スターウォーズの『ダースベーダー』のテーマソングだった。少なくとも、小磯が私に対してあまり良い感情を抱いていない事ははっきりとしている。
潜在的な時限爆弾を抱え始めたウォータージェットチームは、そのままの状態で、K県Y市にあるB軍基地に乗り込む事になるのだった。