goo blog サービス終了のお知らせ 

森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

三本のトゲ

2012-09-25 20:13:57 | 国際政治・外交

田中首相の時代以降,日本と中国,両国が理性的に判断し,尖閣諸島の所有権について論議せずむろん実力行使もせず,ずっと棚上げに合意してきました.それを日本が中国に何の事前相談もなく一方的に自国のものとしました.その契機を作ったのが石原都知事です.

尖閣諸島の真正の所有者は誰か?
(A)日本は1895年,10年かけて慎重にかつ徹底的に所有者を調べました.その結果所有者がいないと結論し,そして尖閣諸島と名付け,日本の所有としました.

(B)一方中国は,明の時代に中国人(多分中国大陸に住む)が発見し,その時に釣魚島と名付けました.当時の書物(1500年代)に出てくるそうです.書物がその具体的な証拠です.

日本は(A)を論拠にして,中国に対してその地が日本の所有であることの説得を試みるでしょう.中国は,日本が10年もかけて慎重かつ徹底的な調査をして所有者がいないと結論づけたのなら,中国の歴史は十分調べたのか?結論づけたときに中国に確認はしたのかと問うでしょう.どれだけ時間をかけて調べても,丁寧に調べても聞きたくないことは聞かない,見たくないものは見ない調査では自己満足になってしまいます.中国が(A)で納得するでしょうか.

どちらが真正の所有者か?日本人が日本のものだと言い,中国人は中国のものだと言います.これをポジション・トークと言い(拙著「プルトニウム消滅!」第4章),どちらの言い分も無価値です.日本人だから日本のものだと言うのか,日本人であることは関係がなく,論拠が正当であるから日本のものなのか,その識別がつかないからです.もし,当事者の国籍は無関係であって,主張の正当性が所有者を決めるというのであれば,当事者である日本人と中国人全員に,十分にそれぞれの論拠を説明し理解したうえで,どちらの論拠が正しいか多数決をとってみればよいでしょう.こんな多数決は,無価値であることが即座に分かります.

日本と中国の論拠を聞いて,両国以外の第三者がどう判断するか,そこに正義があるでしょう.では,米国は,それは間違いなく日本のものだ,真正の所有者は日本であると言っているでしょうか.米国は,現在実効支配しているのは日本であると言っているだけです.現在の単なる一断面の事実をそのまま言っているだけで何の意味もありません.そんなことは分かっており,無価値です.何故日本が真の所有者であると言明しないのでしょうか.米国は友達ではありませんか.安保条約まで結び一心同体ではありませんか.

終戦時,A国のものをA国のものと認めれば,それは“トゲ”ではありません. A国のものをB国のものと認定するから“トゲ”になるのです.宗主国が植民地支配を止めて自国に引き上げる際,それは常套手段であったように言われます.だから宗主国が引き上げた後も,いつまでもその地に紛争が絶えず,宗主国は引き上げた後もずっとその地の国々に武器を売ることができ,莫大な利益を上げ続けたと聞きます.何と言うばからしいことでしょうか.

“トゲ”は三本あると思います.この解決はそれぞれ大変難しいと思います.少なくとも,終戦時に仕掛けられた“トゲ”である可能性を知ったうえで,一方的に自分が正しいとして殺しあいや環境破壊をやって奪い合いをやれば,それは愚かでしょう.