先日、中公新書の「タイの歴史」を読んで、その中で紹介されていた、タイでもっとも有名な日本人=コボリが登場するという小説を読んでみました。
メナムの残照。メナムは「川」という意味で、かつて日本ではチャオプラヤ川のことをメナム川と呼んでいました。タイトルのメナムはメナム川のことです。原題は、คู่กรรม(クーカム=運命の人) です。
時は第二次世界大戦中、タイに進駐した日本軍の青年将校小堀と . . . 本文を読む
タイに興味が向いたのは三島の暁の寺を読んでからですが、さらにその興味を深めるのに役立ったのがこの本でした。
アユタヤ王朝から、トンブリー朝を経て、ラッタナコーシン朝を開き現代にいたる王朝の歴史、立憲革命による民主化、東南アジア諸国を見舞った共産化の波を受け入れなかったこと、第二次世界大戦に敗戦国になりながらも属国にならなかったこと、数多いクーデターのこと、などなど、日本と比較すると興味深い内 . . . 本文を読む
ここ最近、三島の文体に触れている時間が一番落ち着く、というか、心地よいというか。そんなわけで、午後の曳航を買い直して読んでみました、40年ぶりくらいか?動機は、舞台が地元横浜、中区から金沢区になるので、そこらへんの描写も気になりました。
内容紹介。これを読むと、この作品は大人のラブロマンスとそれに反抗する少年の物語、というように思え、私の最初に読んだときの印象(もうだいぶん忘れてしまっていま . . . 本文を読む
幸田文の「包む」へのコメントで、ウチ●さんに教えていただいた一冊。
とても面白く読めました。すべての釣り人にオススメしたい。
幸田露伴プロフィール。
収録作品はこちら。小説あり、紀行文あり、考証文ありと多岐に渡る内容を、木島佐一が注釈をつけています。
「幻談」、「葦聲」は小説。前者はちょっと怖い話、後者はしみじみとした哀しさが滲み出てくる、いずれも短編です。
「雨の釣」、「夜の隅 . . . 本文を読む
豊饒の海の三巻目に当たる作品ですが、諸事情により9月中に読んでおきたかった一冊。
豊饒の海の作品を通して認識者として存在する本多邦繁がこの巻では主役になります。富を手に入れ、老いた本多が、清顕、勲の生まれ変わりと思われるジン・ジャン姫に出会ってからその破局までが本巻のストーリーです。
久しぶりに読み直すと、人間の老いについての描写と、認識の成れの果てである窃視に溺れるさまが、特に印象的です . . . 本文を読む
複合汚染に続いて、読まねばならぬ、と手にした一冊。
1972年の本なので、認知症への認識や、介護に対する考え方など、現在とはかなり違う部分もありますが、老いてゆく父親を持った家族の心理状態の移ろい、老いへの怖れが表現されている一冊です。
しかし、三島を読んでいるときもそうですが、昭和の作家は、将来の社会をなんと正確に予測しているものだとつくづく思います。こんな警鐘が鳴らされているにも関わら . . . 本文を読む
平野啓一郎の三島由紀夫論を読みながらの、三島文学読み返しシリーズ、その2。仮面の告白に次いでは、金閣寺です。
この文庫本は3冊めの購入。炎の表紙がカッコイイ。山種美術館所蔵の速水御舟「炎舞」の部分画だそうです。
1950年の金閣寺放火事件をテーマにした小説で、絶対的な美である金閣を燃やすまでに至った溝口の心理が克明に描かれています。そして絢爛な文体は三島ワールド全開。
仮面の告白論を読ん . . . 本文を読む
2023年上期の芥川賞受賞作。
ハンチバック。
hunchback は「せむし」という意味です。先天性ミオパシーの一種である「ミオチュブラー・ミオパチー」である作者および本作品の主人公、井沢釈華が患わっている疾患から、このタイトルがつけられています。
html文書から始まる書き出しは、私にとっては初めてみるスタイル。これはなんだろう?と思いながら読み進めると、釈華が書いているコタツ記事な . . . 本文を読む
釣りが大好き(?)モーパッサンの短編集。
新潮文庫からの短編集は3巻に渡るのですが、Ⅲは反戦小説と幻想小説を集めたものです。
「二人の友」から「従卒」までは戦争の話です。モーパッサンは20歳の学生時代、普仏戦争に召集された経験を持ちます。前半の短編は、反戦思想が強くでている上に、ストレートな内容で戦争心理の生々しさを感じるものが多いです。
「恐怖」から「狼」までは幻想小説と呼ぶの . . . 本文を読む
このときにちらっと書いたのですが、平野啓一郎の三島由紀夫論を読み始めています。
この本がなかなか難解、というか濃厚というか、アブラマシマシというか。このなかの、仮面の告白論を読み始めましたが、論点が緻密で、原典の内容をちゃんと覚えてないと、なにがなにやらわからなくなります。そんなわけで、仮面の告白を読み直してみました。
こちら内容紹介。最初に読んだのは学生の頃で、今回でたぶん3回め。平 . . . 本文を読む
三島由紀夫はじめ、多くの作家に影響を与えた作品。過去に岩波文庫の実吉捷郎訳を読んだのですが、こちらの平野卿子訳の方が私にとっては遥かに読みやすい翻訳でした。実吉訳を読んだときはハンスとインゲには再会したものだと思ってて、何やら胸につかえるような不自然さを感じていたのですが、平野訳を読んでクリアになりました^^;
内容紹介。「トーニオ・クリーゲル」と「マーリオと魔術師」の2編を収録。
マーリ . . . 本文を読む
日本釣具新報のコラムを書くのに、幸田文の「鱸」を読んでみました。鱸は、こちらのエッセイ集に含まれています。
こちら内容紹介。
露伴のこだわりを観察し、文章にしたためた娘の視点は、私のように露伴を読んだことのない者にも面白く読めました。昭和初期の時代を生きた女性ならではの文章で、普段読んでいる作家とはひとあじ違ったエッセイです。ああ、そういう見方をするのだなあ、と思うこともしばしば。
. . . 本文を読む
三島の未読作品。
1954年に起きた近江絹糸争議を題材にした小説です。金閣寺、青の時代、など、三島は実際の事件を題材にした作品が多いです。
旧態依然の日本式経営からアメリカ流経営へ移る端境期の争議ですが、三島は「書きたかったのは、日本及び日本人というものと、父親の問題なんです」と述べています(朝日新聞S39.11.23)。
三島がこの作品を書いたのが、40歳を目前とした時期。この後に、豊 . . . 本文を読む
平野啓一郎の三島由紀夫論はボリュームが多くてなかなか一気に読み進めることが出来ない一冊なのですが、その中で「金閣寺」と「鏡子の家」が対となっている作品ということを知り(三島自身もそう述べているとのこと)、読み直してみることにしました。
鏡子の家を読んだのはもう40年以上前のことなので、内容はあまり覚えてない^^し、金閣寺と対だと言われても何が何やらだったのですが、平野啓一郎の、金閣寺が「戦後が終 . . . 本文を読む
先日、共産党宣言を読んだ後、こちらの本を読み直してみました。
文化防衛論というタイトルですが、内容は評論、対談、学生へのティーチインからなります。
最初の「反革命宣言」、これがお目当てで読み直しました。共産党宣言は、プロレタリアートの革命を扇動する内容ですが、反革命宣言は共産党宣言を否定しています。共産党宣言の最後には、「社会秩序の転覆のみにより自己の目的が達成される」とありますが、三 . . . 本文を読む