60年近くの間、封印されていた大江健三郎の「政治少年死す」を読み、その時代背景に興味をもって調べていくうちに突き当たったのが、「風流夢譚」をめぐる嶋中事件でした。
右翼テロに言論機関が屈した本事件は、その後の文化、言論に少なからず影響を与えています。本書は、その当事者であった作者が、事件を振り返り、検証、分析を行ったものです。
作者はこの事件を、ジャーナリズムの無残は敗北と捉えています。編 . . . 本文を読む
電車に乗るときに読む本が無かったので、本屋で物色。笑う月は読んで無かったよな、と購入。
が、読み進めていくうちに、これ読んだことあったと思いだした^^;まあ40年以上前で、内容もほとんど覚えてないのですが、たぶん読んだ。
安部公房の夢を題材にした随筆集です。
なかなかスリリングな夢をみていて、それが小説の題材になっているのだということが、なんとなくわかりますし、随所に安部公房らし . . . 本文を読む
図書館で借りてきました。目的は、1961年に文學界に掲載されて以降、右翼団体からの脅迫により単行本化が見送られてきた「政治少年死す(セヴンティーン第二部)」を読むことにほかなりませんが、ほかにも未読の作品が多く収録されていて、じっくりと楽しむことができました。
講談社発行の大江健三郎全小説は15巻からなり、この3巻には1961年~1964年の15編の作品が収められています。
セブンティーン . . . 本文を読む
大江健三郎の初期短篇。
こちら内容紹介。
作者プロフィール。
3篇からなります。「性的人間」は、前半は厭世的な若者の自堕落な様子を描いていて、三島由紀夫の「月」や、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」を思いださせる展開でした。が、後半に痴漢に置換される内容は、なぜここで痴漢を持ってきたのかいまいち理解できませんでした。詩人の青年の現実への絶望、性的な諦念が痴漢になることで昇華され . . . 本文を読む
万延元年のフットボールの次は、中編2編を読んでみました。
三島の死に衝撃を受けたというキャッチに惹かれました。
で、大江健三郎の文体は、万延元年のフットボール、芽むしり仔撃ちなどを読んで、だいぶん慣れたと思っていたのですが、このみずから涙をぬぐいたまう日、はそれでも読みにくかった。
文体だけでなく、構成もややこしい、主人公への客観的な描写、遺言代執行人の言葉、本人の言葉が交じっていて、そ . . . 本文を読む
このところなぜか時間が掛かる本ばかり読んでいるので、息抜きを兼ねてすらすら読める一冊を選んだのは、ばあさんが持っていたこちらの本。
こちら内容紹介。テレビ黎明期を過ごしたわしらの世代には、しっくりくる昭和のお話です。上には恋愛ユーモア小説と書いてあるように、ウィットに富んだ文体で、クスリと(心の中で)にやけながら読める本です。
作者プロフィール。
「やっさもっさ」も同様ですが、獅子文 . . . 本文を読む
還暦過ぎてから読んでいる大江健三郎ですが、もっと若い時に読んでおきたい作家でした。今回は長編です。万延元年のフットボール。大江作品は、題名から内容が想像し難いものが多いのですが、この作品も例に漏れず、赤き血のイレブンのようなストーリーを期待すると裏切られます。というか、フットボールの話はほとんで出てこないし^^;
友人が顔を朱色に塗って裸体の肛門に胡瓜を突っ込んで縊死する、というショッキング . . . 本文を読む
本屋を散歩していて見たことのない三島由紀夫の文庫本を発見したので読んでみました。
三島の日記形式のエッセイを独自にまとめて文庫化した一冊です。
こちら目次。昭和23年から始まりますが、この頃は大蔵省の役人だったころ。最後の昭和42年は、豊饒の海の執筆中(春の雪を書きあげた後)という時代です。「小説家の休暇」、「裸体と衣装」は、すでに文庫化されています。
三島の日常の思索が随所に読み取 . . . 本文を読む
大江健三郎の短編を読んで興味が深まり、長編も読むことに。
社会から疎外された子どもらの絶望、子どもらを支配しようとする農民とそれへの反駁が、緊張感あふれる文章でつづられ、一気に読んでしまいました。極限状態の中で、同志愛、人間愛、異性愛、同性愛と、さまざまな愛が交錯する展開も印象的です。短篇における、アニミズムからもっとも遠い動物小説は、こちらの長編でもその傾向が発揮されています。
ちょっと . . . 本文を読む
こないだ自選短編集を読んだ流れで、初期の作品集を読んでみることに。わたしにはどうも初期作品の方が好みに合っているように思います。
こちら内容紹介。
大江健三郎の初期作品には動物が登場するのが特徴です。それに対し、動物と人間の対比を漠然と考えていただけなのですが、三島由紀夫が、「裸体と衣装」のなかで動物文学とカテゴライズし、この頃の大江作品に触れていました。
動物からも、そして人間からも政 . . . 本文を読む
2024年下期の芥川賞受賞作。
好みの作品(昭和文学)ばかりではなく、時代の先端の作品も読まねばならぬとの思いから、芥川賞受賞作は毎回読むようにしているのですが、本作「東京都同情塔」はここ数年の中で出色の作品だと思います。もちろん、私の好みで言えばですが。
バベルの塔の再現。この書き出しから一気に物語の中に没入できました。言葉が言葉の役割を持たなくなる危険性を、バベルの塔をメタファにし . . . 本文を読む
ずいぶん前に読んだ一冊なのですが、ひょんなことから読み直してみました。釣り好き作家の草分け的存在、井伏鱒二の釣りに関する選集です。
井伏鱒二といえば、確か中学校の国語の教科書に「山椒魚」が載っていて、それで知ったような記憶があります。
こちら内容紹介。
釣り好きな人すべてにお勧めしたい内容です。釣りは釣るのみにあらず、ということが伝わる一冊です。
目次1。
「釣魚記」では、作者が . . . 本文を読む
昨年の11月くらいだったか、外出したときに電車の中で読む本を探して本屋をぶらついていて、ふと目にした一冊。
短篇のイメージとは真逆の、この分厚さに惹かれました。
こちら内容紹介。
大江健三郎の作品はあまり読んでないので読んでみよう、と買ってみたのですが、いやあ、かなり時間かかった、一冊読み終わるまで2か月近くかかりましたよ。
初期作品はそうでもなかったのですが、中期作品からは難解さ . . . 本文を読む
禁色を読み終えたところで、平野啓一郎の三島由紀夫論を読むことを再開しました。III.英霊の聲論を読むにあたって、二・二六事件三部作が収録されているこちらの本を読んでみました。
二・ニ六事件三部作とは、「憂国」「英霊の聲」「十日の菊」で、このうち前者2作は何度も読んだ作品なんですが、十日の菊(戯曲)は初めて読みました。
こちら内容初回。付録についているエッセイ「二・二六事件と私」が三作品を理 . . . 本文を読む
平野啓一郎の三島由紀夫論の中で、金閣寺と対をなす作品として鏡子の家、仮面の告白と対をなす作品としてこちらの禁色、が挙げられていました。禁色の内容はほぼ忘れているので、あらためて読んでみようと古本を購入。昔ながらの表紙で懐かしい。
で、読み始めたのはいいのですが、えらく時間が掛かってしまいました。こんなに難解な一冊だったっけ?2か月くらい掛かりましたよ。老作家が鬱積した青春の怨念を同性愛者の美 . . . 本文を読む