幸田文の「包む」へのコメントで、ウチ●さんに教えていただいた一冊。
とても面白く読めました。すべての釣り人にオススメしたい。
幸田露伴プロフィール。
収録作品はこちら。小説あり、紀行文あり、考証文ありと多岐に渡る内容を、木島佐一が注釈をつけています。
「幻談」、「葦聲」は小説。
前者はちょっと怖い話、後者はしみじみとした哀しさが滲み出てくる、いずれも短編です。
「雨の釣」、「夜の隅田川」、「金の鈴」、「かいづ釣りの記」は紀行文。
このような味のある釣行記を書ける人は、現在は見当たりません。
「鰉」、「水の東京」、「游魚の説」、「釣車考」、「鈎の談」は考証で、露伴の探求心がよく表れています。
ところどころに、明治時代の文化が見られますが、古臭さは感じさせず、時代とは関係なく読めると思います。読後は、古きを訪ねて新しきを知る、気分になりました。
例えば、数珠子釣り。これは鈎を使わずに、魚に餌を咥えさせたまま釣り上げる手法なのですが、私はこれは松島湾のハゼ釣りが発祥だとずっと思っていました。松島湾ではアナゴも数珠子で釣るというのを聞いて、さすが宮城と感心していたのですが、この本では江戸前のウナギの数珠子釣りについても触れられています。東京でやってたんだ、それも明治時代に、と目から鱗が落ちましたよ。
また、游魚の説は、これはもう古今東西、釣りの真理が語られていますね。すべての釣り人だけでなく、すべての船長にもお勧めしたい読みものです。
露伴の作品は青空文庫でも読めますが、本書は現代語訳しているので非常に読みやすいです。
露伴は釣り好きだなとは思ってたのですが、これほどまで釣り好きとは、この本を読むまで知りませんでした。
余談ですが、露伴は将棋、囲碁も好んでいたようです。将棋についてはこちらのエッセイが面白い。→ http://shogikifu.web.fc2.com/essay/essay007.html
露伴と木村義雄十四世名人の棋譜も見られます。→ https://shogidb2.com/player/%E5%B9%B8%E7%94%B0%E9%9C%B2%E4%BC%B4
角落ちで、露伴の力強い指し回しが印象的です。
作者プロファイル。
書誌情報。
p.s. 今日はabemaトーナメント決勝。
Calmさんなら数珠子釣りのところ注目していただけると思ってました!
釣技や道具は世につれ魚につれて変化・進化の結果、何の記録にも残らない例も多かったのではと想像します。露伴が残してくれたものは様々ですが、特に船頭との掛け合い、関係性など現代から見ると非常に興味深いです。
鱸の「くもわた」は味わってみたい一品ですね。
藤井克彦さんの著書「江戸前」の魚はなぜ美味しいのか でも露伴を引き合いに紹介されていました・・・
「くもわた」っていまひとつわからなかったのですが、スズキの白子という理解でよいのでしょうかね。
最初は腸のことかと思ったのですが、調べてみると雲腸=タラの白子、というようだし、蜘蛛の形をしていると言われても、スズキの白子はタラみたいにうにょうにょしてないし、、まあ、腸を好んで食べることはないと思うので白子かなとは思っているのですが。
ところどころで、北大路魯山人を思わせるくだりと感じました。露伴が1867-1947、魯山人が1883-1959なので、時代的には被ってそうですね。明治の食通はすごい(^^)
藤井さんの著書「江戸前の素顔」にも「鱸のくもわたの汁物」が出てきますが、一口飲むと思いっきり笑ってしまうほどの、上品だが言葉では表現できないこくがあるとのことです。
作り方は簡単で、胃、腸、浮袋を塩で磨いて細く切り、軽く炙って熱湯を注ぐだけ。香りに三つ葉を浮かす・・・
良い鱸が釣れたら是非やってみたい!が、実現していません。
言われてみれば魯山人、露伴先生と同時代人ですねぇ。どちらも気難しい印象ありますが、露伴先生の方がお茶目な一面があったのではないかと勝手に想像しております。
スズキを捌いても、内臓なんてどんな風になってるか気にもしてなかったです^^;、今度捌く機会があったら試してみます。