DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

flake21.眠

2018年11月29日 | 星玉帳-Star Flakes-
【眠】


眠れぬ夜に付ける薬のことを伝え聞いた。


遙か星の丘


城跡に茂る草を煮詰め


それを瞼にすり込むとよいという。


眠れぬ夜が千を超す時、


視界に霧がかかってくる。


薬の効く瞼になっているので


その頃星の城跡を探す旅を始めればよい。


だが霧の視界は迷路の思考と似ている。


戻れぬこともある。注意を。





flake21『眠』


flake20.夢猫

2018年11月23日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夢猫】


夢であれと願って以来


あちらこちらの境界など曖昧になりましてと


路地裏で出会った猫が言う。


猫の体は白黒の縞模様で闇の中光の中それぞれ半分だけが見えた。


半分の猫を抱き上げると


夢のようですいいえ夢です願ったかいがありましたと鳴く。


夢を見るのは簡単で路地裏の猫の招きに従えば良い。





flake20『夢猫』






flake19.銀の粒

2018年11月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【銀の粒】


銀色の丸薬を持たせてくれたのは星宿の主だった。


長い旅の途中には気の遠くなるようなことがままあり


そんな時この小さな粒を口に含むとよいと教えてくれた。


銀の粒はいつも胸ポケットの中だ。


時々口に入れる。


苦さが弾ける刹那


決まって脳裏に浮かぶのはあの星宿の灯りひとつの夜なのだった。





flake19『銀の粒』



flake18.歌唄い

2018年11月17日 | 星玉帳-Star Flakes-
【歌唄い】


川のほとり


歌唄いはひとりで暮らす。


聞かせる相手もなく気ままな歌を作っては歌う。


この頃


渡る鳥の姿を目で追っては思う。


この歌はどこかに届くものだろうか。


眠りにつく前に思う。


歌は誰かの子守歌になるものだろうか。


例えば


通りすがる鳥は今夜の歌に耳を傾けてくれるだろうか。







flake18『歌唄い』




flake17.傘

2018年11月09日 | 星玉帳-Star Flakes-
【傘】


辿り着いた星では激しい雨と痛烈な日差しの日が続いていた。


星に棲むアメネズミから傘は必要ですよと忠告され


使い古しでよければとひとつ譲ってもらった。


雨や日差しを完璧に遮ることは無理だが


開くと守られている安心感があった。



星を後にしてからも傘は毎日開く。



ただ安心するために開く。




flake17『傘』




flake16.彼

2018年11月07日 | 星玉帳-Star Flakes-
【彼】


霧の星で出会った彼は毎日のように墓のそばに座り本を開いていた。


が、ある深い霧の晩を境にその姿はぷっつりと消えた。


墓のそばには本が残されていた。


表紙は破れインクはかすれていたが微かに異国の文字が読み取れた。



霧の中

彼の墓と異国の文字と丸まるように本を読む彼の姿を抱き直す。


今も何度も。




flake16『彼』



flake15.羽

2018年11月01日 | 星玉帳-Star Flakes-
【羽】

宿の壁に鳥が描かれていた。


鳥ばかり描いていた絵師がいたことを思い出す。


手を伸ばして壁に触る。触れていると


羽が幾枚かこちら側に飛んでくるように思えた。


聞こえる鳴き声は眠り歌代わりになるだろう。


目を閉じて祈る。


まぶたの裏の空と羽が鳥への敬いと礼になるようにと。





flake15『羽』