DayDreamNote by星玉

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flake26.一欠片

2018年12月26日 | 星玉帳-Star Flakes-
【一欠片】


金星の丘で出会った人は長く船旅をしてきたという。


訪ねるたび青と赤と黒の惑星で手に入れた海鉱石の欠片を見せてくれる。


旅のことを尋ねても多くは語らず欠片を丘の野原に並べ始める。


何を失い何を得たかなど語ればひどく儚いことなのだと言い


別れ際に欠片を一つ持たせてくれる。





flake26『一欠片』




flake25.流夜

2018年12月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【流夜】


この星に辿り着いて以来


星を数え続けた。


気まぐれな夜の光がまるで失った時のように思え


なぞるように毎夜数え続けた。


失うことの意味も知らず夜の星だけ抱くことは


悲しみなのか幸福なのかと


問う代わりに。


過ぎゆく時の瞬きは幻であると分かったのは幾つめの星だろう。


また一つ夜が流れる。




flake25『流夜』




flake24.浮遊

2018年12月15日 | 星玉帳-Star Flakes-
【浮遊】


夜を迎える刻


いつかの鳥の「飛行跡」をたどる。


それは星の寝床に帰るという鳥に教わったものだ。


行ったこともない星の見たこともない寝床が無性に懐かしく


幾度もたどっているうちに道筋を覚えた。


そうしていつか浮かぶことができるのですよ


と鳥はその羽でわたしを包み教えてくれた。





flake24『浮遊』



flake23.夢枕

2018年12月07日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夢枕】


こうして会うのはどのくらいぶりだろう。


好きだった珈琲を淹れる。


香りは気に入るだろうか味良く淹れることができただろうか。


そわそわとカップに熱い液体を注ぐ。


何か話そうとするのだが


嬉しさばかりで言葉がうまく出てこない。



そして不意に香り立つ場面は終わる。


あなたにここで会うたびに。




flake23『夢枕』





flake22.焚火

2018年12月06日 | 星玉帳-Star Flakes-
【焚火】


川のそば、旅支度のものたちが火を囲んでいた。


川を渡る船を待っているのだ。


船の時刻を尋ねたが誰も知らないと言う。


煙が昇るとそれが目印となり船がこちらへ向かうらしい。


一緒に待つことにした。


水の音と炎の音に混じり誰かが呟く。


戻れない旅のことと置いていく人のことを


ぽつりぽつりと。





flake22『焚火』