DayDreamNote by星玉

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flake41.線描

2019年03月28日 | 星玉帳-Star Flakes-
【線描】


夜空には数え切れないほどの線が浮かび


絡まりながら漆黒のカンバスに軌跡を描き続けていた。


過ぎ去った多くの旅人が描いた線だと


の放浪者は教えてくれた。


自ら描き放った線は空のどこか


己にしか分からない場に浮かぶという。


空を見上げ軌跡を描き求めるのは


旅往く者の性であり哀しみなのだと。




flake41『線描』


flake40.花片

2019年03月22日 | 星玉帳-Star Flakes-
【花片】


彼の星から花を一束持ち帰った。


花は日ごとに花片を落とてはしおれてゆく。


花の種と手紙の束を鞄に詰める終わる頃、


星を訪ねた日々の重さを掬い取るように花は枯れた。


この星の長い日々の真暗に落ちる花風は激しく、


吹き止むことはない。


せめて花片を一掬い


狭間にひらひらと愛しい時をここに。





flake40『花片』



flake39.真白

2019年03月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【真白】


遙かな星に雪の降る日小さな白キツネと出会った。


キツネは足を伸ばし私の手を握った。


握り返すと嬉しそうに尻尾を振る。


暫くの間手を握り合い微笑み合い、別れた。


星を訪ねる度キツネを探していたのだが


出会った場所には雪しか降らず。


あの小さな柔らかい白い手はおそらく


別れを


真白に変えるものだったのだ。





flake39『真白』


flake38.塔の青

2019年03月12日 | 星玉帳-Star Flakes-
【塔の青】


金星塔の壁には青色の顔料で描かれた異国文字が並んでいる。


塔の階段守が言うには、


それらはかつて塔を訪れた星を巡る旅人たちの名だという。


春の星で別れたきりの旅人の名がここに在りはしないかと壁文字をたどる。


あれから季節は幾たび過ぎたか。


春の記憶は青く刻まれたままだというのに。



flake38『塔の青』



flake37.微塵

2019年03月01日 | 星玉帳-Star Flakes-
【微塵】


港の待合椅子に座り猫を撫でた。


星の港に棲みつく猫の毛模様は黒地にまだらの銀色が点々と光り


まるで華やかな星図のようだった。


ほら息を吹いてごらんなさいとその猫は哀切に鳴く。


ふうと息を吹きかけるだけで


ここに在るものは粉々になり宙に散り微塵になるのだと


全ては微塵であるのだからと。




flake37『微塵』