DayDreamNote by星玉

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flake87.青星

2019年11月29日 | 星玉帳-Star Flakes-
【青星】


森の奥で拾った星の欠片に青を塗る。


しばらくすると色あせてくる。


青を重ねる。


もともとは青い星なのだ。


あなたの持つ欠片は哀しみなのか安らぎなのかと


森に棲む黒キツネの絵描きが問いかける。


答えられず手のひらに星を乗せる。


悲哀の魂。


魂は青く。


欠片になり。


握りしめてはまた青く。



flake87『青星』




flake86.浪漫

2019年11月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【浪漫】


中身は雫なのだと


火にあたりながら旅人は小瓶を見せてくれた。


濃色の不透明な瓶。


過ぎた浪漫の雫なのです


と彼は瓶の蓋を開け


炎に数滴雫を垂らした。


炎は膨らみ紅から青へ


また紅へと揺らめく。


願わくば


と彼は瓶を砕く。


雫も浪漫も炎もあなたも私もこの惑星が見せる永い幻影になるようにと。




flake86『浪漫』

flake85.珠玉

2019年11月16日 | 星玉帳-Star Flakes-
【珠玉】


星の丘に上る道。


石玉を売る店があった。


店のテーブルには様々な彩りの小玉が転がっていた。


白きつねが店先の椅子に腰をかけ小玉を磨いている。


これらは各々が傷みの玉なのだと教えてくれた。


小玉を幾つかもらい星降る丘を上る。


星明かりの下


玉はその傷に微かな光をたくわえるという。




flake85 『珠玉』


flake84.幻夜

2019年11月05日 | 星玉帳-Star Flakes-
【幻夜】


ある夜。


木星の彼方で旅人と出会った。


木星の炎に言葉をくべるのですよ、


と彼は言葉を記した紙の束に火を付けた。


紙束は灰になり宙に舞いやがて星を取り巻く霧になる。


わたしたちは霧になる命なのだと、


彼はわたしの手を取る。


灰になり霧になるこの一夜を


繰り返し。


繰り返し。


わたしたちは。




flake84 『幻夜』