DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

drop4.青兎

2020年07月27日 | 星玉帳-Deep Drops
【青兎】


ぬかるみで跳ねる兎に尋ねられた


見かけませんでしたか青兎を


星を何周も回り


捜し続けて


随分時が経ってしまったので


もしかしてもう青くはなく


この星にも居ないかもしれませんが


もし見かけたら


あの兎穴に手紙を


と兎は雲の先を指さす


ええと頷くと


兎は青く青くと鳴いて跳ね


穴に消えたのだった





drop4.『青兎』




drop3.無色

2020年07月22日 | 星玉帳-Deep Drops
【無色】


雨降る草原はまるで無色の沼のようだ


朽ちた扉の小屋を見つけ


雨よけにと中に入った


奥に濡れた子ヤギがうずくまっていた


体を拭いてやるとヤギは目を閉じ


震え鳴いた


身を寄せ


私も目を閉じる


私たちは


夜が来ることを知っている


けれど


雨が止む時を知らない


朝が何時来るのかも知らない




drop3.『無色』





drop2.甘雨

2020年07月18日 | 星玉帳-Deep Drops
【甘雨】


遙かな星の離島


港には激しい雨が降っていた


どうぞこれをと港の管理人が傘を手渡してくれた


が、かつての傷が疼き


それを広げ持つことができない


程なく甘雨に


と背中に聞こえた声は誰


振り返っても煙る雨しかなく


慈雨よりも優しく記憶の雨に打たれるなら


このままで


濡れたままで





drop2.『甘雨』



drop1.星灯

2020年07月13日 | 星玉帳-Deep Drops
【星灯】


星灯を頼りに港へ急ぐ。


深夜発つ船は季節の最終便だ。


出航間際


船に乗り込む頃


霧が海を覆い始めた。


汽笛が何度も鳴る。


別れの笛と旅立ちの笛は同じ音色なのですね


と乗り合わせた楽師がぽつりと呟く。


港へ導く淡い星はとうに消えた。


船も私たちも深夜の霧に包まれる。


星灯を思う毎に深く。



drop1.『星灯』