DayDreamNote by星玉

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flake97.夜曲

2020年01月25日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夜曲】


一夜。


星の宿で土星の旅人と過ごした。


惑星の森へ帰る鳥の鳴き声を聞き


静寂の底に墜ちた。


どこからなのか森の奥か宙の彼方か。


淡い旋律が聞こえた。


あれは夜曲と土星の人は呟いた。


一度だけの曲になった。


旅の途中繰り返し記憶の曲は奏でられる。


あの夜の深さに墜ちる時。


遙かなセレナーデは。



flake97『夜曲』





flake96.ロマンス

2020年01月22日 | 星玉帳-Star Flakes-
【ロマンス】


もうずっと唯ひとつのロマンスを描いているのですよ


と星の森で出会った兎は言った。


かつて宙に見かけた星があり、


青く輝く星だというそれは


永く兎が追い求めるものなのだと。


描いたものはとたずねると、


もうどこにもないのですと言う。


それを描いては壊しまたそれを描いては壊すのだと。




flake96.『ロマンス』



flake95.花繋

2020年01月16日 | 星玉帳-Star Flakes-
【花繋】


花片の降る星だった。


拾ってはノートに貼った。


繋ぎ合わせれば文字になり言葉になり詩になった。


誰に見せるでなく


誰にも読めない文字と詩を作った。


一度だけ花片の星で出会った旅人にこれを見せた。


旅の道ですれ違っただけの人に。


別れ際に一枚だけ


彼の花片を貰った。


花片は今も。


降る。



flake95.『花繋』



flake94.古城

2020年01月13日 | 星玉帳-Star Flakes-
【古城】


城跡には朽ちた壁や柱や階段の残骸が散らばっていた。


腰を下ろし目を閉じた。


眠っていたわけではないのに。


時は随分過ぎたようだった。


目を開けると空に星が流れていた。


いつ来たのかウサギが膝の上で丸まっている。


ここに永く棲み星群れを見ては赤目に焼き付け


夢見の城に赴くのが務めという。




flake94.『古城』



flake93.湖水

2020年01月08日 | 星玉帳-Star Flakes-
【湖水】


氷雨の中。


湖の畔に辿り着く。


氷粒は水面を打ち


湖は自らの波紋を静寂の中に広げ続ける。


湖の鳥たちは冷たい水を糧にしているようだ。


氷雨や湖水をついばんでは鳴き飛び。


その姿を湖水に落としては鳴き飛び。


鳴き方に愛しさを覚える頃になると


ここで過ごした時はすっかり消えてしまうのだった。




flake93『湖水』