DayDreamNote by星玉

創作ノート。幻想的な短いお話、詩、散文など載せています。よろしければお立ち寄りください。

#71.結晶

2018年04月26日 | 星玉幻想story帳
【結晶】



季節の終わりに降る結晶を



集めていた。




過ぎた季節は確かにあったことを



結晶たちはおそらく知っている。なので


ずっと握っていた。




今でもあの星に季節の結晶は降っているだろうか、と



尋ねるわたしに




星の渡り鳥は答えず




降る結晶をついばみ




欠片になったそれを空に散らすのだった。






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#70.雲

2018年04月25日 | 星玉幻想story帳
【雲】


雲の上にある道だった。



見えるのは雲しかなかった。



途中



出会った旅人が



淡い色の雲を一欠片くれた。



雲ばかり渡っているという旅人だった。




確か彼は魔術師だったのだ。



雲には術がかけられていて



わたしは旅人との記憶をほとんどなくしてしまい




出来た空洞に別の雲を埋めることは出来なくなった。









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#69.穴

2018年04月24日 | 星玉幻想story帳
【穴】


丘に登る途中



穴に落ちた。



しばらく膝を抱いて頭上の空を眺めていると



キツネが落ちてきた。




キツネは木の実をたくさん持っていて分けてくれた。




甘酸っぱい実を食べると



急に空が眩しくなったので目を閉じた。




眠い。




眠りと穴と恋は似ている。



物語はいつも



落ちて始まり落ちて終わるのだ。




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#68.白雪

2018年04月23日 | 星玉幻想story帳
【白雪】


冬の森へ向かう。



途中過ぎた時を彩った小枝や落葉を集め鞄につめた。




鞄の中がいっぱいになった頃、



息は凍りつき手足は白雪に埋もれた。



氷になった過去は削れて足元に落ち、



過去は今になり未来になり



重なる過去に戻り森へ吹雪く。



すれ違う旅人から、



吹雪の先、地は繰り返し白く染まるのだと聞いた。






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#67.流夢

2018年04月22日 | 星玉幻想story帳
【流夢】


時も人も元の場所に戻すことはできないことをよく知るには



星を何周すればと渡る鳥に尋ねるのだが、



夢を見ていることだけ知らされた。




何度も目覚めたはずなのに




気がつくと抱きしめているものを



夢と呼ぶのだと。




道行き集めた星が



夢の中の夢のように流れる空で、



夢を呼んでいいのだと。





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#66.綿星

2018年04月21日 | 星玉幻想story帳
【綿星】



綿星に咲く真白草は根茎葉花すべて白い。




花が枯れた後にできる実を



綿星の人はすり潰して粉にし綿のような菓子を作る。




それをぎゅっと握ってはいけないと、わかってはいた。



が、体は言うことをきかず



いつも握りしめてしまう。




するとそれはあっけなく壊れる。




激しい苦さと甘さが



そのたび体に入ってくるというのに。








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#65.七色

2018年04月20日 | 星玉幻想story帳
【七色】


虹の星で過ごした季節



何通かの便りを土星の人に送った。



それらは一通も届くことはなく、戻ってきた。




便りの束を握り



虹橋のたもとで幾度も足を止め、途方にくれた。




ただ一滴の




虹の雫を求め



七色をなぞった。




虹は溶け、夕陽に焼け、夜に消え、




土星の人の行方は知れず




なのでわたしは



今でも七色の雫を歌う。





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#64.風

2018年04月19日 | 星玉幻想story帳
【風】



風の星では絶え間なく風が吹く。



部屋の中にも風は入る。



窓壁扉寝台衣服本……




朝昼晩何もかもが風に揺れる。




よくよく耳をすませば



風の中に風守の歌が聞こえてくる。




歌を聞き取ろうと



ペンを取る。




それを書き記すことができたならと思うのだが




文字はたちまち風に飛ばされ何も残らない。






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#63.詩

2018年04月19日 | 星玉幻想story帳
【詩】


通りで青いうさぎに声をかけられた。



「詩集はいかが」



と本を手渡される。



深い海色の糸で閉じられた青い表紙の本。



なつかしい惑星の色。



礼を言って受け取りページをめくった。




かつて青の惑星で



共に過ごした人と口ずさんだ詩がそこにあった。




青い詩を口ずさみ海へ向かう。



うさぎの乗る船を見送ろう。





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#62.毒

2018年04月18日 | 星玉幻想story帳
【毒】


蠍の星人から絡まった糸と熟した酒をもらった。



ほぐしながら飲んでください、と。



糸も酒も艶やかでとても美しかった。



持ち帰り糸をほぐしたが簡単ではない。



幾晩かけてもほどけそうになく



ほどけないことが分かっていても



毎夜、糸をほぐして熟した艶を味わう。



「それらは毒のせいですよ」



星人の言葉をなぞりながら。






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