DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

drop7.微音

2020年08月20日 | 星玉帳-Deep Drops
【微音】


遠い星の風景を思うたび


音が鳴る


微かなその音をたぐり寄せては


彼方の星で過ごした景色を描く


描いては消し描いては消し


そして描ききれず


色はかすみ


溢れた情だけが残る


やがて


目の前に濃い霧がかかる


億万の霧粒は天に散り


色も情も跡形も無く


それは術なのだ


忘れる術なのだと


音は鳴る



drop7.『微音』





drop6.夢見

2020年08月13日 | 星玉帳-Deep Drops
【夢見】


夢見の宿で過ごした日々


横になっては夢を見


歩き腰を下ろしては夢を見た


近くの森に巣があるのか鳥の鳴き声をよく聞いた


「ウソウソウソ」と鳴いているように聞こえた


名前も知らぬ鳥の声を軋む胸に抱き


夜を迎え朝を迎え


あああれは幾重ものウソなのか


問いなどすぐに霞む


夢なので



drop6.『夢見』



drop5.無数

2020年08月04日 | 星玉帳-Deep Drops
【無数】


池のほとりで大きな籠を背負ったキツネに出会った


籠の中には細かく千切られた紙切れが入っている


重そうですねと声をかけると


これらはすべてさよならを書いた手紙ですよ


と言いながら


キツネは籠の中身を池に撒いた


紙吹雪は束の間宙を舞い水に沈んだ


底は深く濃く


別れの無数が眠る




drop5.『無数』