DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

drop43.夢物語

2022年05月27日 | 星玉帳-Deep Drops
【夢物語】


夢物語を千話


紡げば夢の中で生きられる


それは遠い国の語り部が謳っていたことと


教えてくれたのは


若い詩人だったか


読書家の老キツネだったか


何も確かなことのない夢と現の


行ったり来たりは


ひどく空虚なものですよ


と彼らは嘆き


やがて忘れてしまう物語を数えては


幾千も夜を送り



drop43『夢物語』

drop42.瑠璃色

2022年05月25日 | 星玉帳-Deep Drops
【瑠璃色】


青い花の咲く季節


瑠璃色の道で出会った人は


不意に十字路を曲がり


それきりだった


共に最後に見つめた花は


とても青かった


空も星も宇宙も


何もかもが青に染まるくらい


青かった


別の色を探すのはとてもむずかしいことなので


ただ青を抱き慈しむ


この限りある季節に

ただ、青を



drop42『瑠璃色』



drop41.残丘

2022年05月17日 | 星玉帳-Deep Drops
【残丘】


草原の果ての残丘


風に揺れる墓標がある


詩人は過ぎた言葉を背負い


それらを埋めるためにここに辿り着く


風の季節


飛ばされないよう細心の注意を払う


けれども


その殆どはあっけなく風に散り消えてしまう


埋めるものをなくした詩人は


乾いた風に打たれ


更に儚い言葉を背負うのだった



drop41『残丘』




drop40.星歌

2022年05月06日 | 星玉帳-Deep Drops
【星歌】


星降る夜も星灯りのない夜も


星の歌唄いは曲を奏で歌い続けているという


一日の大方が夜の帳に包まれたこの星で


どこに行けばあの歌を聴けるのだろう


どのくらい耳を澄ませば歌にたどり着けるのだろう


深い静寂が必要なのですよと


年老いた詩人は言う


それは底のない慰めの歌なのですからと




drop40『星歌』