DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

drop19.奏

2021年01月26日 | 星玉帳-Deep Drops
【奏】


季節は風になり風は歌になった


過ぎたものたちは


強く弱く重く優しく奏でられ


星も見えない闇に差す灯りは


その音階ではなかったか


真実に近づく音は季節の断崖で気づくものなのだ


風に乗った奏は遠い星の季節のような儚さで


ただ記憶の響きだけがこだまするように





drop19『奏』

drop18.糸

2021年01月25日 | 星玉帳-Deep Drops
【糸】


幾時も幾時も指に糸を絡ませて続けた


指は糸に包まれ


筆を握ることは出来なくなった


握ることなど簡単なことではなかったか


絡んだ糸は空にかざせばよいと


ある時夜鳴き鳥に教わった


糸超しの空は変化を繰り返し


やがて闇が押し寄せるほどに夜は深く堕ち


ああそれを握ることなど


他愛なく なく





drop18『糸』

美しい物語一幕

2021年01月25日 | ソネット帳
どうか
あなたの描いた
夕暮れの景が
美しい星の彼岸となりますように

どうか
吹き荒ぶ風たちが
優しげな手で奏でられる
淡い星の歌となりますように

歌は透明な川面に流れて
言葉よ旋律よ共に
流れて流れて

そうして全てが終わり過ぎたとしても
あなたとの物語は美しかったのだと
美しかったのだと



『美しい物語』より


drop17.少女

2021年01月12日 | 星玉帳-Deep Drops
【少女】


日に幾度か虹の出る星


虹の麓に少女は独り住み


一日虹の絵を描いて過ごしていた


時間をかけて描いてはすべて消し


また描いては消し


あの少女は虹を渡り


ひとつの淡い魂になったという


星のどこにももう彼女は居ないのだ


それは虹だからと


少女の独り言を思い出しては


虹を探すのだけれど




drop17『少女』