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高村薫『新リア王』と日経

2004-11-02 06:38:42 | ニュース
先日のブログの中でタイトルを「トラブル2件 高村薫と島田紳助」としながらほとんど紳助氏のことにしか触れていなかったので,
「この件については後日また」とした高村薫氏について一応触れておきたいと思います。

高村薫氏の訴え(毎日新聞26日未明ネット版より)
日本経済新聞に連載中の新聞小説「新リア王」の掲載終了をめぐり、
作家の高村薫氏が25日午前、同社を相手に「著作権侵害にあたる」として
約束の履行を求める仮処分申請を大阪地裁に申し立てた。
結局、同社が高村氏の主張をほぼ受け入れ、申し立ては同日午後に取り下げられ、
31日付の「最終回」でお断りとおわびを掲載することになった。

 高村氏は03年3月から同紙朝刊で連載を開始。トラブルの発端は、
今年5月に同社から連載終了を要請されたことから始まった。
 申立書によると、高村氏は担当編集者に
「8月末で終え、作品の続きを月刊誌に掲載する」と伝えた。
しかしその後、同社は次の連載小説の都合がつくまで連載を続けるように依頼してきたため、
高村氏は10月29日を最終回とし、
末尾に「未完」「作品は加筆の上、05年に新潮社から刊行予定」のお断りを載せることを確認し、
執筆を続けた。
 しかし、同社が承諾なしに最終回を31日とし、
10月19日以降29日までの原稿11回分を13回に分割し、
お断りなども掲載されそうにないことが判明。
高村氏は25日午前、同地裁に約束の履行を求める仮処分を申し立てた。


これを受けて,日経は26日朝刊に「お断り」と題して「おわび」を掲載。
日経側の「『新リア王』連載について 本社お断り」の内容*******
高村氏は申立書で(1)同小説を10月29日掲載分として送付したにもかかわらず
日経は掲載を引き延ばすため,同月19日付以降,最終回までの11回分を
13回分に調整した
(2)最終部分に「未完」と記すよう求めていたのに勝手にこれを削除した
ゲラを作成した--などと指摘,
各回を通常の分量に戻し,最終回に「未完」をつけて出版社からの刊行予定を
周知することを求めた。

日経は高村氏との意思疎通や社内の連絡不行き届きがあったのは遺憾として
「未完」+刊行予定明記+「おわび」掲載 で高村氏と合意。

日経は,
高村氏が申立書で「連載終了時期は本来05年2月になるのに日経側が途中打ち切りを
申し入れた」としている点については事実関係が異なる-
終了時期に明確な合意はなかったと受け止めていた。
また,掲載分量の調整については
「まとめて送られてくる長文の原稿を適宜1回分に分けるのは
 筆者の了解を得られたもの」と誤解していた
*************************************

まさに,日経の「高村氏との意思疎通や社内の連絡不行き届き」が
すべてという感じですが,
日経を読んでいる人にとっては,最終面の連載(小説や「私の履歴書」)は,
前の連載が月末に終わって,1日から新連載が始まるという区切りが
当たり前
になっているので,10月29日までと決めて原稿を送りつけるというのは
プロの作家としてあまりにも勝手だと思うんですよね。
次の作家の連載を10月30日の土曜日から始めるなんて考えられませんし,
じゃあ,土日の2日分,空いたスペースに別の記事(コラムなど)を延長して埋める
なんてのも考えられない。

NHK朝の連ドラや民放の昼ドラは毎回15,30分の間に
何らかのクライマックスとオチ(または引き)を入れないといけない制約があるので
そりゃ大変でしょうが,今回の件では,会話のシーンで1セリフが前の日の最後に入るか
次の日の冒頭に入るかというくらいで別に内容的に大きな問題があったとは思えない。
むしろ,スペース調整のために行間が広がり,見た目空いた感じになってしまったのが
問題だったかなと。
これについては挿し絵画家の写真パクリ事件で,2月26日以降次の画家に替わるまで
行間バカ空きのスッカスカでしばらく掲載が続いた時期があるんで,
その頃よりはましだろうと思うんですが,高村氏としてはトラウマが蘇ったんでしょうか。

まぁ,連載日数引き延ばしにしても,「未完」&刊行予告(宣伝)カットにしても,
日経の(担当編集者など一部の独断かもしれませんが)確信犯であることは間違いなく
高村氏に対して相当むかついてたんでしょう。
5月に日経から連載打ち切りを打診したというのが事実なら,
次の作家が見つからないという理由で8月末でやめるという高村氏に延長を要請するのは
ちょっとひどいと思うので,打ち切りというよりはちょっともめたはずみで
編集者が何か言っちゃったといったところじゃないんでしょうか。

はたしてこの担当者,日経で
「会社の顔に泥を塗りやがって」と思われているのか(場合によってはクビ)
それとも「大変だったな」と言われるほど高村氏はすごい人だったのか。
出版社に勤めている私としては,気になるところです。
立場を考えれば,トラブルの責任の9割8分くらいは編集側-ってところですが。
イラストレーターのパクリ事件は個人の責任(犯行)ですけれど,
それに象徴されるような,いやな因縁のまとわりついた連載でした。




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5 コメント

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高村信者として (高崎美智)
2004-11-02 19:09:42
先日は私のブログにコメントありがとうございました☆



高村信者の端くれにも関わらず、

彼女の連載に関しては無知だったのですが、

こんな大変なことになっていたとは…。

大変興味深く読ませて頂きました。

ありがとうございました☆
返信する
Unknown (Unknown)
2004-11-04 22:45:01
っていうか、政治家から圧力がかかって打ち切りになったんじゃないの?
返信する
長いコメントでごめんなさい (Nolly Chang)
2004-11-04 23:16:21
こんにちわ。トラックバックありがとうございました!



新・リア王が未完で、注釈付で終わってたのはこのような事情があったのですね。知りませんでした。



高村薫は好きなんですが、「新リア王」の内容も、29日で終了させようとしちゃったことも、どーも新聞に連載するには向いてない作品&作家だったのかなと残念に思います。

翌日(11月1日)の日経新聞に、「社員の聞く力が低下して、コミュニケーション不足からトラブルが多くなっている」という記事がでていたけど、あれは内部のネタだったのかも・・・。
返信する
高村氏と日経について (辛口大魔人)
2009-12-23 05:13:07
上記については認識不足、的外れなコメントですよ

作家は一字一句、改行にまでこだわるもの。この件の背景には明らかに政治的判断が介在しているのです。当時の与党である自民党が……

表面の現象に目を奪われるのではなく物事を大局から眺め本質を見抜くよう鋭意精進してくださいね
返信する
辛口大魔人さん (d_d-)
2009-12-23 06:16:20
非常に興味深いお話です。
5年も前の古い記事にわざわざコメントいただいたということはよほど記憶に新しいインパクトのある現象だったのでしょう。
2件目のコメントとも符合する内容。

ですが…大局からだの本質だのといった
ご立派なものを見抜くにはそれなりの材料が
必要なわけで,今回の件でいえば一般の人間からすれば
編集・作家双方それぞれの不可解な行動に
どのような背景・理由があるのかを推測するしかない。

それを,認識不足だの的外れだと仰るのであれば,
十分な認識をお持ちの方は,その論拠・材料を
示していただくことで正しい認識を促すのがよろしい行いかと。
そうでなければ説得力のない,
自己顕示にも及ばないただの落書きでなはいかと…。

> 表面の現象に目を奪われるのではなく物事を大局から眺め本質を見抜くよう鋭意精進してくださいね

この一文,書きたい気持ちはわかりますけれど
書いた人間がその域に達していることが伝わらないと
噴飯ものでしかないので,ご注意を。

本当,事情を知らない人がまるっきり勘違いしているような秘密があるのなら教えてくださいね。
返信する

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