自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

番組には出てこないこと。

2020年05月18日 04時49分33秒 | チャリダー★



大分のオンエアを終えて
五郎さんとおしゃべりをした


ロケの間 五郎さんはずっと
これが番組になるのかどうか 心配していたので
ちゃんとオンエアされて安心したようだった


いろんな話をして
最後に五郎さんはこう言った
「僕から自転車を取ったら ただのクズです」
私もこう答えた
「僕からカメラを取ったら ただのクズです」
五郎さんから こんな返事が返ってきた
「クズ同士 楽しみましょう!」
おかしくて 腹を抱えて笑ってしまった
なんて明るいんだ この人は(笑)




五郎さんに旅に出ようと誘ったあと
五郎さんから「箸を買ってきた」という連絡があった
箸の持ち方が上手でないことを気にしていて
それを旅のロケまでに直したいのだという


田染荘で蕎麦屋さんに立ち寄った時
私は唸る思いだった
五郎さんの箸の持ち方が 見事に直っていた
さらに 蕎麦をすする食べ方も以前と違っていた
旅番組を見て どうやって食べたら美味しく見えるかを
研究してきたのだという


舌を巻く思いだった


40年間続けてきた箸の持ち方を変えることは
とても大変なことだ
慣れ親しんだ蕎麦の食べ方を変えることも
とても大変なことだ


今までは いろんなことをおざなりにして来たのかもしれないけれど
自分の人生を より良い方向へと変化させたいと
そのチャンスを必死に掴もうとしているのかもしれない
五郎さんは自転車と箸で 私はカメラで
そんな二人が旅したのだから 悪いものになるはずがない
五郎さんと話して そう思った






田染荘(たしぶのしょう)のお蕎麦屋さん
六郷(りくごう)さんといいます
行って初めて知ったのですが これまでは取材を全て断って来たのだそうです


五郎さんが「なぜ今回は取材させてくれたのですか?」と聞いたら
「林さんと話していたら 取材を受けてもいいと思った」
と答えてくれた


一体なぜそう思ってくれたのか
特別な交渉などしていないのに
ずっと分からないまま 心の中に澱(おり)のように疑問が残っていた


ひとつだけ思い当たるとすれば
カメラは暴力だということを 知っているということ
撮影させてくれることが 当たり前ではない
店の宣伝になることは 喜ばしいことではない
静かな生活を破壊することだってある
そんな思いを前提に話をしたから
お邪魔させてくれたのかもしれない



素晴らしい土地で
最高の料理を食べられるお店です(要予約)
今は店内の飲食を自粛されていますが
お願いすれば美味しい蕎麦などを送ってもらえるようです





ニューラーメンの はとやさん


真っ暗な山道を下りて来て 寒さに震える我々の目には
この「ラーメン」の文字は光り輝いて見えた(笑)


たいへんな苦労をされて来たはずなのに
妙に明るいお母さんが あまりに素敵で
この店になんとかお金を落としていきたいと思って
撮影後 全員(といっても3人だけど)で山盛りの注文をした


五郎さんだけでなく 我々も腹ペコだったので
どれも美味しく感じたが
冷静に考えると 多分味は普通だったと思う(笑)


地方にある 取り立てて特別な存在でもないお店の
ありふれた悲哀を 明るく切ないシーンとして描けたことは
個人的に今回の最大の収穫でした