小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

糖は毒

2017年11月23日 06時51分28秒 | 医療問題
 糖は麻薬並みの依存性がある毒です。
 肥満症は糖依存症・炭水化物依存症。
 当然、糖を処理しきれなくなる糖尿病のリスクになります。

■ 加糖飲料で2型糖尿病や高血圧リスクが上昇
HealthDay News:2017/11/23:ケアネット
 近年では生活習慣病対策の一環として、糖類を多く含んだ加糖飲料に課税する国も増えている。「Journal of the Endocrine Society」11月2日オンライン版に掲載されたレビュー論文によると、加糖飲料はやはり肥満の原因となるだけでなく、2型糖尿病や高血圧のリスクを高める可能性のあることが明らかにされた。
 研究を率いたステレンボッシュ大学(南アフリカ)のFaadiel Essop氏は「複数の研究で、加糖飲料を週に2杯飲むだけでもメタボリック症候群や糖尿病、心臓病、脳卒中のリスクを上昇させることが示されているほか、ある研究では加糖飲料を1日1杯飲むと高血圧リスクが高まることが示されていた」と述べている。同氏は、特に加糖飲料により10代の若者の血圧が上昇することに懸念を示している。
 この研究では、加糖飲料の摂取頻度がメタボリック症候群や糖尿病前症、2型糖尿病、高血圧の発症リスクに及ぼす影響を調べた、過去10年間に発表された36件の研究をレビューした。
 その結果、解析対象とされた研究の結果にはばらつきがみられたものの、ほとんどの研究で加糖飲料の定期的な摂取とメタボリック症候群や2型糖尿病リスクとの関連が示されていた。また、加糖飲料の摂取頻度は高血圧リスクとも関連していた。なお、こうした研究の多くは、加糖飲料を週に5杯以上飲む人を対象としていた。
 Essop氏は、メタボリック症候群のリスクが上昇する原因が加糖飲料にあるのかどうかは明らかではないとしつつも、「加糖飲料の摂り過ぎはウエスト周囲長の増大や肥満のほか、インスリン抵抗性や慢性炎症、脂質異常症、高血圧とも関連していた」と述べている。また、同氏によると、摂取カロリーが同じでも加糖飲料では固形物を食べた時のような満腹感が得られにくいことも、食べ過ぎや飲み過ぎにつながる可能性があるという。
 米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長を務めるJoel Zonszein氏は、果物を例に挙げて、「リンゴには糖分も多く含まれるが、食物繊維が多いため満腹感が得られやすい。一方で、1杯のリンゴジュースにはリンゴ3~4個分の糖分が含まれており摂取すると血糖値が跳ね上がるが、食物繊維は含まれていないため満腹感は得られない」と説明している。
 米国糖尿病学会(ADA)のWilliam Cefalu氏は専門家の立場から、「今回のレビューで対象とされた研究は観察研究であるため因果関係が証明されたわけではないが、糖尿病の有無にかかわらず、1日の終わりに飲む水分は糖分が含まれない水にするのが良いだろう」とアドバイスしている。

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第54回日本小児アレルギー学会に参加してきました。

2017年11月20日 08時12分41秒 | 食物アレルギー
 2017.11.18-19の先週末、「第54回日本小児アレルギー学会」(宇都宮市)に参加し、知識のアップデートをしてきました。

 懇親会にも久しぶりに出席し、大学アレルギーグループの先輩・後輩とも旧交を温めてきました。
 なんと小学校の頃覚えた「日光和楽踊り」を踊りました。

 この学会、昔は「小児喘息を以下にコントロールするか」という内容の発表が多かったのですが、近年は演題数で食物アレルギーに追い抜かれたそうです。
 
 先日、食物アレルギーの負荷試験で重篤な副作用例が報道され、それに関連した報告もありました。
 開始時刻に会場にたどり着いたときにはもう人で溢れていて会場にはなかなか入れませんでした。

 食物アレルギーの診断に関して、アレルゲン・コンポーネントを利用して診断精度を上げるテクニックや、小児〜成人医療への移行期である思春期喘息の問題点、アトピー性皮膚炎の最新治療、食物アレルギーの経口免疫療法、アレルギーエデュケーターの現況など、聴講してきました。

 群馬県の小児アレルギーエデュケーター(PAE)はまだ当院スタッフの1名のみと寂しい状況ですが、今年もう1人増えそうだという情報も耳にしました(^^)。

**************<メモ>***************

■ アレルゲン・コンポーネント
・ももアレルギーでは、OAS(=PFAS)と即時型反応の2パターンが存在する。OASでは口腔内症状、即時型反応では全身症状が出現するが、この場合口腔内症状は伴わない。2パターンはその患者が反応するアレルゲン・コンポーネントで鑑別できる可能性あり(まだコマーシャルベースではできない)。

■ アレルギー疾患の移行期治療
・思春期喘息では本人の自覚症状が乏しく、コントロール不良かどうかは肺機能(フロー・ボリューム)、FeNOでしか判定できないことが大きな問題である。これらの患者をどう拾って成人喘息につなげないかが課題。

■ 食物アレルギーの経口免疫療法
・数年前まではこのセクションの会場は立ち見が出るほど混雑していたけど、「研究段階であり一般診療レベルでは行うべきではない」という学会声明が出されてからしぼんできて、聴講者はまばら。
・アナフィラキシーの危険のある急速経口免疫療法は影を潜め、症状を出さない程度で進める緩徐法関係の演題が増えてきた印象・・・これなら開業医でもできそうと手応えを感じる。

■ わが国におけるアナフィラキシー症例の実態(JSAレジストリー)
・食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIAn)の原因食物は、長らく(1位)小麦、(2位)甲殻類とされてきたが、近年は甲殻類に変わって果物が2位になっている。これは以前からの欧米の統計と一致する。
・アレルギー専門医教育施設を対象としたアンケートでも、アナフィラキシーに対してアドレナリン使用率が30%台にとどまり、第二選択薬のステロイド、抗ヒスタミン薬の70%より少ないことを演者の海老澤先生は嘆いていた。

■ これからのPAEの新たな展開
・アレルギーキャンプを中心にPAEの活動報告。PAEには看護師だけでなく、薬剤師、管理栄養士もいるので、みんなが集まると大きなことができそう。
・獨協医科大学のアレルギーキャンプでは親が同伴しないことを知る。看護学生がマンツーマンで世話を見るようだ。
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イエメンではコレラ、マダガスカルではペストが流行

2017年11月15日 12時01分43秒 | 感染症
 世界を見渡す後、日本では馴染みのない感染症が猛威を振るっている国・地域があります。
 今年話題になっているのは、アラビア半島のイエメンにおけるコレラ流行と、アフリカ東部に浮かぶマダガスカル島におけるペスト流行。
 とくにペストは中世ヨーロッパで流行し多数の死者が出たため「黒死病」として恐れられた感染症です。私が医師になってから30年弱、話題になった記憶がありません。このように一度忘れられた感染症が再度蘇って流行する現象を「再興感染症」と呼びます。

■ コレラ感染、100万人到達の恐れ 内戦下のイエメン
2017.09.30:CNN
(CNN) 国際赤十字は30日までに、内戦下にある中東イエメンでコレラの感染が今年末までに100万人に達する恐れがあると警告した。
 赤十字国際委員会のイエメン事務所代表は29日、過去に例がないコレラまん延との危機感を表明。感染が疑われる患者は現在約75万人。今年7月5日の時点では約27万6000人だった。この増加基調が続けば年末までには最大100万人に達するとした。
 世界保健機関(WHO)は今年7月、イエメンのコレラ感染について世界で最悪の流行と指摘。2015年3月に始まった内戦で医療保健体制がほころび、社会基盤の崩壊や飢餓の状態に近い食糧不足などがコレラ拡大の元凶となっている。
 WHOによると、今年9月13日段階で報告などされたコレラ感染の犠牲者はイエメン全土で2074人。以前の報告書では、住民5000人が毎日、感染しているとも推定していた。
 赤十字国際委員会のイエメン担当責任者は、同国の医療保健体制は限界水域にあると説明。今後、新たな感染拡大が発生した場合の対応策に懸念が生じているとした。


<参考>
■ 「コレラとは」(国立感染症研究所)


■ マダガスカルのペスト流行、死者124人に 1192人感染
2017.10.27:CNN
(CNN) アフリカのマダガスカルで猛威を振るっているペストの流行について、国連人道問題調整事務所と地元のリスク管理対策部門は27日までに、今年8月以降1192人が感染し、124人が死亡したと明らかにした。
 感染者の67%は、人から人へと感染する肺ペストに罹患(りかん)。ペストはペスト菌によって引き起こされ、ネズミなどが運ぶノミがかむことで感染が拡大する。症状は、痛みやリンパ節の腫れ、発熱、寒気、咳(せき)など。
 マダガスカル国内の114地区のうち、肺ペストの感染が報告されたのは40地区。人口の多い大都市を含む少なくとも10都市でも感染が伝えられている。他人との接触で一段の感染拡大が起こる恐れがあるものの、国連によれば所在のつかめている感染者は全体の3割に満たない。
 一方で23日の国連の報告では、8月1日以来、780人の感染者が治癒したとしている。また感染が伝えられた地区のうち6地区については、過去15日間で新たな感染例の報告はないという。
 世界保健機関(WHO)は直近の報告の中で、国内での感染がさらに拡大するリスクは依然として極めて高いと指摘。ただ近隣の島やアフリカ南部・東部といった周辺地域へ感染が広がるリスクはそれほどでもないとの見方を示した。
 WHOのマダガスカルの代表者は「国境を越えて感染するリスクは低い。一般的に感染者は体調不良が著しく、旅行に出られる状態ではなくなるからだ」と説明した。現在WHOはマダガスカルの空港当局と連携し、空港や港湾に医療スタッフを配備するなどして国外への感染者の流出阻止に取り組んでいるという。


<参考>
■ 「ペストとは」(国立感染症研究所)


■ ペストに気を付けろッ! その1
(2017/11/14:ケアネット)
忽那 賢志 ( くつな さとし ) 、国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター
人類とペストの歴史
 人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 
 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。
 フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。
 腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。
 そんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。
 と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!
 ペストは今も局所的に流行しているのですッ!
現在進行形のペストの流行
図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。



 そして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)





 通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。


<参考文献>
1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.
2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.


<追記>
2017.11.29
マダガスカルのペストに関する続報です。
北海道大学のチームが調査に入っているのですね。

■ 海外への拡大心配なし アフリカのペストで北大
共同通信社2017年11月28日
 アフリカ南東部の島国マダガスカルで起こっている今世紀最大規模とみられる肺ペストの流行について、国外に広がる可能性は極めて低いとする分析結果を、北海道大の西浦博(にしうら・ひろし)教授らの研究チームが28日までにまとめ、欧州医学誌電子版に発表した。
 ペストはエボラ出血熱と同じ感染症法の1類に分類される重大な感染症で、中でもせきなどによって人から人に感染する肺ペストは最も危険な種類とされる。
チームによると、ペスト全体で11月中旬までに2千人を超える患者が報告された。
 チームは、フランスのパスツール研究所などがまとめた8~10月の感染者数や、マダガスカルの出入国者数のデータを使って、マダガスカル国外にペストが広がる可能性を分析した。
 その結果、マダガスカルとの関係が深いフランスを含め、入国可能性がある肺ペスト患者の人数はどの国でも0・1人未満で、国外流行のリスクは非常に低いことが分かった。
 また、患者1人から他の人に感染する人数も従来と大きな違いはなかったという。
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にきび(尋常性痤瘡)の治療のポイント2017

2017年11月15日 08時17分02秒 | 医療問題
 ガイドライン改定のタイミングでその解説を見つけました。
 昔はイオウカンフルローションを基本に、感染症を合併した場合の抗菌薬追加くらいしか治療法がありませんでしたが、近年はにきびの発生段階をコントロールする薬物(アダパレン、過酸化ベンゾイル)が登場し、めまぐるしく展開・発展してガイドラインも書き換えられています。

■ 尋常性痤瘡の治療のポイントを解説〜基本は併用療法、抗菌薬単独使用は回避
2017年10月27日:メディカル・トリビューン
 尋常性痤瘡(アクネ、にきび)はわが国では90%以上の人が経験する慢性炎症性疾患である。従来、尋常性痤瘡の治療は炎症病変に対する抗菌薬しかなかったが、近年、炎症が生じる前段階で治療する薬剤が登場し、治療法が大きく変化した。日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドライン2016/2017改訂委員会委員長で虎の門病院(東京都)皮膚科部長の林伸和氏に治療のポイントを聞いた。

面皰、微小面皰に対する治療が可能に
 尋常性痤瘡は、顔面や胸背部の毛包で過剰分泌された皮脂が毛包を閉塞、貯留し、その貯留した皮脂の中でPro­pioni­bacte­rium acnes(P. acnes、痤瘡桿菌、アクネ菌)が増殖して炎症を惹起することで発症する。毛包に皮脂が貯留して詰まり、白く盛り上がった状態が面皰(白にきび)、毛包に貯留した皮脂内でP. acnesが増殖して炎症を来した状態が炎症性皮疹(赤にきび)である。
 林氏は「従来、尋常性痤瘡の治療では炎症性皮疹に対して抗菌薬が使用されていたが、2008年に面皰に対する治療薬が登場し、治療法が大きく変化した」と述べる。
 日本皮膚科学会が尋常性痤瘡治療ガイドラインを策定した2008年以前は、尋常性痤瘡の治療薬は主に炎症性皮疹を対象として、基本的に抗炎症/抗菌作用を有する内服、外用の抗菌薬が用いられていた。同氏は「抗菌薬には尋常性痤瘡に対する有効性を示すエビデンスがあり、臨床試験も行われていた。抗菌薬以外にもイオウカンフルローションや漢方薬などが用いられていたが、それらは有効性を示すエビデンスが不十分なまま使用されていた」と説明する。
 そうした中、臨床試験の結果を受けて、2008年に尋常性痤瘡に対する新たな治療薬としてアダパレンが承認された。同薬は細胞分化の過程に作用し、毛包漏斗部の角化異常を是正して、毛包に貯留した皮脂を毛包外に排出させる作用を有する
「アダパレンの導入により、尋常性痤瘡の早期段階である面皰に対する治療が可能になった」と同氏。さらに面皰の周囲には肉眼では確認できないが、既に皮脂が貯留し始めている病理学的変化である「微小面皰」が存在することが明らかになり、アダパレンは面皰だけでなく、微小面皰にも効果があることが分かった。
 そこで2008年に策定された同ガイドラインでは、面皰と微小面皰の治療にはアダパレンをベースとして積極的に用い、炎症性皮疹には抗菌薬を使用することが推奨された。
「アダパレンの登場により、目に見える前の段階、早期の尋常性痤瘡である白にきびも予防できることになった。しかし、赤にきびが少しでもできたら抗菌薬を用いる患者や、赤にきびができるのを嫌って抗菌薬を用いる患者も多かったため、抗菌薬耐性のP. acnesが増加するという問題が発生した」と言う。

抗菌作用を有する薬剤も登場
 抗菌薬耐性P. acnesの対策として、日本皮膚科学会は海外では数十年前から尋常性痤瘡の治療に用いられていた過酸化ベンゾイル(BPO)の早期承認を求める要望書を厚生労働省に提出した。BPOは消毒作用と抗菌作用を併せ持つ薬剤であり、いまだ耐性菌の出現が報告されていないという利点がある。
 BPOは日本で行われた臨床試験の成績も良好であったことから、2015年に承認された。その後、同薬は抗菌作用だけでなく、物理的に細胞を剝離し(ピーリング)、毛包に貯留した皮脂を毛包外に排出させる効果も存在することが徐々に明らかになり、臨床試験では面皰に対する効果を示すデータも報告されている。
 そこで2016年のガイドライン改訂では、尋常性痤瘡にベースで使える成分としてアダパレンとBPOの2種類の選択肢を示し、さらに炎症性皮疹には抗菌薬を含めた抗菌作用のある薬剤を使用することが基本となった。
 抗菌薬は重症度で使い分け、重症は内服、軽症は外用を用い、中等症は状況によって判断する。また、内服抗菌薬と外用抗菌薬の併用は相加相乗効果を示すエビデンスがないことから取り上げていない。抗菌薬単独では面皰に対する治療ができないことから、単独の使用はできるだけ避けて、アダパレンまたはBPOと併用する。

 2016年版ガイドライン刊行までに承認された薬剤には、BPOとクリンダマイシン/BPO配合剤(外用薬)がある。同配合剤は炎症がある病変にはより効果を発揮するものの、抗菌薬を含有しているため、急性炎症期の使用に限り、炎症が治まった維持期には抗菌薬を含有しない薬剤に変更することを推奨している。

維持療法に抗菌薬は使用しない
 耐性菌の出現を抑制するには、
①BPOを適切に使用する
②抗菌薬を長期に使用しない
③維持療法として抗菌薬を使用しない
--−ことが挙げられる。
 そこで、2016年版ガイドラインでは治療のステージを急性炎症期(約3カ月間)と維持期に分け、前者では抗菌薬を積極的に使用し、後者では抗菌薬の使用を中止することを推奨している。維持期には抗菌薬を使用しないため、結果的にアダパレンとBPOを使用することになる。
 2016年版ガイドライン刊行後にアダパレン/BPO配合剤が承認された。面皰に対する効果があるアダパレンと、抗菌作用を有するBPOが配合されていることから、炎症性皮疹と面皰の両者への効果が期待できる。2017年版ガイドラインでは同配合剤の位置付けが示され、特に維持期での選択肢が増えた。
 これまで報告された臨床研究のデータから、治療薬の使用法として、単剤ではなく異なる作用を持つ2剤を併用することで、より効果が高まると考えられる。また、配合剤は患者のアドヒアランスと費用負担の軽減の面からも推奨される。単剤は併用よりも効果が落ちること、特に抗菌薬を単剤で用いると耐性菌が出現する確率が高くなることが報告されているため、抗菌薬の単独使用は極力避けたい。また、抗菌薬単独で治療を開始した場合、面皰に対する治療が行われていなかったため、治療を中止すると再発する確率が高く、維持療法への移行が困難になる。したがって、「痤瘡治療薬は極力配合剤あるいは異なる作用を持つ2剤以上を併用し、単独で使用する場合も抗菌薬の単独使用は避ける」ことが重要である。
 林氏は「ガイドラインはエビデンスに基づいて最善の治療を行うことを目的に作成されたため、基本的にはガイドラインに沿った治療を行うことが望ましい」と指摘した上で、診療における痤瘡治療薬の選択を次のように行っていると説明した(表)。



 面皰が主体の症例では、アダパレンまたはBPO単独で治療し、維持期も同じ薬剤を継続、効果が不十分な場合にはアダパレン/BPO配合剤を使用する。
 軽症〜中等症例に対する急性炎症期→維持期→効果不十分の場合の治療では、
①クリンダマイシン/BPO配合剤→BPO→アダパレン/BPO配合剤
②外用抗菌薬+アダパレン→アダパレン→アダパレン/BPO配合剤
③アダパレン/BPO配合剤→アダパレン/BPO配合剤
--−のいずれかを使用する。
 重症〜中等症例に対する治療では、
①内服抗菌薬+アダパレン→アダパレン→アダパレン/BPO配合剤
②内服抗菌薬+BPO→BPO→アダパレン/BPO配合剤
③内服抗菌薬+アダパレン/BPO配合剤→アダパレン/BPO配合剤
--−のいずれかを使用している。

 尋常性痤瘡の治療では、瘢痕を残さないことも重要なポイントとなる。フランスで行われた多施設共同ランダム化比較試験では、6カ月間のアダパレン/BPO配合剤による治療は、対照とした基剤による治療と比べて有意に瘢痕の形成を抑制したと報告されている(J Eur Acad Der­matol Venereol 2017; 31: 737-742)。したがって、瘢痕の予防には急性炎症期において早期に積極的な治療を行い、維持期においてはアダパレン/BPO配合剤による治療を行うことが有効と考えられる。
 さらに、尋常性痤瘡の治療では薬剤による治療と併せてスキンケアが非常に重要である。同院アクネ外来を受診する患者の中には、雑誌やインターネットで得た誤った知識を正しいと思い込んでいる人も少なからず存在するという。また、皮膚科の診療経験が乏しい医師の中にはスキンケアに対する関心がない者や、痤瘡治療薬に関する知識が不十分な者も存在するという。
 同氏は「ガイドラインの普及により、エビデンスに基づいた適切な尋常性痤瘡の治療、患者にとって最適な治療法が日本全国に広まることを期待する」と述べている。
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耐性菌対策には、家畜の抗生物質投与中止を(WHO)

2017年11月14日 09時18分35秒 | 医療問題
 抗生物質の不適切使用・過剰使用で薬が効かなくなる耐性菌問題がニュースでも流れるようになりました。
 日本政府も「AMR」と銘打って対策に乗り出しています。
 しかし臨床現場での医師の適正使用のみでは解決できないようです。
 なぜかというと、家畜の飼料にたくさん抗生物質が使われていて、それが耐性菌発生の温床になっているという指摘もあるからです。
 WHOが勧告を出しました;

■ 家畜の抗生物質投与中止を WHO、農家に勧告
共同通信社2017年11月8日
【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)は7日、家畜の成長促進や疾病予防のための日常的な抗生物質(抗菌薬)の投与を中止するよう農家や食品業界に勧告した。
 乱用や過剰摂取により、人や動物に抗生物質が効かなくなる危険性が高まっていると警告している。
 抗生物質が効果を上げない薬剤耐性菌は世界的に拡大しており、対策を取らない場合、2050年には年間1千万人が死亡するとの予測もある。
 抗生物質の使用量の約80%が健康な家畜の成長促進に使われている国もあり、WHOは農家などへの指針で、家畜が実際に病気にかかったり、群れで感染症が発生したりした場合にのみ抗生物質を使うべきだと指摘。
 家畜の衛生管理やワクチン接種により疾病予防に努めてほしいと呼び掛けた。
 家畜への抗生物質使用を抑制した結果、薬剤耐性菌の発生を最大39%まで減らせたとの研究結果もあると説明した。
 WHOのテドロス事務局長は「抗生物質が十分な効果を失うと、疾病の大流行を招くなど公衆衛生上の深刻な脅威となる」と訴えた。
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NHK健康ライフ「子どもの肌を守る」(山本一哉先生)

2017年11月14日 08時00分32秒 | アトピー性皮膚炎

 健康ライフではお馴染みになっている山本一哉先生のお話。
 彼は小児皮膚科を立ち上げた功労者かつ重鎮です。
 相変わらずお元気そうで何より。

 気になったところをメモしておきます。

□ 11月6日(月)「アトピー性皮膚炎の要因」
・遺伝因子と環境因子がある。
・統計学的には生まれた季節と母親の年令との関連が指摘されている。
・アトピー性皮膚炎は「秋生まれ」に多く、10〜30%程度リスクが増える。理由は「乾燥」。角層が乾燥すると外から刺激物が入ってきやすい。秋に子どもを産むのは控えましょう(?)。
・出産時の母親の年令が高いほど子どもがアトピー性皮膚炎になりやすい。北欧発のデータであるが、日本にも当てはまる。

□ 11月7日(火)「スキンケアの必要性」
・子どものスキンケアを担当するのは本人ではなく周りの大人。
・女性が化粧する前には洗顔するように、スキンケアする前にキレイにすることが必要。
・赤ちゃんの肌は胎児期は乾燥や紫外線から守られている。出生後に乾燥と紫外線にさらされるようになる。
・つまり、生まれた直後(24時間以内)にスキンケアを始めるのが正解。
・遅れて始めても挽回は可能、保湿をし続けてください。

□ 11月8日(水)「外用薬の塗り方の考え方」
・内服薬は量が決まっているが、軟膏は塗る量が患者側に任されていることは問題である。
・塗る量は回数で調節する。
・FTU(フィンガー・チップ・ユニット)やローションであれば10円玉大などが目安になるがアバウトである。
・「塗り広げる」のと「すり込む」のは違う。

□ 11月9日(木)「生活で傷つく肌」
・本当に「肌が弱い」人は少ない(先天的な皮膚疾患など)。
・生活習慣にも左右される。
・子どもの手首の荒れ、湿疹がなかなかよくならないのは、手洗い後に服の濡れた袖先が当たってこすれているためのことが多い。
・紙おむつはウエストギャザー、レッグギャザーの部分が荒れやすい。
・肌に直接触れるものには気を遣いましょう。
・手触りのよい肌着でも、洗濯を繰り返せば、1年後には風合いが変わりゴワゴワになってしまうことが多い。すると肌に刺激(ヤスリ掛け)になる。
・耳切れは着替えの仕方が影響している。丸首の肌着・服を無理矢理脱がしたり着せたりしない。

□ 11月10日(金)「スキンケア製品の考え方」
・スキンケア製品は皮膚の中にしみ込むのではなく、表面を覆う、洗うと落ちる、補充できるなどが特徴として挙げられる。
・ジェルタイプはサッパリ感があり夏に向く製品、広げるには乳液タイプ、たびたび補充するにはそこにとどまるクリームタイプが向いている。
・スキンケア製品は薬ではないので、湿疹はよくならない。皮膚の健康状態、バリア機能を保つものである。
・「尿素」はバリア機能を低下させるのでスキンケア製品としてはよくないかもしれない。
・健康な皮膚では、洗う回数が多いところは塗る回数も多くなるはず。
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HPV感染は女性より男性の方が多い。

2017年11月12日 20時00分58秒 | 医療問題
 HPVワクチンは日本では女性のみが接種対象です。
 しかし外国では男性も接種対象としている国が存在します。

 考えてみると、女性にHPVを感染させるのは男性です。
 女性がやらないなら、男性に摂取すべしという発想の転換もあり、でしょうか。

■ 米国の口腔咽頭HPV感染を調べる疫学調査 〜有病率は男性11.5%、女性3.2%
2017/11/10:日経メディカル
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コラーゲンファンには、残念なお知らせです。

2017年11月12日 16時11分56秒 | 医療問題
 繰り返し指摘されてきたことですが、TV通販番組はますます増えるばかり・・・。
 いよいよ消費者庁が再発防止に乗り出したようです。

■ 消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法、教えます
2017/11/8:現代ビジネス:髙橋 久仁子
 2017年11月7日、消費者庁は「飲むだけで痩せられる」などと誤った印象を与える宣伝を繰り返していたとして、大手を含め「機能性表示食品」を扱う16社に対して、再発防止などを求める措置命令を出しました。
 「運動や食事制限なしで痩せられる」とうたっていたにもかかわらず、実際には試験を行った人々が普段以上に運動をしていたなど、科学的な知見とは異なる宣伝を行っていたというのです。
 2015年4月の制度開始以来、機能性表示食品に対する措置命令は初のこと。こうした健康に関する機能をうたった食品に潜む大げさすぎる、まぎらわしい「ウソ」を見抜く方法を、『「健康食品」ウソ・ホント』を上梓した髙橋久仁子氏が明かします。

■コラーゲンファンには、残念なお知らせです
 「年齢とともに減少する軟骨成分・グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン。毎日上手に補うことが大切です。快適な毎日をサポートします」とか「高麗人参で健康の悩みがゴッソリ解消!」等々、それを利用しさえすれば若さも元気も取り戻せるかのような広告文言をあちこちで見かけます。
 確かな根拠がないにもかかわらず、多くの人々に信じられている事柄を比喩的に”神話”とよびます。健康に関連する食の情報にもたくさんの”神話”が紛れ込んでいますが、意図的に”神話”をつくって広め、それを広告に使っているのではないかと疑われる事例が、食品の世界には少なからず存在します。
 その代表例の一つが「コラーゲン」です。
 〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉というウェブサイト内に「話題の食品・成分」のページがあり、その中に「コラーゲンって本当に効果があるの?」と題する記事が掲載されています。
 そこには「コラーゲンは『皮膚』『骨・軟骨』を構成する物質として、なくてはならないタンパク質なので、『それを食べれば、皮膚や関節によいに違いない』と思うかもしれませんが、残念なことに、現時点での科学的知見では、コラーゲンを食べても『美肌』『関節』に期待する効果が出るかどうかは不明です」とあり、詳しい理由が記されています。
 ところが、ちまたには”コラーゲン神話”が蔓延しており、「コラーゲンでお肌ぷるぷる、しっとりつやつや」など、あたかも美肌効果があるかのような文言をよく見かけます。
 私は以前、コラーゲン摂取に美肌効果があるかのように広告する企業に「コラーゲンを食べると肌の状態が改善されるのか」などの質問状を送ったことがあります(2011年)。
 回答のあった2社(K社とI社)への質問と返事をご紹介しましょう。
 まずK社には、同社の広告文言に関して「『飲むたびにうるおいを』というのは具体的にどういうことでしょうか」と訊ねました。この質問に対する答えは、「文字通り、飲んでいただいて喉をうるおしてほしいという意味です」でした。
 続いてI社にも、やはり同社の広告文言について、「『おいしくうるおう』とありますが、なにがうるおうのでしょうか」と質問したところ、「止渇作用によって喉をうるおします」との回答がありました。
 いずれの回答もうるおうのは「喉」であり、「肌」にはひと言も触れていません。
 「うるおい」「うるおう」などの文言を配して広告していながら、このような答えが返ってくるのです。
 なるほど、「肌がうるおう」は消費者側の勝手な解釈なのでしょうが、”コラーゲン神話”に便乗して販売しているととられても、仕方がないのではないでしょうか? 

■「効く・効かない」より「安全か」が重要
 コラーゲンに限らず、食品に関する派手な広告や情報に出会って、心動かされそうになったときはどうしたらいいのでしょうか? 
 なによりも大切なのは、「すぐに飛びつかない」ことです。まずは「○○って、何? そんないいことあるの? と疑ってみましょう。一呼吸置いても、絶対に損はしないのですから。
 華々しい効果を謳う「健康食品」やその広告が気になったら、まずは、先ほどもご紹介した国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の国立健康・栄養研究所が公開している〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉というウェブサイトを確認するようにしましょう。
 同研究所は、「国民の健康の保持・増進及び栄養・食生活に関する調査・研究を行うことにより、公衆衛生の向上及び増進を図る公的機関」であり、信頼度の高い責任ある情報を発信しています。
 上のサイト上で、たくさんの種類の「健康食品」に関する情報を確認することができます。そこで情報をチェックすると、たいていの食品・食品成分の「有効性」に関して、ヒトにおけるきちんとしたデータがないだけでなく、むしろかなりの「危険情報」があることなどがわかります。
 販売企業に電話をして、直接訊ねてみるのも一つの方法です。「これは何に効くのか? 「私の不調が解消されるのか? などの質問を、しつこいくらいぶつけてみてください。
 ほとんどの企業が、明確に「効きます」とは答えないはずです。「効果があったとおっしゃるお客様がたくさんいらっしゃいます」とか「個人差があります」のように、答えをはぐらかすことが多いでしょう。
 企業の対応姿勢から、商品の質を見極めることができるのは、「健康食品」も他の商品と同様です。ただし、場合によっては執拗に勧められることもありえますので、すぐに購入してしまうことのないよう、問い合わせはくれぐれも慎重に行ってください。
 健康食品に関しては、「効く/効かない」がよく話題になりますが、それを論じる前に、「摂取して安全なのか? をまず問う必要があります。
 商品Aを摂取して「影響がなかった場合」には、「摂っても意味がない」と単純に理解できると思います。
 では、「影響があった場合」はどうでしょうか。それが「悪い影響」であれば、「有害作用」としてすぐにやめる気になることでしょう。
 問題は、「期待していた影響があった場合」です。
 たとえば糖尿病の人が、「これを飲むと血糖値が下がる」といわれてそれを利用したところ、確かに血糖値が下がったような場合です。
 「血糖値が低下した。だから効いている」と、素直に喜びたくなるのが人情です。しかし、「効いた」と感じたからといって、無条件に継続利用していいわけではありません。
 「なぜ血糖値が低下したのか? どんな作用によるのか? 「ひょっとして違法に医薬品が添加されているんじゃないか? 「あるいは、体のどこかの機能を障害したから血糖値が低下したのかもしれない」といった疑問をきちんと検討してみる必要があります。
 医薬品の世界では「効果が害(副作用)を上回る」なら医薬品として認めるという合意が成り立っています。「健康食品」に関しても、「少々の害があっても、利益があればそれでいいじゃないか」というきわめて乱暴な意見を耳にすることがあります。
 しかし、明白な疾病に対して治療の一環として服用する医薬品とは異なり、「健康食品」は”さらなる健康”を求めて利用するものであるはずです。
 そのような目的で利用する商品に、「ここまでの有害作用は目をつぶろう」という”境界線”が存在しうるとは思えません。

■自分の身は自分で守る
 健康を維持増進する三要素は、あくまでも「栄養・運動・休養」です。これ以外の「何か」が健康維持に必須であるかのように煽りたてて、「健康食品」の消費を増やすことを意図して、2015年に「機能性表示食品」制度が始まりました。
 この制度が誕生する契機となった、2013年6月5日公表の「規制改革に関する答申」の副題が「経済再生への突破口」であることを忘れてはいけません。
 世の中に蔓延する「食品成分の機能性幻想」につけ込み、無益どころか有害かもしれない”余計なモノ”を摂取させることで、経済を活性化させようとする人たちにとって、国民の健康は「どうでもいい」ものなのでしょうか? 
 コラーゲンにとどまらず、世の中には「本当に効果があるのか疑問」と思わざるを得ない健康食品、商品が多数あります。それらについて、私は『「健康食品」ウソ・ホント』という本にまとめました。ご興味、ご関心のある方に、一読いただければ幸いです。
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プール中の「塩素と尿」で呼吸器症状リスク ← 犯人は「クロラミン」

2017年11月12日 15時49分52秒 | 医療問題
 今や当たり前になったいるプールの塩素消毒。
 こんな落とし穴があったとは・・・でも刺激物質程度の記述で、後に残るということではなさそう。

■ プール中の「塩素と尿」で呼吸器症状リスク
提供元:HealthDay News:2017/10/09:ケアネット
 天候を気にすることなくプールやウォータースライダーなどの水遊びを存分に楽しめる屋内ウォーターパーク施設は子どもたちに人気の施設だ。しかし、米疾病対策センター(CDC)のSophia Chiu氏らによる研究から、こうした施設の従業員は、水の消毒に使用される塩素に利用客の尿や汗が反応して発生する有害物質に起因した眼や呼吸器の症状に悩まされる確率が高いことが分かった。詳細は「Morbidity & Mortality Weekly Report」9月21日号に掲載された。
 Chiu氏らは2016年、オハイオ州のあるリゾート施設で調査を実施した。この施設にはホテルやバー、土産物店などのほか、プールやウォータースライダー、子どもの水遊び施設、スパなどを擁する屋内ウォーターパーク施設がある。調査では同施設の従業員91人(年齢中央値19歳、男性52%)に眼や鼻の症状のほか、咳、喘鳴、息切れ、胸苦しさ、喉の痛みといった症状があるかどうかを尋ねた。
 その結果、約3人に1人の従業員にこれらの症状が3つ以上あり、リゾート施設のうち屋内ウォーターパーク施設で働く従業員では、他の施設で働く従業員と比べてこうした症状が3つ以上みられる確率が3.8倍に達していた。
 これらの症状の原因は、施設で使用する水を消毒するための塩素が、利用客の尿や汗に含まれる窒素と結合することで発生するクロラミンなどの有害物質である可能性が高いようだ。Chiu氏らが昨年この施設で水質調査をした際には、基準値を超える結合塩素が検出され、クロラミンが発生していることも示唆されたという。
 ただ、こうした有害物質も施設内が十分換気されていれば分散されて問題になることは少ない。しかし、同氏らの調査からは、このオハイオ州の施設の空調システムには不具合があり、換気で重要な役割を担う6つのHVACユニットのうち5つのユニットのファンが稼働していないことも明らかになったという。
 Chiu氏らは「これらの呼吸器症状は一過性で、従業員は職場環境から離れれば回復する」とする一方で、米国内には192施設ものウォーターパーク施設があり、利用客は数百万人に上るとみられることから、「有害物質による影響を受けている人はかなり多いのではないか」と指摘している。
 なお、CDCは、施設の従業員に対し、眼や呼吸器の症状が現れたらすぐに管理者に報告することを勧める一方、利用客に対しては利用前にシャワーを浴びることに加え、利用中もこまめにトイレ休憩を取ることを推奨している。

<原著論文>
Chiu SK, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2017 Sep 22;66(37):986-989.
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ワクチンを接種したくてもできない子どももいる。

2017年11月12日 11時16分54秒 | 予防接種
 以前から指摘されていることですが、しつこく関連記事を紹介します。
 このような子どもたちを守るためにも水痘ワクチン接種率を100%近くに保つ必要があるのです。
 日本に水痘発生がなくなれば、記事で扱われている子どもたちも死なずに済みます。

 しかし水痘ワクチンが定期接種化したのは数年前。
 まだまだ感受性者が日本にはたくさんいます。
 ただ指をくわえているだけでは解決せず、積極的な検討が始まりました。

■ 「ワクチン不可」子ども接種検討
2017年11月07日:NHK
 免疫を抑える薬を使っているために、水ぼうそうなどのワクチンを接種できない子どもたちについて、接種を見送った後に感染症で死亡した事例が報告されていることから、国立成育医療研究センターは全国の医療機関の協力を得てワクチンを接種しながら安全に健康を管理する手法を検討することになりました。
 子どもが接種するワクチンには、毒性を弱めたウイルスや細菌を接種する「生ワクチン」と呼ばれるタイプがありますが、難病の治療や移植手術などで免疫抑制剤を使っている場合には、ワクチンによってその感染症を発症してしまうおそれがあるため、原則、使用できないことになっています。
 しかし、平成24年までの10年間に、全国で、ワクチンを接種できなかった3人の患者が、水ぼうそうを発症して死亡したことがわかり、国立成育医療研究センターの研究グループは免疫抑制剤などを使っている子どももワクチンが接種できる手法を検討することになりました。
 グループは、今月から全国300の小児科のある医療機関を対象に、免疫抑制剤などを使っている子どもの実態調査を行い、医師の判断で例外的にワクチンを接種している患者がどれくらいいるかや、副作用の発生状況、それに、どのような安全管理の元で実施したかなどについて調べるということです。
 対象となるのは年間1000人程度が発症するネフローゼ症候群と呼ばれる腎臓の病気や、臓器移植後の患者、それに下痢や激しい腹痛などを伴う潰瘍性大腸炎などの子どもたちです。
 グループでは来年度末までに結果をまとめた上で、国や関連する学会などとワクチン接種の必要性やどのような安全管理をすれば接種できるかなどについて検討したいとしています。
 調査を取りまとめる国立成育医療研究センターの亀井宏一医師は「免疫抑制剤を服用している患者は感染症のリスクが健康な人より高く、本来最もワクチンで守る必要のある患者だ。ワクチン接種の需要が高く、有害事象がほとんどないことがわかれば、学会などの意見を聞きつつ、薬の使用方法を説明している添付文書の文言の修正などを相談していきたい」と話しています。
 ワクチンの問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は今回の取り組みは非常に有意義だと評価したうえで、「感染症のリスクが高いということは生ワクチンそのもので発症するリスクもあり、安易に『免疫が低下している人も生ワクチンを接種して問題ない』と誤解されないように慎重に進めてほしい」と指摘しています。
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