小児アレルギー科医の視線

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LED照明が人体・自然界に及ぼす影響

2017年12月30日 07時36分38秒 | 医療問題
 便利なものは、必ずと言っていいほどマイナス面を持ち合わせています。
 LED照明は「明るくて長持ちして電気代も節約できる」利点を武器に急速に普及しています。
 それに伴い、人体に及ぼす影響、自然界に及ぼす影響が話題になるようになりました。
 下記記事を読むと「人間の体内時計のみならず、自然界の日内リズムも狂わせてしまう」可能性があるのですね。これは想定外の現象を引き起こすかもしれません。

LED照明による新たな「光害」の発生が地球的規模で懸念される
2017年11月24日:Gigazine
 自動車のヘッドライトや街灯、スマートフォンのカメラに備えられたフラッシュなど、LEDを使った照明器具は身近なところに多く使われるようになりました。小型でありながら明るく、しかも消費電力は低く長寿命という照明器具としては非常に優れた性能を備えているLED照明ですが、ここ近年で爆発的に世界に広まったことで環境に与える影響が懸念され始めています。

Science Journals — AAAS - e1701528.full.pdf
Energy-saving LEDs boost light pollution worldwide
The unfortunate side effect of LED lighting - The Verge

 この影響を明らかにしたのは、ドイツ地球科学研究センター(GFZ)の研究院を中心とする研究チームです。同チームは、人工衛星に搭載された観測装置を用いて地球表面の明るさを計測したデータを用いることで、夜間において人工的に照らされるエリアの増減と光量の増減を調査しました。データは、アメリカ海洋大気庁が運用する極軌道上を周回する気象衛星「スオミNPP」によって計測されたものが用いられています。
 その結果判明したのが、人工的な光によって照らされる地球表面の面積は、2012年から2016年にかけて年2.2%の割合で増加を続けているという事実。



 また、その変化は光の波長の違いとしても観測されているとのこと。その一例を示すのが、イタリア・ミラノの夜景を撮影した可視光のカラー写真の変化。2012年のカラー写真ではオレンジ色のような街灯の明かりによって街全体が照らされているのに対し、2015年のカラー写真では街全体が白っぽい色に変化していること、そして色の変化のない郊外との色の違いが一目瞭然となっています。研究チームによると、これはLED電球への移行によってもたらされた変化とのこと。また、図は同地域で2012年から2016年の間で生じた明るさの変化をポイントごとに色分けしたもの。街の中心部では光量が減少していますが、周辺部では光量が増大していることが示されています。



 研究チームを率いたChris Kyba氏はこの変化について「いくつかの例外を除いて、ライトアップされる地域の変化は南アメリカやアフリカ、アジアで顕著に見られます。公園内の自転車道や、郊外へ延びる高速道路のように、かつては照らされていなかった場所が今は明るく照らされるようになっています」と語っています
 そしてこの変化は、さまざまな環境に対して良くない影響を与えることが懸念されています。報告書では、夜でも明るく照らされるエリアが増えることで昼夜のバランスが崩れ、地球の自然がこれまでしたがってきた1日のサイクルが乱されるという影響が生じる可能性が示唆されています。
 これは人間に対する影響はもちろん、小動物を含む動物全般や、植物の生態系に影響を与えると考えられているとのこと。人間の体に太陽光を受けて周期的に変化する「体内時計」が存在するように、地球の多くの動物や植物にも周囲の明かるさの変化をもとにする体内時計が存在していると考えられています。そのサイクルが、地球規模で広まる人工光の増大によって広く乱されることで、生物の生態系全体にまで影響が及ぶのではないかと懸念されているというわけです。論文の共同著者であるFranz Holker氏は「多くの人が、その影響について良く考えないまま夜間に照明を使っています」と語り、人工光の使いすぎによる悪影響に警鐘を鳴らしています。
 今回明らかにされたのは2012年から2016年のデータであり、より詳細な実態の把握には、それ以前にまでさかのぼったデータを用いることで数十年規模での変化を調査することを期待したいところ。さらにいえば、人間が電力を手に入れて人工光を大規模に使用するようになった時代からの変化を見ることで、実際にどのような影響が生態系に及んでいるのかを把握することにつながるはずです。


 同じサイトから、もう一つLEDの記事を。
 LEDは「目に不快なほどまぶしい、明るすぎる」と私も感じていましたが、これはパソコンモニターでも問題視されているブルーライトを多く含んでいるためだそうです。
 ポイントを抜粋すると、

・節電対策としてLED照明は推奨されるが、人体に及ぼす影響を考慮すると工夫が必要でああり、夜間の屋外照明、特に街灯は色温度を高くても3000K程度に抑えるべきである。
・大きな問題2つ;
①白色LEDはブルーライトを多く含んでいる。白色LEDの色温度(※)は4000〜5000Kと高く、ブルーライト(※)を多く含んでいる。
②サーカディアンリズムへの影響:白色LEDはトンネル内の照明としても有名なナトリウムランプよりも、夜間のメラトニン量を5倍も抑えてしまう。メラトニンの抑制はサーカディアンリズムの崩れにつながり、ここから睡眠障害に発展する恐れもある。LED街灯のまぶしすぎる光が野生動物に悪影響を与えてしまう可能性も示唆されている。


色温度:光源が放つ光の色を定量的な数値で表現する単位で、屋内照明の「電球色」が3000K程度、LEDが普及する前に多くの家庭で使用された白熱電球の色温度は約2400K。ライトが発明される前、人間は木々を燃やして明かりを作り出していましたが、木などを燃やしてできる明かりの色温度は約1800K。色温度からどのような色の光を含んでいるのかは予測可能ですが、色温度ではLEDから発せられる光の色を測定することはできないので、その場合は相関色温度(CCT)を用いる。
ブルーライト:可視光線の中でも最も強いエネルギーを持つ青色光。白色LEDから発せられるブルーライトは、波長が長い黄色・赤色光よりも人間の目の中で多く反射し、網膜にダメージを与えるため、目の瞳孔が過度に縮小する縮瞳を引き起こす原因にもなる。


■ 「LEDの街灯は健康・安全面に問題がある」と米国医師会が発表、一体どんな影響があるのか?2016年06月30日:Gigazine
 電球には白熱灯と白色LEDの2種類がありますが、2つを比べるとLEDは、消費電力が圧倒的に低く、おまけに白熱灯よりもかなり明るいという特長を持っています。より明るく、節電にもなるということで多くの場所で採用されている白色LEDですが、米国医師会(AMA)は、「街灯に使用されている白色LEDには健康・安全面で問題がある」と警告しています。

American Medical Association warns of health and safety problems from 'white' LED streetlights

 AMAは公式の年次報告書の中で、道路照明に使用されているLEDを弱めて暗くすることを明らかにしました。年次報告書の中で明かされたこの決定は、2016年6月14日にシカゴで開催された、AMAの年次総会の中で満場一致で決定した事項だそうです。アメリカでは近年、街灯でのLEDの使用が加速しており、シアトルやニューヨークの街灯にもLEDが使用されています。その中で下された決定ですが、AMAは「街灯に使用されているLEDライトが潜在的に持つ、人間の健康や環境に対する悪影響を最小限にするため」と、LED利用に関するガイドラインまで公開しています。
 アメリカの多くの地方自治体は、既存の街灯をLEDに取り替え、エネルギーの節約と街灯のメンテナンス性の向上を図ってきました。しかし、LED街灯には2つの大きな問題がある、とAMAは指摘しています。
 AMAは年次報告書の中で、夜間の屋外照明、特に街灯は色温度を高くても3000K程度に抑えるべき、としています。色温度というのは、光源が放つ光の色を定量的な数値で表現する単位で、屋内照明の「電球色」が3000K程度とされています。色温度は数値が大きくなれば大きくなるほど青色に近くなっていき、白色LEDの色温度は4000~5000Kです。この白色LEDは見た目は真っ白な光に見えますが、可視光線の中でも最も強いエネルギーを持つ青色光、ブルーライトを多く含んでいます
 対して、LEDが普及する前に多くの家庭で使用された白熱電球の色温度は約2400Kです。これは、LEDライトよりもブルーライトが少なく、ブルーライトよりも波長の長い黄色・赤色光を多く含んでいるということになります。ライトが発明される前、人間は木々を燃やして明かりを作り出していましたが、木などを燃やしてできる明かりの色温度は約1800Kで、白熱電球よりもさらに黄色や赤色の光が多く、これにブルーライトが含まれていません。しかし、LEDが広く普及した現在、屋内から屋外にいたるあらゆる場所で、照明として白色LEDが使用されています。
 その白色LEDが抱える問題点というのは、ひとつが「不快なほどにまぶしい光を発する」という点です。LEDライトはブルーライトが凝縮されており、これにより非常にまぶしい光を発します。しかし、白色LEDから発せられるブルーライトは、波長が長い黄色・赤色光よりも人間の目の中で多く反射し、網膜にダメージを与えるため、目の瞳孔が過度に縮小する縮瞳を引き起こす原因にもなるとのこと。白色LEDをしばらく凝視すると、目が痛んで目を閉じざるを得なくなります。「これはLEDの発する光が強すぎることをよく示している」と、海外ニュースサイトのThe Conversation。
 AMAが指摘する、白色LEDの持つ問題点の2つ目は「サーカディアンリズムへの影響」です。
 色温度からどのような色の光を含んでいるのかは予測可能ですが、色温度ではLEDから発せられる光の色を測定することはできないそうです。そこで用いられるのが相関色温度(CCT)と呼ばれる指標。CCTでは、同じ3000Kの光でもどちらが多くブルーライトを含んでいるか、などがわかるそうです。したがって、AMAは色温度が3000K以下になるようにLEDを選ぶだけでは不十分としています。
 AMAの年次報告書が公開されたのは、世界中で夜間の人工光がいかに発せられているかを示す「The World Atlas of the Artificial Night Sky Brightness」が公開されたタイミングと非常に近く、このマップの中の人工光のにはLED街灯も多く含まれているだろう、とThe Conversation。
 また、夜間のLED街灯による人体への影響についてもAMAは記述しており、白色LEDはトンネル内の照明としても有名なナトリウムランプよりも、夜間のメラトニン量を5倍も抑えてしまうことも判明しています。メラトニンの抑制はサーカディアンリズムの崩れにつながり、ここから睡眠障害に発展する恐れもあります。また、LED街灯のまぶしすぎる光が野生動物に悪影響を与えてしまう可能性も示唆されています。
 なお、AMAはエネルギー効率と人体への影響を鑑みて、白色LEDの使用を推奨しながらも、ブルーライトが最小限になるように照明をコントロールするべき、としています。
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