小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「医療被ばく」を医療者も患者も認識すべし

2017年02月03日 06時48分47秒 | 医療問題
 日本は医療被ばくに関する意識が低いと言われており、そのため、医療被ばくによる発がん率が他の先進国より高いと聞いたことがあります。
 私がそれを意識するようになったのは、今から20年前くらいでしょうか。
 某学会でCT所見の経過を追った発表を聞いていたとき、会場から「そんなに何回もCT撮影をするのは患児の被爆という視点から好ましくないと思います」という意見があり、驚きました。
 質問者は小児放射線科医で「CT1回はレントゲン100枚分の被爆があります」とコメント。
 会場がざわついたことを記憶しています。
 以降、私自身はレントゲン検査をする際、そのメリットと被爆というデメリットを天秤にかけて考えるようになりました。

 なお、ヒトは宇宙から入ってくる放射線を常に浴びており、1年間では胸部レントゲン数枚分に相当すると書物で読んだことがあります。
 つまり、自然に生活している状態でも1年にレントゲンを数回撮影されたのと同じだけ放射線を浴びていることになるのです。
 だからレントゲン検査を受けたからといって、すぐ癌発生につながるわけではありません。
 誤解なきよう。

 最近目にした関連記事を2つ、紹介・抜粋させていただきます;

■ 「レントゲン、CT検査 医療被ばくのリスク」(崎山比早子著)
 2004年、イギリスの医学雑誌『ランセット』に、オックスフォード大学のベリングトン博士らの研究論文が掲載されました。タイトルは、『診断用エックス線による発がんのリスク:英国および 14ヵ国の評価』(04 年1月31 日号)。欧米をはじめとする15の国で、放射線検査の頻度や、その検査による被ばく量、年齢、性別、発がん率などを基に解析した国際研究です。その論文によると、日本は年間のがん発症者の3.2%、人数にして年間7587人が医療被ばくが原因とされています。2番目に多いクロアチアでも1.8%ですから、世界でも突出して医療被ばくが多いと言えるでしょう。


 上記リンクで提示されている患者さんが検査で受ける被ばく線量一覧(参考資料の1から);



 上の表によりますと、私が日常診療で撮影する胸部レントゲン1枚と胸部CT1回を比較すると、その被曝量は0.03:7.9=1:263となり、100倍どころか263倍の被爆(!?)という計算になります。
 皆さん、ご存じでした?

■ 医療者を守る放射線防護の10カ条〜京都医療科学大学教授の大野和子氏に聞く
日経メディカル:2017/1/13

<参考>
・「医療被ばくをどう考えるか ~低線量放射線のリスクを知るために~」(高木学校第8回市民講座報告集)
・「医療被ばくQ&A
・「あなたは医療被ばくについて患者の質問に答えられますか?
・「医療被ばく関連の解説
・「暮らしの中の放射線被ばく ―医療被ばくの現状―
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「おたふくかぜ難聴」を知っ... | トップ | 「守ろう、子どもの冬の肌」... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療問題」カテゴリの最新記事