小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

只今「DTaP定期接種化」検討中

2017年03月22日 13時41分50秒 | 予防接種
 増加する成人の百日咳対策として、三種混合ワクチン(DTaP)を使うべきかどうか、厚生労働省が検討中です。
 その会議録から。

 私がポイントと感じたところは、
・重症化しやすい乳児早期の破傷風の感染源は、従来成人と考えられてきたが、近年の調査では同胞(お兄ちゃんやお姉ちゃん)が最多であることがわかった。
・百日咳抗体は就学前に最低となる。
・すると、百日咳ワクチンの追加接種のタイミングは11-12歳ではなく、就学前の方がよいのではないのか?
・年長児以降にDTaP接種した場合の免疫効果持続期間は未検討。
・百日咳は小児科定点報告なので成人患者の正確な患者数が把握できていない。LAMP法とIgM/IgA抗体価測定という強力な診断スキルが保険適応となった今、ルールを決めてサーベイランスすることが望まれる。

 等々。

 以下は抜粋です;

・2016年2月に沈降性性百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン「トリビック」の製造販売承認書の変更が行われ、乳幼児期に3回又は4回接種された11-13歳未満の小児、さらに青年・成人層における追加接種が可能となった。追加接種には年齢制限が設けられていないことから、定期接種対象年齢以外での接種が可能となっている。

・2009-2013年の15歳未満の百日咳入院例の検討では、0歳が86%、死亡例ゼロ。入院率は5歳未満で年10万人あたり11.8であり、全国の年間入院患者数は618人と推定される。推定感染源は、兄弟などの同胞が21.9%、母親と父親がそれぞれ12%。

・百日咳の発病防御レベルである抗PT抗体10EU/mL以上の保有率は、0歳後半で最も高く90%以上。ただし、その後5歳頃までに漸減(5歳では20%台)し、その後は徐々に上昇していく。

・WHOの報告では、過去20年間の患者数の推移は、2005年頃からやや増加傾向にある。

・DTaP0.5mlを11歳以上13歳未満の小児に接種した臨床試験では、ブースター反応率はPT、FHAに対して、それぞれ91%、91.5%だった。DTaPはTdapと比較するとジフテリア抗原量が多いので、小児接種量0.5mLを成人に接種すると局所反応が強く出る可能性がある。

・若年成人を対象にDTaPを0.2mL群と0.5mL群に分けて接種したところ、接種後4週間後の抗体上昇は0.5mL接種群が有意に高かった(ただし追加効果率はともに100%)。接種後長期間経過した場合の抗体価の減衰の有無やは今のところ評価できていない。

・DTaP0.5mLとDT0.1mL接種後の局所反応を比較したところ、発現頻度は0.5mL接種群でやや高かったかが、両群で大きな差は認められていない。国内外で実施されたDTaP0.5mL接種後の検討では、局所反応と発熱が中心で、いずれも自然軽快している。

・現在のサーベイランスの報告基準は臨床診断のみ。

・従来の遺伝子検査では、血清学的に診断された例全部から検出されない。3ヶ月以下の乳児で5割、10歳代で30%程度。
 呼吸器内科の慢性咳嗽外来の百日咳例は、PCRでは百日咳遺伝子をほとんど検出できない。

・11-13歳の年齢での接種を考える際、HPVワクチンと同じ年齢層にうつということで、十分な説明をして打たないと、迷走神経反射が起こりやすい年齢であり、いろいろな不定愁訴が出てくる年齢なので、また大変な訴えが出るリスクも考える必要がある。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 只今「帯状疱疹ワクチン定期... | トップ | おたふくかぜ&ワクチン関連... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

予防接種」カテゴリの最新記事