小児アレルギー科医の視線

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インフルエンザワクチンを打つ人、打たない人

2018年01月01日 08時28分17秒 | 予防接種
 インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人を比較・分析した中国発の報告の紹介記事です。

 中国の予防接種状況は、「北京では2007年以後、60歳以上の人と小中学生はインフルエンザワクチンを無料で打てる」そうです。
 アンケート調査(18歳以上の7106人)の中で、接種した人は20.6%と、日本より少ないようですね。

■ 中等教育も関係?インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人〜中国7,106人のアンケート
2017.10.05 from BMJ open:MEDLEY
 インフルエンザワクチンの効果はたくさんのデータから示されていますが、打ちたくない人もいます。アンケート調査から、ワクチンの副作用が怖いと思う人は打っている割合が低いなどの結果が報告されました。

打った人・打たなかった人の背景は?
 中国の研究班が、インフルエンザワクチンについての聞き取り調査の結果を専門誌『BMJ Open』に報告しました。
 この調査は、2014/15年シーズンのインフルエンザワクチンを打ったかどうかを、学歴やワクチンについての考えなどとともに質問したものです。調査は北京で2015年の5月から6か月にかけて行われ、18歳以上の人7,106人が対象となりました。
 中国の多くの地域では、インフルエンザワクチンがあまり使われていません。北京では2007年以後、60歳以上の人と小中学生はインフルエンザワクチンを無料で打てます。

専門家の勧め、副作用
 回答者のうち2014/15年シーズンのインフルエンザワクチンを打っていた人は全体で20.6%でした。
 59歳以下では5,726人のうちワクチンを打っていた人は933人でした。60歳以上では1,362人のうち672人がワクチンを打っていました。
 統計解析の結果、年齢によらず以下のいずれかに当てはまる人では当てはまらない人よりもインフルエンザワクチンを打っていた割合が高くなっていました。

・最終学歴が小学校以下
・慢性の病気にかかっている
・医療従事者から打つよう勧められた
・ワクチンの副作用は怖いと思わない

 「ワクチンはインフルエンザ感染症を防げると思うか」という質問に対して、18歳から59歳の人では防げると思う人のほうが多くワクチンを打っていましたが、60歳以上の人では統計的に差が確かめられませんでした。
 教育水準が低い人のほうが多くワクチンを打っていた点について、研究班は考察の中で、逆の方向の報告が多いことを前提に、最近の放送メディアやインターネットがワクチンの副作用を強調して伝えていることなどを指摘しています。
 結論として研究班は「将来の予防接種キャンペーンは専門家が勧めることと市民の認識の向上を狙って実行されるべきである」と記しています。

副作用情報の影響とは?
 インフルエンザワクチンを打ったかどうかとその背景についての調査を紹介しました。
 副作用が気になって予防接種をためらっている人は日本でも多いかもしれません。もし考察のようにメディアが影響しているなら、感染症予防の中でメディアが担う役割は無視できません。副作用の報道が人の行動に影響することに対して責任のある情報発信が求められます。

(執筆者:大脇 幸志郎)


<参考文献>
・Factors associated with the uptake of seasonal influenza vaccination in older and younger adults: a large, population-based survey in Beijing, China. BMJ Open. 2017 Sep 25.[PMID: 28951412]


 もう一つ、2016年の記事を。
 鍼治療やカイロプラクティックなどを利用したことがある子どもでインフルエンザワクチン接種率が低く、マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもではインフルエンザワクチン接種率が高い傾向が認められたという内容です。

■ インフルエンザワクチンを打つ人と打たない人の違いとは? 〜代替医療の経験で違った接種率
2016.10.23:from Pediatrics:MEDLEY
 今年のインフルエンザワクチンは打ちましたか?「効果は何%」と数字で言われても、なんとなくイメージで考えてしまいますよね。子どものワクチン接種率についての研究から、代替医療を利用した経験と接種率に関連があったことが報告されました。

代替医療とワクチン接種率の関係
 アメリカのペンシルバニア州立大学の研究班が小児科専門誌『Pediatrics』に報告した研究を紹介します。
 この研究は、アメリカ全国で行われた調査データを解析することで、代替医療(だいたいいりょう)とワクチン接種率の関係を調べています。調査では4歳から17歳の子どもが対象とされました。
 研究対象とされた代替医療は次のように分類されました。

・鍼治療など
・ハーブなど(マルチビタミンとマルチミネラルは除く)
・マルチビタミンとマルチミネラル
・体に手で加える治療(カイロプラクティックなど)
・体と精神に着目する治療(ヨガなど)

 データが得られた9,879人の子どもについて、統計解析により、それぞれの種類の代替医療を利用したことがあるかどうかで、インフルエンザワクチン接種率に違いがあるかを調べました。

鍼・カイロ利用者は接種が少ない
 次の結果が得られました。
 インフルエンザワクチン接種率は、代替医療システムを利用したことのある子どもで低く(利用したことがない子どもと比べて33% vs 43%, P=0.008)、徒手的身体療法を利用したことのある子どもでも低かった(35% vs 43%, P=0.002)が、マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもでは高かった(45% vs 39%、P<0.001)。
 鍼治療など、またはカイロプラクティックなどを利用したことがある子どもでインフルエンザワクチン接種率が低くなっていました。
 マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもではインフルエンザワクチン接種率が高くなっていました。

インフルエンザワクチンにどんなイメージがありますか?
 インフルエンザワクチンでインフルエンザを予防できることは、実際に打った人を調べた多くのデータから示されています。しかし、人は数字では動きません。効果があるといくら告知されていても、現実にはすべての人がワクチンを打っているわけではありません。
 この研究で、体に人工物を入れない鍼やカイロプラクティックの利用者と、人工物であるビタミンやミネラルを飲む人で反対の傾向が出たことは面白い結果です。インフルエンザワクチンに対するイメージが関係しているのかもしれません。
 薬やワクチンは体によさそうだと思いますか?

(執筆者:大脇 幸志郎)


<参考文献>
・Complementary and Alternative Medicine and Influenza Vaccine Uptake in US Children.
Pediatrics, 2016 Oct 3.
(http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2016/09/30/peds.2015-4664.)
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