前項目「フルミスト、効くの?効かないの?」という小児科医の素朴な疑問に答えるように、日本小児科学会が見解を公表しました。
✓ 現行の注射する不活化インフルエンザワクチンと比較して効果は同等であること、
✓ 接種に際しては一般の生ワクチンとしての注意点があること、
✓ 経鼻投与という経路より、副反応として局所の症状が出ること、
✓ 経鼻投与という経路より、喘息・喘鳴既往者は「要注意」であること、
などが記されています。
注射が苦手で今までインフルエンザワクチンを接種しなかった子どもたちには朗報ですが、
注意点をしっかりチェックした上で接種に望みたいと思います。
▢ 日本小児科学会、フルミストの使用に関する考え方を公表
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会(以下、委員会)は2024年9月2日、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方(以下、「使用に関する考え方」)を示した(外部サイト:日本小児科学会)。2023年3月に経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミスト点鼻液)が薬事承認され、第一三共(東京都中央区)が製造販売元となり2024/25シーズンから本格的に流通することを受けてのもの。従来の不活化インフルエンザHAワクチンとの使い分けに関する推奨や、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン使用時の注意点をまとめている。
「使用に関する考え方」の中で、委員会は「不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの間にインフルエンザ罹患・予防効果に対する明確な優位性は確認されていない」と明記。その上で、以下のように推奨をまとめた。
「使用に関する考え方」の中で、委員会は「不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの間にインフルエンザ罹患・予防効果に対する明確な優位性は確認されていない」と明記。その上で、以下のように推奨をまとめた。
▶ 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会の推奨
■ 接種適応年齢である2歳~19歳未満には、不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンを同等に推奨する。
■ 特に喘息患者には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。
■ 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは飛沫または接触により、ワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦や周囲に免疫不全者がいる患者の場合は不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。
■ そのほか、以下の場合は不活化インフルエンザHAワクチンのみを推奨する。
・生後6カ月~2歳未満
・19歳以上
・免疫不全患者
・無脾症患者
・妊婦
・ミトコンドリア脳筋症患者
・ゼラチンアレルギーを有する患者
・中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者
■ 特に喘息患者には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。
■ 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは飛沫または接触により、ワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦や周囲に免疫不全者がいる患者の場合は不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。
■ そのほか、以下の場合は不活化インフルエンザHAワクチンのみを推奨する。
・生後6カ月~2歳未満
・19歳以上
・免疫不全患者
・無脾症患者
・妊婦
・ミトコンドリア脳筋症患者
・ゼラチンアレルギーを有する患者
・中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの有効性について、委員会は2016/17シーズンに2歳~19歳未満の健康小児を対象として行われた無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験の結果を紹介。全ての株によるインフルエンザ疾患に対する経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの有効性(vaccine efficacy)は28.8%であり、日本人小児でのインフルエンザ罹患予防効果が示された。
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの国内における薬事承認時の臨床試験では、不活化インフルエンザHAワクチンとの直接比較試験は実施されていないが、国外の市販後調査に基づく報告では、両者の間にインフルエンザ罹患・予防効果に明確な優位性はないとされている。
なお、「使用に関する考え方」には言及がないが、2024/25シーズンで用いられる経鼻弱毒生インフルエンザワクチンと不活化インフルエンザワクチンではワクチンの製造株が異なる。インフルエンザHAワクチンは2024年4月に公開された国立感染症研究所の推奨(外部サイト:厚生労働省)に基づいた4価のワクチンである一方、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは世界保健機関(WHO)が2024月2月に公開した推奨(外部サイト:WHO)に基づいたワクチンとして製造されている。
このため、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、A/H3N2ワクチン製造株が国内の不活化インフルエンザHAワクチン製造株と異なり、またB/Yamagata系統であるB/Phuket/3073/2013を含まないワクチンとなっている。B/Yamagata系統は2020年3月以降、自然界における流行で解析された株はない。WHOは2023年の勧告に引き続き、B/Yamagata系統の抗原をワクチンに含む必要性はないとしつつ、ワクチンを3価にするか4価にするかの判断は各国が行うべきだという見解を示している。
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの国内における薬事承認時の臨床試験では、不活化インフルエンザHAワクチンとの直接比較試験は実施されていないが、国外の市販後調査に基づく報告では、両者の間にインフルエンザ罹患・予防効果に明確な優位性はないとされている。
なお、「使用に関する考え方」には言及がないが、2024/25シーズンで用いられる経鼻弱毒生インフルエンザワクチンと不活化インフルエンザワクチンではワクチンの製造株が異なる。インフルエンザHAワクチンは2024年4月に公開された国立感染症研究所の推奨(外部サイト:厚生労働省)に基づいた4価のワクチンである一方、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは世界保健機関(WHO)が2024月2月に公開した推奨(外部サイト:WHO)に基づいたワクチンとして製造されている。
このため、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、A/H3N2ワクチン製造株が国内の不活化インフルエンザHAワクチン製造株と異なり、またB/Yamagata系統であるB/Phuket/3073/2013を含まないワクチンとなっている。B/Yamagata系統は2020年3月以降、自然界における流行で解析された株はない。WHOは2023年の勧告に引き続き、B/Yamagata系統の抗原をワクチンに含む必要性はないとしつつ、ワクチンを3価にするか4価にするかの判断は各国が行うべきだという見解を示している。
▶ ワクチン由来のウイルス排出は「最長3~4週間」
「使用に関する考え方」では、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン特有の注意事項についても詳しく解説している。
喘息については、安全性データが限られていることから、国内のフルミストの添付文書では「重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者」を接種要注意者に分類している。また米国でも、喘息または喘鳴の既往歴のある2~4歳児への接種を推奨していない。
水平伝播については、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの接種を受けた小児は、鼻咽頭分泌物中にワクチンウイルスを最長3~4週間排出する可能性があると記載。乳児に接触する授乳婦や、周囲に免疫不全患者がいる人には不活化インフルエンザHAワクチンを推奨している。
また、抗インフルエンザウイルス薬を併用した場合、ワクチンの効果が減弱する可能性がある点も注意喚起した。米国においては、過去48時間以内にオセルタミビルまたはザナミビル、過去5日以内にペラミビル、または過去17日以内にバロキサビルを投与された場合は、接種を推奨していないとの情報も示した。
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、不活化インフルエンザHAワクチンと比較し、侵襲性が低く、接種回数も1回で済むことから、小児の負担を減らせる接種方法とされている。2023年4月時点で欧米、中国など36の国と地域で承認されており、日本でもこれまで個人輸入し使用する医療機関が一部あったが、2023年の製造販売承認を受け2024/25シーズンから正式に流通することになる。2024年9月2日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会の資料(外部リンク:厚生労働省)によれば、2024/25シーズンのワクチンの見込み供給量約2734万本のうち、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは130万本、インフルエンザHAワクチンは2604万本とされている。
喘息については、安全性データが限られていることから、国内のフルミストの添付文書では「重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者」を接種要注意者に分類している。また米国でも、喘息または喘鳴の既往歴のある2~4歳児への接種を推奨していない。
水平伝播については、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの接種を受けた小児は、鼻咽頭分泌物中にワクチンウイルスを最長3~4週間排出する可能性があると記載。乳児に接触する授乳婦や、周囲に免疫不全患者がいる人には不活化インフルエンザHAワクチンを推奨している。
また、抗インフルエンザウイルス薬を併用した場合、ワクチンの効果が減弱する可能性がある点も注意喚起した。米国においては、過去48時間以内にオセルタミビルまたはザナミビル、過去5日以内にペラミビル、または過去17日以内にバロキサビルを投与された場合は、接種を推奨していないとの情報も示した。
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、不活化インフルエンザHAワクチンと比較し、侵襲性が低く、接種回数も1回で済むことから、小児の負担を減らせる接種方法とされている。2023年4月時点で欧米、中国など36の国と地域で承認されており、日本でもこれまで個人輸入し使用する医療機関が一部あったが、2023年の製造販売承認を受け2024/25シーズンから正式に流通することになる。2024年9月2日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会の資料(外部リンク:厚生労働省)によれば、2024/25シーズンのワクチンの見込み供給量約2734万本のうち、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは130万本、インフルエンザHAワクチンは2604万本とされている。
<参考>
▢ 鼻に1回噴霧でOKの経鼻インフルワクチン粘膜の免疫増強で高い予防効果