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新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

トランプ大統領を侮蔑し続けても何も生まれない訳とは

2025年04月11日 11時49分26秒 | トランプ外交

今週の初めに、「参院選のテーマは消費税の廃止か!」とつぶやき、トランプ関税の増大に関しては、2日前に「トランプ関税という外圧を利用すべき日本」とつぶやいたのだが、最近の下がらない物価高と参院選をにらんで自民党内ではこんな動きが出ている。
 
相互関税を言い訳に 消費税を下げたがる私を許して…自民党内で消費税減税の動き、財務省の反応は?参院選前の「トランプ外圧」奇貨に
 

9日発動した「24%の相互関税」に日本経済が翻弄されている。直後にトランプ大統領が、報復措置を取らない日本などの国に対して全面発動を90日間停止すると発表したため、暴落していた東京株式市場は急反発したが、しょせんは猶予でしかなく安心できない状況だ。そのような中、トランプ関税という「外圧」を口実にして、今こそ「消費税の減税を打ち出すべきだ」との声が自民党内から噴出しているという。
■支持率isオーヴァー 悲しいけれど 消費税下げよう 参院選負けるから
4月3日未明、ホワイトハウスから飛び出した“トランプ砲”は、日本外交の急所を撃ち抜いた。
「相互関税を導入する。日本には24%の関税をかける」
世界経済は震撼し、株式市場は開場と同時に暴落。日経平均は3日からのわずか3営業日で4589円も値を下げた。石破首相は4日、国会で「国難とも称すべき事態」と苦悩の表情を浮かべた。
トランプ関税。理不尽な外圧である。同盟国の日本になぜこんな高関税をと訝り、憤る声があふれる。だが、外圧がなければ容易に現状を変革できないのも日本だ。事実、“トランプ砲”が永田町の空気を変えつつある。“タブー”とされてきた「消費税減税」に、ついに与党内からも踏み込む声が上がり始めたのだ。
トランプ大統領が日本の消費税を「非関税障壁」と決めつけ、アメリカからの輸出品に日本が46%もの高関税をかけているという主張の根拠の一つにしていることが、その背景にある。
日本がアメリカから商品の輸入をする場合、商品価格と関税に加え、国内で消費税が上乗せされる。一方、日本国内で生産した商品をアメリカへ輸出するさいには、すでに支払った消費税分が日本企業へ還付される仕組みになっている。これをトランプ氏は非関税障壁とみているらしい。
「トランプは以前から“日本の消費税は米国企業を不利にしている”と言っていた。今回の関税攻勢もその延長線上だ。となれば、税制に手をつけることは『交渉の突破口』になり得る」と元通産官僚は語る。
トランプ側近の間にも「日本が消費税を引き下げれば、それは関税以上の成果だ」との声があるという。
こうしたなか、自民党内で“消費税タブー”に風穴を開ける動きが始まった。夏の参議院選挙の公約づくりに向けて、全国の都道府県連の政策責任者らが出席する会議が党本部で開かれ、そのさい出席者から「消費税の減税を打ち出すべきだ」という意見が噴出したという。
ある自民中堅議員は語る。「これは減税論者にとって、まさに“奇貨”だ。いまなら、減税を堂々と主張できる」。
■参院選を前に、石破自民は「消費税減税」を実行できるか?
長らく聖域とされてきた消費税。かつて安倍政権でも、延期こそあれ減税には踏み込まなかった。だが、トランプというモンスターが日本の「国内問題」に口を出してきたことで、状況は一変した。
むろん野党では、「消費税廃止」を訴えるれいわ新選組をはじめ、国民民主党、共産党、さらには江田憲司氏ら立憲民主党の一部議員……と減税派が多数を占める。「減税」という誰もが歓迎するテーマに、「外圧」という“言い訳”が与えられたのだから、石破首相さえその気になれば、実現可能なはずだ。
石破首相はもともと「消費税減税」を参議院選挙を勝ち抜くための秘策として頭に置いていたフシがある。
3月28日、国会で川田龍平参院議員(立憲)が食料品の消費税率を引き下げるよう迫ったのに対し、石破首相は「物価高対策の1つの対応として考えられないことではない」と応じた。
その3日ほど前、公明党の斉藤代表と会談し、新年度予算案成立後に強力な物価高対策を打ち出す考えを示したと報じられており、いよいよ本気かと思わせたが、4月1日の記者会見ではそれを否定した。石破首相の揺れ動く気持ちが見て取れる。
消費減税について石破首相に直接取材した政治ジャーナリストの青山和弘氏は3月30日配信のアベマタイムズでこう語っている。
「物価高対策という意味もあって、軽減税率が今8%でさらにこれを下げる。多分、念頭にあるのは5%くらいで、それくらいに下げることでどれくらい効果があるのかを検討するし、石破総理本人もアリだということをはっきり言っている。周辺には『政権を失うことを考えたら安いものだ』と言っている」
■「消費税減税」は一石二鳥、トランプ氏への“お土産”にもなるが…
たしかに、ここで減税を打ち出せば、参院選を前に国内の支持も得られるし、トランプ氏への“お土産”にもなる。
だが、財務省や財政再建派の議員は「赤字国債の膨張」「社会保障財源の崩壊」と強く反対する。消費減税を交渉カードとして提示するか否か、石破首相がギリギリの判断を迫られているのは確かなようだ。
4月7日夜。石破茂首相は、電話の向こうにいるトランプ大統領に語りかけた。
「日本は5年連続で米国への最大の投資国であり、同盟国として、雇用創出と経済成長にも貢献している」「アメリカの関税措置により、日本企業の投資余力が減退することを強く懸念している」
石破首相は切々と訴え、トランプ大統領に“例外措置”を求めた。しかし、その誠意が通じた様子はない。
むろん、石破首相は電話会談の成果を強調する。「今後も率直かつ建設的な協議を続けていくことを確認をいたしました。双方において、担当閣僚を指名し、協議を続けていくということにいたしました。こうした協議を通じて、アメリカ合衆国に対し、措置の見直しを強く求めていくものであります」
だが、このコメントに不安を覚えた人は多かったに違いない。担当者を決めて協議していくなどという形式的で中身のない合意は、ほとんど相手にされていないことに等しい。案の定、電話会談からわずか数時間後、トランプ大統領は自身のSNSにこう書き込んだ。
「日本は貿易でアメリカをひどく扱ってきた」「日本はアメリカの車を買わないのにアメリカは数百万台の日本車を買っている」
すべては振り出しに戻った。いや、それ以上に悪化したと言ってもよい。
“アメリカにとっての最大の投資国”という地位は、かつてなら外交カードとなった。しかしトランプ氏の目には、そうした数値は「当然の負担」でしかない。自らの選挙民に向けて、「いかに相手国から譲歩を引き出したか」が重要なのであって、どれだけ投資しても、それが“免罪符”になるとは限らない。
ましてや、「相互関税」という本質的にトランプ氏の国内向け政治パフォーマンスに過ぎない政策の前では、合理的説明や経済的整合性など、ほとんど意味をなさない。
■財務省は反対しても、消費税を減税する絶好のチャンス
4月7日の電話会談直後、首相官邸の応接室では石破首相がメモを見つめながら、深いため息をついていたという。周囲には、「言葉が届かない相手に、何を伝えればよいのか」と漏らしたとされる。
米中の対立激化などによって米国の保護主義が強まり、その余波として対日強硬姿勢にも一層の正当性が与えられている。
石破首相は、追加投資・エネルギー輸入拡大という“安倍流”のカードをすでに切っており、それ以上の譲歩は内閣支持率に直結する。とくに夏の参院選を前に、地方経済を直撃する関税ショックへの対策は急務である。
いま日本政府がとるべき道は明確だ。消費減税を通じて、国内需要の下支えとトランプへの対抗策を両立させること。財務省にとっては受け入れ難い選択肢かもしれない。だが、それを躊躇している間に、トランプは次の“爆弾”を投下してくる可能性がある。
誠意を尽くし、筋を通して説明すれば相手もわかってくれる。そんな常識が、トランプ大統領にはまるで通じないという厳しい現実に、石破首相はいま直面している。彼が決断するのは……減税という名の“経済防衛”か、あるいはさらなる譲歩という名の“敗北”か。国の針路は、いま正念場を迎えている。

 
「消費税廃止」を訴える野党では一番初めに公約として戦っていたれいわ新選組をはじめ、国民民主党、共産党などがあげられるが、参院選の予想ではどうやら「れいわ新選組と国民民主党」が大躍進しそうだという予測も 出始めている。
 
石破茂が政権を維持するためにはせめて「消費税減税」を打ち出さなければ参議院でも過半数割れという結果になる可能性が強い、とオジサンは思う。

【付録】
さて、相互関税とか中国には3桁の関税をかけるなど、トランプに対しては「経済音痴」「裸の王様」などとオジサンも批判していたが、「単にトランプ大統領を安易な侮蔑するだけでなく、冷静な分析をすることを心掛けていかないと、いずれ大きなリスクが日本側に訪れてくることになりかねない。」と指摘する記事に気になった。
 
トランプ関税」の背後にある『アメリカン・システム』とはいったいなんなのか?
 

■伝統に根差した「アメリカン・システム」のトランプ関税を甘く見てはいけない
7年前、まだ40歳をこえたばかりのトランプ大統領が、高率関税の意義について熱心に説明している動画が、話題だ。トランプ大統領の長年にわたる関税に対する人一倍強い思いを示しているためだ。そこで、トランプ大統領は、「自分はアメリカン・システムのファンだ」と述べていた。
ここで「アメリカン・システム」という概念について、ほとんどの人が、気にも留めず聞き流すかもしれない。何かトランプ氏がフワッと、アメリカが好きだ、といった程度のことを言っているのではないか、と思ってしまうかもしれない
しかし「アメリカン・システム」とは、19世紀にアメリカの経済システムを指してアメリカ人自身が使っていた、長い歴史を持つ確立された用語だ。その「アメリカン・システム」は、まさに高率関税によって製造業を保護・育成する経済政策のことであった。
トランプ大統領は、19世紀のアメリカを、最もアメリカが偉大だった時代、と呼んでいる。そしてマッキンリー大統領ら、19世紀に高率関税を推進する政策をとっていた大統領を、賞賛する発言をしてきている。かなり本気の19世紀「アメリカ・システム」のファンなのである。
巷では、トランプ大統領は、バカで、気まぐれで、首尾一貫性がない人物だと描写する評論家であふれている。そのように断定している方々は、トランプ大統領の「自分はアメリカ・システムのファン」といった発言をふまえたうえで、トランプ大統領を否定したりはしない。「とにかくトランプはバカだ、ただそれだけだ」といったことを繰り返している。
その際に基準となっているのは、評論家の方々の勝手なアメリカ大統領への期待だ。しかし、トランプ大統領は、なぜ自分の説明と自分の行動の一貫性をまず認めてもらえないのか。評論家の願望と自分との間のギャップで、揶揄され、否定されなければならないのか。
私はことさらトランプ大統領を擁護したいつもりでもない。だが、あまりにその場の雰囲気だけのトランプ大統領の揶揄だけを繰り返していると、やがて評価者のほうが現実から乖離してしまい、自分だけの独りよがりの世界に陥ってしまいがちになるのではないかと危惧する。日本の評論家層は、そして日本政府もまた、今、そのような危険に陥っているのではないだろうか?
■ハミルトン初代財務長官の高率関税の勧め
アメリカの高率関税の歴史は、少なくとも建国すぐの連邦政府初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンにさかのぼる。ハミルトンが財務長官時代に議会に提出した「製造業に関する報告書」は、合衆国の歴史の中で大きな影響力を放った文書である。
当時は、南部州の有力者たちを中心に、アメリカは主要産業は農業である、国際的な分業体制の中で、相対優位は、大規模農園の経営にある、欧州諸国に太刀打ちできない製造業に深入りするべきではない、という議論が根強かった。奴隷交易を前提にした大西洋貿易システムの支柱の一つを形成していた大規模農園経営者たちは、そこで低率関税を望んだ。
これに対して北部知識人層は、欧州列強に対抗できる製造業の育成を政策課題として掲げた。その代表的人物が、ニューヨーク出身のハミルトンだ。彼は、製造業の発展なくして、健全な国家の発展はない、と主張した。もし現在の合衆国の製造業が極めて脆弱であるならば、国家介入をしてでも製造業を育成しなければならない、と説いた。そこでハミルトンは、製造業を育成するための具体的な政策を列挙したが、その筆頭が、高率関税だった。
ハミルトンは、製造業育成のための施策として、保護関税、競合品の輸入禁止あるいはそれに等しい関税、製造業原料の輸出禁止、製造業原料の国内業者に対する関税免除などをあげたうえで、「国内市場をもっぱら自国の製造業者に独占させること」は、「分配的正義の原則の、そしてまさに、わが市民に利益の互恵性を保証するよう努めるべき義務の命ずるところである」とさえ述べた。(『アレクサンダー・ハミルトン製造業に関する報告書』[田島恵児・濵文章・松野尾裕訳][未来社、1990年]、79-89頁。)
■高率関税「アメリカン・システム」の確立
1824年下院の大物議員ヘンリー・クレイは、「『純アメリカ的政策』の採用」と呼ばれる有名な議会演説を行い、国内市場中心の政策を提唱して高率関税の必要性を主張した。当時、政治家や著述家の間で「The American System」という用語が広まった。それは国内製造業を保護する経済政策の主張のことであったが、つまり「ハミルトン経済学派」とも呼ばれる高率関税主義者であった。
19世紀ドイツ「関税同盟」の理論的支柱となる「国民経済学」者として有名なフリードリヒ・リストは、アメリカに亡命していた時代がある。亡命中のリストが執筆した著作『アメリカ経済学綱要』(1827年)には、後の主著『政治経済学の国民的体系』(1835年)につながる着想が書かれている。それは高率関税を柱にした「アメリカン・システム」のことだった。
アメリカの関税率の平均は、19世紀を通じて、20%を割ることがなかった。そして製造業を基盤にして、驚異的な経済成長を遂げた。19世紀末には、工業力において、欧州諸国を凌駕するほどの勢いを見せるようになった。南北戦争後の共和党主導の時代の象徴の一人であり、トランプ大統領が敬愛の念を表明しているマッキンリー大統領の名をとった「マッキンリー関税」と呼ばれる1890年の法律は、関税率が平均で50%を記録するほどのものであった。
高率関税にこだわりを見せるトランプ大統領が、「自分はアメリカン・システムのファンだ」と言うとき、参照しているのは、この19世紀アメリカの経済政策のことである。この19世紀のアメリカの飛躍的な発展と密接不可分な関係にある経済政策は、トランプ大統領のみならず、彼の強力な支持者層である「保守主義」の支持者が好む思想にも裏付けられているだろう。
■「アメリカン・システム」と北部と南部の対立
19世紀のアメリカに、関税政策をめぐって、論争が全くなかったわけではない。むしろ注目政策であったからこそ、具体的な税率をめぐる論争は絶えなかった。北部諸州の製造業重視の保護主義者は、さらなる高率関税を望んだ。それに対して奴隷制を前提にした輸出農業が産業基盤の南部諸州は、低率関税を主張した。
北部諸州の意向をくんだ保護主義的政策は、連邦政府が推進する経済政策の中に深く入り込む思想となっていた。ジェイムズ・モンロー大統領の「モンロー氏の宣言」が出て、アメリカの「モンロー・ドクトリン」の外交政策が確立され始めていくのは、1823年だったが、欧州との「錯綜関係の回避」の原則は、高率関税政策と合致する外交政策であった。 
他方、当時のアメリカの農業は、奴隷輸入と欧州向け輸出に依存する大西洋貿易システムの中に組み込まれたものだったので、南部諸州は、高率関税政策に批判的で、強く関税引き下げを求め続けた。
この北部と南部の間の対立は、結局、1860年代まで持ち越されて南北戦争によって決着をつける構造的なものであった。南北戦争とは、南部の分離独立権をめぐる争いであり、奴隷制度をめぐる争いであったと同時に、関税政策をめぐる争いでもあった。 
19世紀は、大農園の奴隷の労働力が、低率関税を要求する大西洋貿易システムの基盤であった。北部諸州は、こうした産業構造それ自体を問題視していた。現在では、トランプ大統領の世界観では、低率関税は自由貿易を通じたグローバル化の象徴だが、そこには、国内外の安い労働力、つまり途上国の住人または不法移民などが関わっていることが想起できるだろう。
■帝国主義政策下の高率関税
トランプ大統領が、自らの関税政策を説明する際に言及するのは、マッキンリー大統領である。高率関税の唱道者として有名な19世紀末のマッキンリー大統領は、南北戦争後の北部を地盤とした共和党の全盛時代を代表する共和党の大統領である。ハワイの併合や、米西戦争を通じたフィリピンの保護国化など、太平洋で領土を拡張させた帝国主義的な傾向が強い大統領でもあった。
19世紀最後の大統領であるマッキンリー大統領の在職時期は、世界有数の産業基盤を確立したアメリカが、世界の大国の一角を占めるようになっていた時代であった。そして帝国主義的拡張主義をとるようになっていた時代であった。その点で、マッキンリーの時代の高率関税は、製造業未発達の時代のハミルトンの高率関税論とは少し性格が異なる。帝国主義国家アメリカの高率関税は、小国に対する威嚇として働いた。
たとえば1854年の日米修好通商条約で、いわゆる関税自主権を放棄した日本は、それを回復するのに半世紀以上の時間を費やした。アメリカとの間で日米通商航海条約を結んで関税自主権を獲得するのは、ようやく1911年のことであった。それまで日本は、あるいは他の多くの小国は、自国では高率関税政策を採っているアメリカなどに、低率関税を押し付けられていた。そして欧米製品の流入を許さざるを得なかった。
マッキンリー大統領の時代の高率関税は、アメリカの製品のための新市場の帝国主義的な開拓と一体の関係にあった。21世紀の新古典派経済学の自由貿易理論などは、まったく 通用しない世界であった。民主党の優位の時代になり、所得税を導入して戦争に備えた第一次世界大戦時のウッドロー・ウィルソン大統領や、ニューディール政策で第二次世界大戦にも勝ち抜いたフランクリン・ローズベルト大統領が活躍するよりも前の時代だ。
現在、トランプ大統領は、アメリカ国内の製造業の復活を目指すと述べつつ(ハミルトン主義)、アメリカが一方的に決めた関税率を受け入れてアメリカの貿易赤字の削減に協力するように世界の諸国に強く要請している。この帝国主義的とも形容できる姿勢は、マッキンリー主義と呼べるようなものであろう。
トランプ大統領の高率関税政策に、もう一つの超大国・中国は激しく反発して報復関税の導入を宣言している。EUも報復関税を検討しているが、中国よりは柔らかである。残りの経済的に大国とは言えない諸国は、アメリカとの全面対立は避けたいのが本音だ。報復関税はとらない。これらは、基本的に、アメリカとの相対的な国力の格差がもたらす態度の相違だと言うことができる。
■「アメリカン・システム」を導入することの歴史的意味
さて「アメリカン・システム」が、トランプ大統領の単なる個人的な思いつきというよりは、19世紀アメリカの政治思想に深く根差した伝統を持っているとして、それを21世紀に導入することの意味は何だろうか。
もちろん大きく言えば、「アメリカン・システム」が時代遅れになった20世紀の状況を、あらためて否定し直すことだ。それは二度の世界大戦をへて、アメリカが覇権国として、国際社会の自由貿易主義を原則とした国際制度の運営者であった時代が終わる、ということでもある。グローバル化自由貿易主義の終焉、あるいは経済制度面での自由主義の普遍主義の終焉、といった言い方でまとめてもいいだろう。
もともとアメリカが20世紀に特別な地位を得てしまったのは、間に世界恐慌をはさむ二度の世界大戦という特殊な時代を経た後の特別事情があればこそであった。また1947年にGATT「関税および貿易に関する一般協定」体制が構築されたのは、冷戦が始まったときだ。自由貿易主義の制度の導入は、自由主義諸国全体の国力を、護送船団方式で守って、発展させていこうとする、冷戦を勝ち抜きたいアメリカの意向が働いていた。
冷戦が終わった後、自由貿易主義は、一つの時代の節目を迎えた。しかし、しばらくはアメリカの国力が圧倒的に優位だという前提で、ロシアや中国をはじめとする旧共産主義国を自由貿易体制に組み込んで、新しい国際秩序を維持することが、アメリカの利益でもある、という考え方が強かった。
しかしその時代は終わった。共産党一党独裁が続く中国やその他の途上国の商品がアメリカ社会を席巻する時代となった。アメリカが、巨額の貿易赤字を、中国や、ベトナムなどの新興諸国との間に抱え込む時代に変わった。欧州諸国などの軍事同盟諸国を、経済的にも擁護してあげなければならない時代も、とっくの昔に終わっている。刷新が必要だ、とアメリカの大統領が言うのであれば、そういうことも言えるかもしれない。その際、20世紀の前提が消滅したのだから、アメリカは19世紀のやり方を取り戻す、と大統領が言うのであれば、それも一つの考え方である。
■21世紀「アメリカン・システム」で念頭に置いておくべきこと
この時代認識の観点から、トランプ大統領の行動を見てみるならが、さらには以下の三つのことを指摘しておくことができるだろう。
第一に、アメリカは、アメリカの国益を守り、推進するために、行動している、という当然の事実を見据えるべきだ。アメリカは、国際社会の盟主としての地位を維持したり、護送船団方式で他の同盟国と冷戦を勝ち抜いたりするために、高率関税などの政策的措置をとっているわけではない、ということだ。
第二に、アメリカは、自国の社会産業の構造を、自らが望ましいと思うものに変えるために、行動している。アメリカが安全保障の観点から大切だと思う産業、社会的価値の維持のために必須だと思う産業が存在すると信じ、その産業が発展するかどうかに、重きを置く。仮に経済学者たちが、アメリカは製造業を捨て去るほうが経済的に合理性の高い行動をとれる、と主張したとしても、トランプ大統領は、まったく心を動かされない。
第三に、したがってGDP(国民総生産)の向上だけを至高の目的にした行動を、アメリカはとっていない。アメリカ人が、アメリカの社会に誇りを持ち、夢を持って経済活動をすることが目標である。もともとGDPという概念は、20世紀半ばに発明されたものでしかない。共通基準で、諸国の経済力を横並びで比較するために、用いられるようになった。しかし国民の生活水準の向上と、GDPが一致しないことは、アメリカのように甚大な経済格差や移民問題を抱える国では、特に切実な問題だ。19世紀に戻るための所得税の廃止、といった考えを目標にしてみるのも、GDPだけを至上の価値に置いていないことの証左だ。
■トランプ大統領を侮蔑し続けても何も生まれない
そして高率関税の政策である。それを経済学の指標の充足ではなく、政治目的を達成するための交渉の道具として導入していることは、トランプ大統領が明確に説明していることだ。
「アメリカン・システム」の思想は、そのマッキンリーの帝国主義的な応用の部分も含めて、現代の新古典派経済学者には、全く受け入れられないものだろう。だが事実としては、トランプ大統領は、そのような思想を持っている。そして、おそらくはトランプ大統領のMAGA政策の強烈な岩盤支持者層も、同じ思想傾向を持っている。
トランプ大統領の高率関税政策を、気まぐれの思い付きとみなすことは、単にトランプ大統領の政策の性質の理解を妨げてしまうだけではない。もしそれを「思い付き」だと信じすぎると、明日にでも撤回してくれるのではないか、という期待を持ってしまいがちになる。そうなると対応するこちら側の政策の検討も、後手後手あるいは的外れなものになりがちだ。実際に、日本政府のトランプ関税に対する対応は、よく準備されたものとは言えない。
日本では朝から晩まで「トランプはバカだ」の大合唱が繰り返されている。「識者」と言われる方々が交代で現れては、「とにかくトランプはバカだ、ただそれだけだ」と繰り返している。だが仮にそうだとして、そのようなことを言い続けているうちに、何か日本のためになることが起こってくるのだろうか。「もし日本にとって良くないことが起こったら、それは俺のせいではない、全部トランプのせいだ」という非生産的な言い訳を用意する以外に、何か意味があるのだろうか。
単にトランプ大統領を安易な侮蔑するだけでなく、冷静な分析をすることを心掛けていかないと、いずれ大きなリスクが日本側に訪れてくることになりかねない。
あるいは本当に時代が変わったのかもしれない。そうした意識で緊張感を持って、事態を分析し、対処する方法を考えたほうが、むしろ望ましい。
 

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